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色恋沙汰を起こした挙句の果てに
牧師には余計なことを言わないようにしていたし、元婚約者との一件も話していませんでした。聖書に感じる矛盾についても相談しないで黙っていました。なので、私が棄教する本当の理由を知るはずもなかったのです。
かつては青年部のリーダーめいた役柄だった私が色恋沙汰を起こした挙句の果てに教会から姿を消す、という噂話も、牧師としては不面目なことだったのでしょう。リーダー役につけたのが自分だと思うとき、何とかして私を教会に留まらせたい様子でした。度重なる訪問に加えて電話攻撃、メール攻撃、手紙攻撃、そして葵さんをも巻き込んだ攻撃。葵さんからも口添えして私が悔い改めるよう、牧師は働きかけました。もっとも葵さんはノータッチを決め込んでいたので埒があきません。送ってくるメールや手紙には聖書の一句を引いて締めくくる形にしてあります。例えば「神の目には、あなたは高価で尊い。神はあなたを愛しています」みたいなキメの言葉で人の気を引こうとする。でももう私はそういった臭いやり方にはうんざりするばかりでした。