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とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する  作者: 属01
最終期末試験編

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第561話 アリスの答え

「っ!?」


 まさかの返事にルークは耳を疑う。

 アリスは耳を赤くしながら一度ルークから視線を外す。


「今のって」

「たぶんってことよ。今でも情けないし恥ずかしい話だけど、よく分かってないの。貴方に対して気持ちが揺さぶられるし、高鳴ることもある。ただこれが恋しているのだといえるなら好きとハッキリ言えるけれど、それが本当にルークに恋しているか分からないの」

「アリス」

「全くじゃないの。この気持ちは特別だとは分かるし、他の人よりも幅が大きいのよ。だからそう答えた」


 その時点でアリスの視線はルークへと戻っていた。

 前に一度は断った気持ちであったが、それ以降改めてルークからの気持ちやトウマやレオンらの気持ちと向き合う中でアリスも頭を悩ましていた。

 自分の気持ちや反応、他の人との比較などただ直感的にだけではなくどうだったかやどうしてそうなるのかと考えもしたのだ。

 ただそれだけを考えられる訳でもない為、何度も逃げたい先延ばしにしたい答えを出さないといけないのかと思っていたが、相手のことを考え自分だけ逃げる訳にはいかないと向き合い答えを出したのだった。

 誰しもが正しい答えを出せるわけでも、すぐに答えをだせるわけではない。

 悩む人もいれば、苦しむ人や目を背けてしまう人もいる。

 また答えを出せてもそれを伝えられない人も、中途半端な答えになる人もいるだろう。

 その人の考え方、向き合い方などその人自身の影響もあるが今回アリスは真剣に向かい、考えた結果表現が曖昧な答えになったのだ。

 もし、今のまま時間をもう少し与えられた所でこの答えが変わることはないだろう。

 何故ならばそれが今のアリスが体験して来た中で出せる最善の答えであるからである。

 分からないことをいくら考えたとしても、分からないままでありあくまでこうであろうという推測でしかない。

 アリスには未だ恋がどういうものか、この気持ちが捉え方が恋なのかが分かっていないのである。

 今まで恋というものに触れて来ず、初めて告白までされる身であるアリスがこの学院に来て様々な新しい体験をしたからこそ、ここまでの答えが出たといえる。

 人によって環境は様々であり、環境により体験できること触れることができることは変わる。

 ただアリスは恋というものに触れて来なかっただけであり、近しい憧れという気持ちや男子たちとの生活の中で恋というものを学んだのである。


「ハッキリとしない答えってのは分かっているけど、これが今の私の気持ち」


 アリスの言葉に黙るルーク。


「こんな奴で失望した? 真剣に考えてこれしか出せないんだからガッカリだよね。もっとはいかいいえで聞きたかったよね。ごめん……これが今の私に答えられる精一杯」


 ぎこちない表情で答えるアリスの口元は震えていた。

 どうせ最後なんだから、もう二度と会う事はないんだから綺麗な答えを伝えてしまえばいいじゃないかという考えもアリスにはあった。

 ここまで正直に答えなくてもよかったんじゃないかと思いつつも、ここまでやっておいて最後に嘘をつきたくないというアリスの想いがそう行動させていた。

 正直に話せば相手がどう思うかなんて想像出来ていた。

 しかし、変に自分の気持ちを偽ることは出来なかったのだ。


「ごめんね。最後にこんな感じにしちゃって……」


 ルークはまだうつむいたまま何も答えない。

 そんなルークを目にしアリスは振り返り立ち去ろうとした時だった。

 突然背後からルークに手首を掴まれる。

 驚いて振り返るとルークが顔をあげて一歩踏み出していた。


「まだ終わってない」

「っ!」

「お前の気持ちや葛藤は分かった。だが、俺は納得出来てない」


 そこでルークはアリスから手を離し、アリスも再びルークの方へと身体を向けた。


「納得出来てないってどういうこと?」

「俺の告白に対しては、結局どっちなんだ?」

「だから、好きかもってのが答えで」

「俺が聞きたいのは好きかもという気持ちの上で、俺と付き合ってくれるのかそうじゃないのかって事だ」


 アリスはその時そう言われてみれば、問いかけに対して正確な答えじゃないなと初めて気付く。

 それまで相手とどうなりたいか、どうなれるかを考えて答えを出して来ていたがルークに対しては好きなのか嫌いなのかから始まっておりそこを出すのに時間がかかっていた。

 その結果どうなりたい、どうなれるかという先まで考えられておらず好きなのかもという気持ちを出した事で全ての答えを出した気に陥っていたのであった。

