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依頼

「と、まあこういう感じだ」

話をしたスパイの残念ながらかっこよくはないおじさんはどこか得意そうだ。

「でもどうやってそんな情報知ったの?遠距離の魔導装置はないみただけど?」

「ああ、あんなに大きくてデカイものこんな小さな店におけないだろう。古典的な通信手段、伝書鳩さ」

「なるほど」

「北東部での戦線は春先まで膠着するだろう。そこでだ。ちょっとした依頼があるんだが受けるか?」

「依頼?どうして私に?」

「あんただろう。王子から自由入港権せしめたっていう女の子は」

私は少し警戒して

「さあ、どうかしら?」

「なんでも、そうとう可憐な少女らしいが」

「ええ、私がその可憐な女の子です☆」

しまった!こんな誘導尋問に引っかかるとは!

「ははっ、情報通りおもしろい女の子だな」

ちょっと、どういう風に情報回ってるの、と言いたくなるのをぐっとこらえて

「で!どんな依頼なのタダじゃやらないわよ」

「くくくっ、予想通りの反応だ。もちろん、というか報酬を確保したかったらこの依頼もやるべきだ」

スパイのおっさんはちょっといやらしい顔をしてそう言い切った。

「?どういうこと」

「この依頼はヴィーナ王国が滅亡しない為のものだ」

「ん?勝ってるんじゃないの」

さっきの話だと勝っているような感じだったが

「負けてないだけだ。現状では春先の攻勢に耐えられる状況にない」

少し、いやかなり真剣な表情で言った。

「・・・・・・そんなにやばい?」

「やばい」

「詳しく聞きましょう」

自由入港権を紙くずにしないためにもね・・私は自分にそう言い聞かせた。


叔父さんこと船長をよんで3人で集まったのは店の奥の狭い事務室だった。

依頼は春先に向けて物資や人材を収拾し、デン王国に向かうというものだった。

「デン王国?ヴィーナ王国じゃないの」

「ああ、残念だが普通に物資を送っても意味はほとんどない」

「それほど危機的なのですか?」

船長は不安なのか何度も手を上げたり下げたりしている。

「危機的・・・ってわけじゃないが、もともとヴィーナ王国とデン王国では軍事力に差がありすぎる。デン王国は北東部では最大の軍事力を持った国だ。翻って我が国は北東部でも小国。自力に差がありすぎる」

「しかし、昔から北東部は小国が乱立していたんですよ。どうして急にバランスが崩れたんです?」

「まあ、非公式にではあるがデン王国とヴェール帝国が同盟を結んだっていうのが最大の理由だな」

「あの傲慢な国で有名なヴェール帝国が同盟なんて結ぶの?」

「嬢ちゃん。事実は小説より奇なり、だよ」

船長は何度もうなずいているが私にはまだわからない。もう少し大きくなればわかるようになるんだろうか・・


船長とスパイのおじさんは何度もやり取りをし、最後には固い握手を交わした。どうやら契約がまとまったらしい。さて、私は遠くの、といっても船で10日の距離の、氷の海に閉ざされた北東部に思いを馳せた。


彼は無事でいるのだろうか。


彼のことが気がかりでならないことを私が認識するにはもう少し時間が必要だった。

物語も終盤に近づいたように思います。もとは1時間程度のものと考えていたのに結構伸びてしまいました。

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