35/35
最初からこういった事をする心づもりで
矢も楯もたまらず出国したい自分でした。アラキさんは私を愛していました。でも、アラキさんが私を愛するよう罠にかけた去年6月の私と、今年6月の私とでは、中身が同じではありませんでした。アラキさんの為にも、私はいなくなるべきでした。少なくとも、そう自分に言い聞かせて、出奔することが正当な行為だと信じ込もうとしました。
だって、塾で教えているのだし、私が突然いなくなったら葵さんたちはどういう事になるでしょう。学校が夏休みに入ると、塾では夏期講習といって、生徒に集中授業を行ないます。急に代わりの講師が見つかるでしょうか。恩人であるべき葵さんに対する、何という裏切りでしょうか。でも、私はアラキさんの為に、いなくならなければなりません。あるいは、最初からこういった事をする心づもりで私はアラキさんを罠にかけたのでしょうか。T春花は何という人間でしょうか。
『東南アジア編』で続けます。
https://ncode.syosetu.com/n7488hu/




