嵐の前の静けさ
北の海は寒い。日も暮れ始め、気温がさらに下がるとただ立っているだけで凍えて死にそうになる。いくつか小さい流氷がちらほら見受けられたが、コツコツと船体に小さな氷が当たる音が響くらいで今のところ船体そのものに大きなダメージはない。
それよりもっと身近で深刻な問題が目の前にあった。
「よかった。思ったより暖かくて、これなら無事につけそうですね」
どこが暖かいのよ。そう突っ込みたかったが寒すぎて突っ込む気力もない。くう、いるだけで暑苦しいおっさんがいなくてもこのさわやかさ。この客人、やはり只者ではない。
ここはうら若き乙女のプライベート空間(一応個室だがほとんどベットでいっぱいな部屋)だ。本来なら生物学上の男は入れたくなかったのだが、ほかに部屋がなかった。
商船は貨物を運ぶために設計された船。余分なスペースはほとんどない。突然乗り込んできた自称乗客2名の寝る場所をどうするかが問題だった。船長室は長い航海で得た情報と貴重品の保管室としての役割があるので第3者を入れるわけにはいかない。ほぼ、この部屋と同じ間取りの客室は1部屋しかなく、大柄のおっさん一人でいっぱいいっぱい。だからと言ってまさか船員室でハンモックというわけにはいかない。しょうがないので私と相部屋ということになった。
だからって、乙女と男を同じ部屋にするなんていったい船長はほんと何考えてるんだか、この男がロリコンで襲ってくる可能性だって、
「そろそろ寝ますか」
「え、寝る?」
まさか、この男・・・・
「・・・失礼な想像していないでしょうね」
「・・・・・・・・え、何のことかしら?」
「まあいいでしょう。では、私はベットを使わせてもらうんであなたは椅子で」「ちょっとまて!!」
あわててさえぎる。
「普通、逆じゃない?女の子がベットで男が椅子でしょ?」
そういう一般論をぶつけてみるが男は悠然と微笑んで
「すいません。私、横にならないと眠れないんです」
「軟弱者!!」
ああ、突っ込んじゃった。みると男は意地の悪い笑みを浮かべて
「では一緒に寝ますか」
やはりこの男、ロリコ・・
「いえいえ!ただ、一緒にベットを使おうと言ってるだけです。そんな犯罪者を見るような目つきはやめてください」
おや、そんな風に見ていましたか。そういえば昔、船員の一人が視線だけで相手をやり込めれば一流なんて話をしていましたが、私、スキルアップしてます?
「たとえば真ん中から2つに分けて右は貴女、左が私という感じでどうでしょう?」
なるほどそういうことか、私は
「なんだ。そういうことね。だったらそれでいいわ」
と余裕ぶった大人の女性のまねをして嫣然(?)と微笑む。どうだ。12歳にしてこの色艶は。
!!!なぜか頭をなでなでされた。私の色気は無視ですか…
朝日もまだ顔をみせていない早朝。空はだいぶ明るくなったが一番寒い時間帯ではないだろうか?
うう、寒い。布団からでたら死んでしまうんじゃない。ああ、どうしてこんなに暖かいのだろう。まるで人に抱きしめられているような・ ・ ・
ん?抱きしめられているような?
そっと目をあけてみる。
「きゃああああ!!」
案の定というかある男の顔面がドアップであった。寝起きだったせいか残念ながら前回ほどの右ストレートを叩き込むことは出来なかった。
ある意味、衝撃的目覚めのおかげで眠けなんか吹っ飛んだ。
根源的原因である男は土下座中。彼曰く、丁度良い抱き枕だと勘違いしたと。
そうね。凹凸なんて無いもんね。
「ふふふっ・・・」
いかんいかん。思わず黒い笑みがこぼれてしまう。ビクッと土下座男の肩が反応したような気がしたが・・・
ドンドンドン!
少し乱暴なノックの音が響く。
「開いてますよ」
入ってきたのは船長とおっさんだった。
「なんだ。さっきの悲鳴は」
じろりと船長が男を見据える。
「いや、それよりも、お宅の娘さんは客人に暴行を働くのですかな?」
鼻から血を流している男を見つめた後、じろりと私をにらむ。
すると船長がおっさんをにらみ。
「もちろん、意味もなく殴るようなS的な教育は行ってこなかったと自負しております」
するとおっさんも睨み返し
「ほほう、そうですかな?私は殴られたと記憶いておりますが」
「非礼には非礼で返せと教えただけです」
睨み合う両者。このまま膠着が続くと思われた次の瞬間。
『カンカンカン!!』
非常事態を知らせる警鐘が激しく打ち鳴らされた。
少しは一人称の小説にちゃんとなってきたでしょうか?この調子でバンバン書いてゆきたいです。励みになりますので感想をお願いします。
3/4誤字 表現修正




