表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かつて姫と呼ばれた少女とゴーレムになった王子様、二人だけの崩壊世界ぶらり旅。  作者: 書峰颯


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/28

第22話 二人だけの儀式と、新しい乗り物。

「そうですか、ジンがそんな事を」

「うん。まぁ、言われなくても魔王兵器(ワールドイーター)の破壊はするけどね」


 ジンからバッカス中将へとコアの移動が行われた後、一時間ほどするとバッカス中将の顔が元の形へと戻っていた。整った青年風の顔立ち、目に掛かる程度の水色の髪を、リリィが優しく撫でる。


「あの……リリィ?」

「うん? どうしたの?」

「もう夜が明けます、守って貰わなくとも大丈夫ですよ?」


 確かに空が白むものの、バッカス中将の手足はまだ再生していない。

 今はリリィが正座をし、太ももの辺りに、バッカス中将の出来たばかりの頭を置いている状態だ。

 所為、膝まくら、と呼ばれる状態にあろう。


 ちなみにバッカス中将の胸の部分、コアが収納されている場所に関しては、オムレツが丸くなり眠りについている。温かいのか、守っているのか。黄色いもふもふした体毛をそよそよとさせ、目を閉じくぅくぅと寝息を立てていた。


「いーの、バッカス中将は頑張り過ぎだから。たまには休んだ方がいいって」

「僕は魔法生命体(ゴーレム)ですから、休まなくても平気なのですが……」

「じゃあ言い方を変えて、ご褒美って事にしようか」

「ご褒美……そうですね、それでしたら、甘んじて受けたいと思います」

「にひひー、たまにはいいでしょ?」

「ええ、そうですね。そこで見ている二人が、嫉妬しなければ良いのですが」


 レイズが眠るケースの横には、寄りかかるようにしたジンの姿があった。

 ジンの肉体は復活した時のままだが、先のように動くことはない。

 

「コアの復活、私たちには出来ないものなのかな?」

「そうですね。残念ながら、僕の記録には残されておりません。ですが、僕たちは人によって造られた存在です。いずれ人々の手によって、ジンのコアも修復されるのだと思います」

「そうしたら、レイズちゃんも目を覚まして、私の友達になってくれそうだね」

「その時には、何万という人が、リリィの友達になっていると思いますよ」

「あはは、そっか、そっちが先か」


 リリィは楽し気に笑うも、すぐに静かになった。

 暖房が効き、静かな空間で、リリィは目を閉じる。


「こうしてこのまま、バッカス中将と二人きりっていうのも、悪くないような気もするけどね」


 つぶやくリリィの言葉に、バッカス中将は応えず。

 それから二時間が経過すると、バッカス中将の四肢は完全に姿を取り戻した。

 

「ふむ、こんな所でしょうか」

「うん、バッカス中将復活したね」

「はい、リリィ、先ほどは守って頂き、ありがとうございました。それと」


 サーコートをひるがえし、バッカス中将はリリィに対して膝をついた。


「主である姫君を守れず、死霊如きに敗北を喫してしまったこと、ここに深く謝罪申し上げます」

「バッカス中将……いいよ、そんなの」

「いいえ、そういう訳には行きません。敗戦の将には罰が必要です。そうでないと、僕は僕を許せそうにありません。一体何をしているのか、何を油断しているのか。自分自身の一時の過ちが、最悪の未来に繋がると自負しておきながら。後生でございます、姫様、僕へと罰をお与え下さい」


 言葉に重みを感じる。心の底からの後悔。

 魔法生命体(ゴーレム)として、将軍として、果たせなかった思い。


「……わかった」

「姫様」

「バッカス・オーブリエール・ガゥ・チュウジョウニアよ」


 リリィはバッカスの前に立つと、姿勢を律した。

 まるで一国の姫君のような振る舞いに、バッカス中将もその身を新たにする。


「貴殿は将軍という立場でありながら、主君である我を危機に瀕させた。これは許しがたい行為であり、万死に値するものとする。だが、これまでの貴殿の活躍を考慮せずに罰を与える事は、騎士道にあるまじき行為であり、民はそれを許さんとする。よって、バッカスよ、ここに貴殿に新たなる命を下す。今後、魔王兵器(ワールドイーター)、及び死霊、我らに対し敵対する者共との闘いに於いて、一切の敗北を認めんとする。もし敗北を喫した場合、我自ら貴殿のコアを叩き壊すことを、その胸に深く刻むといい」


 リリィの主としての言葉を受け、バッカス中将は深く首を垂れた。

 次はない、その言葉の意味を、真摯に受け入れる。

 

「リリィ・ハルモニアが命ず。バッカス・オーブリエール・ガゥ・チュウジョウニアよ、表を上げよ」

「はっ」


 上げた顔へと両手を添え、彼の額へと、リリィは口づけを与えた。

 

「これは、貴殿への褒美だ」

「……ありがたき、幸せでございます」 

「うむ、精進するのだぞ……。なーんて、こんなの疲れるよ」


 ぱたぱたと真っ赤になった顔を仰ぐと、リリィは「あー恥ずかしかった」と座り込んだ。

 

