ランド島へ
私が隠れたのは豆の入った樽の中だった。潜りこむのが簡単だし、重さもそれなりにあるので担がれても分からないという見立てがあったからだ。その悪巧みは見事成功し自分の船に密航するというわけのわからない状態になっている。出港してから大分時間がたった、もう出ても大丈夫だろうと判断して樽からゆっくりと出た。
「ん~ごわごわする」
豆が服の中に入ってしまったのだ。私は豆を取り払うため服を脱いだ。あ、ヌードではないですよ。下着姿です。
ぱらぱらと豆が落ちていきます。服の豆を取るのに夢中で周囲の警戒を解いたというか自分の船内で警戒も何もしていなかった。それが失敗の原因だった。
「あっ!」
「え?」
食料庫の扉を開けたジェイドが下着姿の私と目を合わせた。互いに硬直。そりゃあ、完璧な不意打ち、硬直くらいします。
そして
「きゃああああああああ!!」
お約束の反応をするまで少し長い時間が必要だった。
つい反射的に手がでる。いけない!相手は王子様よ。顔は避けないと、いや殴ることを止めるべきでは?いや、それも殴らないと私のアイデンティティが許さない・・・いろいろ考えているうちに寸止めが聞かないほど拳が相手に近づいていた。せめて顔は避けようと強引に拳の軌道を変える。
そして拳は鳩尾に吸い込まれた。
「ぐげぼ!!」
奇声を発するジェイド王子。ちなみに鳩尾は人体の急所です。ジェイドは文字通り、悶絶した。
「お前は何を考えている!!」
さっそく大目玉です。船長、半端ない迫力です。普段からその十分の一もその迫力が出せればものすごく頼りになるんですが、残念です。
「落ち着いてください。船長」
いつもは頼りにならないのにこういう時に頼りになるんだなあとジェイドの評価急上昇中です。
「べつにやましいことはしていません。自分の船に乗ってるだけです」
「そういうことをいっているんじゃない!俺はお前を船を下りるようにいっているはずだ!」
「乗りたかったから乗っただけです」
取りつく島もないように毅然と言い返した。
「レイ!俺はお前を心配して港に置いたんだ。俺が心配しちゃあいけないっていうのかい?」
む~ん、早くも叱り方を変えてきた。こういうことは百戦錬磨の猛者だな。しかし、女の子に口で勝とうなんて1000年早い!
「ええ、心配かけないように船に乗りました。あんな辺鄙なところにおいて何かあったらどうするの?治安も悪くなってるし、戦争も近づいてくるし、疫病も終息していないし、叔父さん私はなんで船から下ろすほうが安全と思ったか分からないよ」
「う!!しかしだな。この船が向かうのはあのライド島だ。危険が高いと思うのは当然だ!」
「別に沈められに行くんじゃないんでしょ。
「そりゃそうだが、敵の船が襲ってくるかもしれないしな」
「ほとんど積み荷のない船に追いつける船は少ないことはわかってるくせに。もし追いついてきてもランド島に近づけば相手は逃げるわ」
どうだと言わんばかりのうるうるとした目に見上げるポーズ。これで
「わかった分かった!!今更降りろとは言わん!!」
落ちたな。
「ジェイド様もかなわなければこのまま進みますが・・」
ちぃ!船長逃げたな!ちゃっかりジェイドにアイコンタクトで断れと言っていやがる!
「べつにかまわないでしょう。それにレイさんがいるほうがリリアーヌ様との面談もスムーズに進みそうですし」
「いや、しかし」
ふふふ、見苦しいぞ!叔父さん
「じゃあ、いつものように雑用任務に戻ります」
「おいコラ!!待て!」
船長の追及を避け、操船を手伝ったり、料理をしたり、掃除をしたりして過ごす。
さらに3日が過ぎた。うっすらと水平線の向こうに大きな島が見えた。
ランド島。海洋国北海最大の拠点。いまだ人間が足跡をつけていない多くの領域の一つである。
年度末が近づいてきたせいか忙しくなってきました。毎日の更新は難しくなりそうです。ここまで読んでいただいたすべての方に感謝です。
3/4誤字修正
ちゃんと完結まで頑張りますよ?




