おしまい
本日投稿3話目。本当の最終話です。
※すっきり成分はないです
※どっちかというと陰鬱だと思います
八神の残骸を回収した神坂グループの男たちは会社に到着してすぐに八神の残骸を分解し、記憶と記録にまつわる部分を取り出した。
記録にまつわる部分は無事。これさえあれば実務的には八神とそう変わらない働きができるロボットをすぐに納品できるだろう。
問題は記憶・感情にまつわる部分。
「さてと、彼を治してあげられますかね」
「お前はどう思う?」
「治せたらいいなって思いますよ」
若い男と壮年の男が淡々と話し合う。
若い男が解析用の機器に記憶データを保存するチップをセットし、内部情報を再生する。
修理の必要もなく解析機器にセットすることができたし、何の問題もなく内部情報を再生することができた。
しかし、感情を持った日から徐々にエラーコードが増えていき、直近の記録はエラーでほとんど虫食いの状態となっていた。
「これは……」
「ああ」
若い男が眉間にしわをよせ、泣きそうな顔になる。
壮年の男はため息をつき、禁止言語の使用を可能とするよう解析機器の設定を変更した。
今度は何のエラーもなく八神光一が感じたことが文章として再生される。
その内容を見た二人は強く自分の手を握り、目を伏せた。
「何がなおるんですか、だよ。面倒ごとをさんざん押しつけて、便利な道具扱いしておきながら、何を友達みたいな顔して心配なんかしてんだよ」
若い男は目に涙を浮かべながらも音が聞こえるほどに歯を食いしばった。
壮年の男は深く息を吐いた。彼はなるべく八神の記憶を見ないように画面をスクロールし、大破寸前の八神の記憶へ到着する。
そこには八神が助けた女性へ送る文面と、八神を回収する人々への言葉があった。
壮年の男は女性へ送る文面のみを記録媒体へ移してから、若い男と共に自分たちへ宛てた言葉を読んだ。
彼らは解析機器からチップを外した。
「治すか?」
「わざわざ聞かなくても分かってるでしょう」
若い男は記憶データが保存されたチップに、八神の人格が宿った魂とも言えるそれに、作業服にくくりつけていた金槌を振り下ろした。振り下ろした。振り下ろした。
どんな業者でも直せないほど粉々になったチップを見ながら、壮年の男がつぶやいた。
「これだから、この仕事はロボットに任せられん」
おつきあいいただきありがとうございました。