「姫様」

「リリィに戻して。それともまだ罰が欲しいって言うのなら、思いっきり殴るよ?」

「僕としては、それでも一向に構いません」

「やーだよ。また修復まで待たなきゃいけないじゃん。それよりも朝食にしようよ。それから昼寝。そんで、夜が来る前にここを出よ。またあの死霊型のふざけた奴が出てきたら面倒だしさ」


 リリィのお腹がくぅくぅと鳴っているのを聞くと、バッカス中将は重い腰をゆっくりと上げた。


「確かに、リリィの言う通りですね」

「でしょ? 確か、まだ食料あるんだよね?」

「はい、昨晩申し上げた通り、カレーと呼ばれる食料が完成しております。一晩煮込みましたから、美味しく頂けると思いますよ」

「カレー? 食べたことないな。どんなのだろ」

「記録によると、辛くとも美味しい料理、とのことです。ジャガイモやニンジンと呼ばれる野菜の数々に、香辛料を混ぜ合わせたルーと呼ばれるものを――」

「あー、いい、覚えられないから。私は食べるの専門で生きていきたいです」


 さすがは姫様、そう言いながら、バッカス中将は朝食にカレーを振舞うのであった。

 初めて食べたカレーは辛いのに美味しい、という言葉が正にマッチしていて。

 リリィは笑顔を作りながら、美味しいね、と、バッカス中将へと微笑む。

 その後、死んだように眠りに付き、予定通り夕方前にリリィは起床した。


「ん……あー、良く寝た」

「おはようございます、リリィ。ちょうど次の目的地が決まった所ですよ」

  

 設備へとリンクをしていたバッカス中将が、リリィにも見えるように魔法地図を展開してくれた。

 

「次は南に向かいましょう。どうやらそこにも、魔王兵器(ワールドイーター)によって滅ぼされた町が存在するとの事です」

「そうなんだ。また寒い中、歩かないとかぁ」


 思い出すだけで震えあがる。

 両腕をこすりながら、リリィはため息をひとつこぼした。


「ですが、このままここに残ったとしても、三日後には全ての施設が運転を停止してしまいます。外と変わらぬ温度、いえ、場合によっては外以上に冷える可能性があります。更にはリリィが言っていたように、死霊型魔王兵器(ワールドイーター)の襲来も予想されますから、今以上に厳しい状態になるかと」


 まくし立てるように言われて、リリィは「わかったよぅ」とバッカス中将の肩に乗ろうとした。

 結局のところ、リリィは保温箱の中でオムレツと一緒に丸まっているだけ。

 外の寒さはあるものの、裸一貫で歩いているバッカス中将の何百倍も快適なのである。

 だが、肩に載せた保温箱に入ろうとするリリィを、バッカス中将は抱え込み、床に戻した。


「え、歩けってこと?」

「いいえ、歩く必要はございません」


 どういうこと? リリィが疑問符を顔に浮かべていると、バッカス中将は「こっちです」とリリィを連れて、施設の最奥へと進んだ。


「施設の端末にリンクした際、ジンとレイズが起動した後、どのようなルートで他へ向かうのかを調べたのです。さすがにあの二人であっても、氷点下五十度は厳しいはずですから、他のルートがあるはず、そう思い調べていたのですが」


 バッカス中将は大きな扉の前で歩みを止めると、浮かび上がったタッチパネルに素早く触れた。


「どうやら、二人はこれに乗って、他の地域へと向かう予定だった様子です」


 開いた扉、その奥にある乗り物は、とても大きくて。

 全体的に横に長い感じの円形、左右均等の造りをし、それは僅かに浮かんでいた。


「な、なにこれ?」

「超電磁リニア……と書かれておりますね。あっという間に氷の大地を抜けてしまうらしいですよ?」

「え、本当? 凄くない? じゃあずっとこれでいいじゃん」

「そういう訳にはいきません。決められた場所のみ、運行できるとの事です」

「そっか……便利だけど不便だね。でも、寒い所を歩かないで済むのなら良かったー」


 リリィが近づくと、扉がうにょんと形を変えて、それが入口になった。

 

「左右に開いたりじゃないんだね。昔の人間って凄いなぁ」

「流動金属、と呼ばれるものらしいですよ。今の僕では再現不可能です」


 二人と一匹が乗り込むと、扉はにうにょんと元の形に戻る。

 ジンとレイズ専用というだけあり、中には座席が二つあるのみ。

 リリィにはよく分からないレバーとかがある方にバッカス中将が座り、さっそく操作を始めた。 


「では、南へと向かうとしますか」


 ガクンッとシートの安全バーが下がると、リリィは座席に拘束された。

 首から両手足、腰と拘束され、全身を膨らんだ座席に捕縛されることに。

 ちなみに、オムレツもリリィの膝の上にいたので、一緒に捕縛されている。


「なにこれ」

「想像を絶する速度で移動するみたいですので、喋らないで下さい。舌を噛みま」


 バッカス中将の注意が終わる前に、リニアは動き始める。

 リニアというよりも、レールガンに近い。

 重力と空気に押しつぶされながら、リリィたちは次なる町へと向かうのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 中将、そんな長いフルネームだったのか…! と言うか、塔って永久動力とかでは無いんですな…まぁそれなら魔王兵器に探知されるのかw そして『人々』と言う事は、今も人類は何処かで眠ってるんで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