 たしかに、好きだからどう嫌いだからこうという所まで答えを出せてないし、好きか嫌いかを伝えただけじゃない私。

 アリスの視線が泳ぎ始めるが、ルークは真っすぐにアリスを見つめていた。


「どう、なんだ」

「えっと、その」

「アリス」

「え~と……」


 そしてアリスが考え絞り出した答えが。


「今は、やっぱ無理」


 アリスに向けていた顔を少し下げてるルーク。

 第二王子にしながら二度目の告白も破れ、同じ女性に二度もフラれるという実績をこの時得てしまう。

 だがいつまでも俯いておらず、顔を上げる。


「そう、か。……分かった」

「あっ……えっと、うん」


 アリスは咄嗟に出した答えを聞いたルークにどういえばいいか分からず黙ってしまい、動くに動けない気持ちになっていた。

 これはどうするのが正解なの? 咄嗟に出した答えだけど、結果的に断ってしまったからどうすれば。


「一つ確認だが、その答えはさっきの好きかもという気持ちの上での答えって事だよな?」

「え……えっと、うん。そういう事になる、かな」

「そうか」


 ルークがそう呟くと小さくため息をついた。

 そのまま片手を腰に当てる。


「二回も断れるのは初めてだ。恋愛は難しいな。まあ俺が下手なのがいけないんだが」


 何か吹っ切れたような態度に少し驚くアリス。


「急に追求して悪かったアリス」

「い、いや。まあその、うん」

「これで最後だし、もう一つ訊いていいか?」

「何?」

「これから、何をするんだアリスは?」


 アリスはその問いかけに対し一瞬表情が固まるが、すぐに優しく微笑む。


「行ける範囲の世界を見ようかと思う。まだ知らない事見たことないものを見たいかな。そしたら、もっと私の中の世界を広くなるし色々と出来るかなって」

「てっきり研究者とかそういう方面かと思ったが、斜め上な答えだな」

「ちょっとある人の影響を受けてね」

「旅人か。そしたらこの先いつか、何処かでまた会えそうだな」

「あまりスケール大きくしないで。旅行くらいに思ってよ。でも、そうね何処かでバッタリと会う事はあるかもね」


 そう告げてアリスはルークに背を向けて歩き始める。

 そして振り返らず正門をくぐり学院の外に出た所で暫く止まっていると、背後からルークに名を呼ばれ振り返る。

 ルークは正門を挟み学院側に立っていた。


「まだなに――」


 その時ルークが急にアリスの顔に近付き、目と鼻の先で止まる。


「俺はお前に勝つまで諦めないからな。次会った時は、必ず勝つ勝負だけじゃなく気持ちを好きに変えてみせるよ」


 直後ルークはアリスの唇に親指を軽く押し付けると、その指をすぐに離すと自身の唇にサッと触れさせた。

 驚くアリスに対し、ルークははにかみながら顔を離し片手を上げた。


「またな、アリス」


 そう言ってルークは手を振りながらトウマたちの元へと戻って行くのだった。

 一方的にやられたアリスは先程のルークの行動を思い出し顔を赤くしていた。

 怒鳴るに怒鳴れないこの感情に、どうする事も出来ない感情が渦巻く。


「あ~~あぁ~~あーーうっ……はぁ~、最後に何してくれてるんだあの第二王子」


 軽く自身の唇に手を当てるも首を横に勢いよく振る。

 耳だけでなく顔、身体も少し熱く感じるアリス。

 こちらを一度も振り返る事無く歩き進むルークにアリスは何だか負けた気分になる。

 そしてアリスはルークに向かって小声で「次会った時覚えてとけよ」と告げると、遠くで手を振る皆に手を振り返しその場を後にするのだった。

 こうしてアリスは、王都メルト魔法学院を退学した。


 アリスが退学した翌日、王都メルト魔法学院では最終期末試験の結果が張り出された。

 張り出された試験結果に学院生らは一喜一憂する中、とある結果が注目を集めていた。

 それは第二学年の試験結果であった。

 この年、最終期末最優秀成績者はルーク・クリバンスであったが、その生徒よりも点数が三点高い生徒が表示されたのだ。

 その生徒の名は、クリス・フォークロスであった。

 クリスの名は皆の結果発表の端に参考記録と共に記載されていた。

 参考記録は公式な結果に含まれない為、点数がルークよりも高くてもあくまで参考記録の為最優秀成績者はルークとなっていた。

 更にクリス・フォークロスの退学が正式に発表され、より学院中は試験結果の話題と合わせ暫くは持ち切りになるのだった。

 それから一週間後には、第三学年の卒業式が行われオービンたちは学院を卒業して行き正式に各寮長と副寮長が変わる。

 そしてあっという間に新たな春が訪れ、新しい生徒たちが入学して新たな学院生活が始まった。

 ルークたちは最高学年となり後輩たちに背を見せるも、やんちゃな後輩に手を焼きながらも最高学年として学院生活を過ごす。

 卒業が見え始め、皆も次第に将来や夢の為にどうするべきかを模索や体験をしながら皆は積み重ね更に成長し続けた。

 そして――半年の月日が過ぎた。

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