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幻覚教育  作者: 月海みやび


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Case1

目には目を、歯には歯を⋯

暴言には暴言を、暴力には暴力を⋯


犯した罪の重さは、痛みを体感しなければ理解出来ない。


ならば、痛みを知ればいい。

そして、自らの過ちを悔い改めよ⋯


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「幻覚教育管理局の久世と申します。神崎莉央さんですね?」

「そう、だけど⋯幻覚⋯何?」

「いじめの通報を受け、参りました。」

「は!?いじめなんて、してないんだけど!?」

「そうですか⋯。なら、断る理由はありませんよね?」

「⋯私、暇じゃないんだけど?」

「悪い事をしていないなら、エラーですぐに終わります。」


有無を言わせぬ迫力に、思わずため息をつく。


「⋯わかった⋯何をすればいいわけ?」

「そちらの椅子に座って頂ければ⋯。」


視線の先にある椅子に座る。


「念の為、拘束させて頂きますね。」

「は!?何で⋯」

「幻覚教育を安全に最後まで受けて頂く為です。」


素早く椅子に固定され、ゴーグル一体型のヘルメットを被せられる。


「では、いじめを受ける世界へ⋯。いってらっしゃいませ。」


一瞬、全てが無になる。

次の瞬間には、いつもの教室が広がっていた。


『邪魔⋯ってか、キモ⋯』

『は!?何でキモいとか言われなきゃなんないの!?』

『鏡見たら?』


クスクスと笑う、友達だったはずの子達⋯


『ていうか、いきなり何!?私が、あんた達に何をしたって言うの!?』

『自覚ないの?無意識に友達の悪口言うとか⋯ヤバくない?』

『あんた達の悪口なんて、言ってないんだけど⋯』

『嘘つくなよ!てか、もう友達じゃないから⋯喋りかけないでくれる?』

『っ⋯私だって、あんた達なんかと仲良くしたくないから!』


別のクラスメイトに声を掛ける。


『ねぇ、一緒にお弁当食べない?』

『⋯⋯⋯』


無視するクラスメイトに怒りを覚えながら、一人でお弁当を食べる。


『ぼっちじゃん⋯可哀想〜⋯』

『あんた達なんかと一緒に食べるより、ぼっち飯の方が美味しいから!』

『ヤバ、ウケる〜⋯』


馬鹿にするような笑い声が、頭の奥まで響く。


『授業始めるよ!まずは、二人一組になって!』

『⋯一緒に組まない?』


誰に声を掛けても無視され、一人立ち尽くす。


『神崎さん、一人?誰か、他に組めてない人は?』


教室を見渡す先生に、腹が立つ。


『そっか、欠席者が居るんだ⋯誰か、神崎さんも入れてあげて!』


皆が先生から視線を逸らす。


『⋯そこ、神崎さんも入れてあげてね!』

『うわ、最悪⋯』


授業中、三人で一組のはずなのに孤立する。


『生きてて楽しい?早く死ねよ』


耳障りな笑い声と言葉に、吐き気を覚える。


一方的に罵声は浴びせられるのに、こちらの言葉は聞いてもらえない。

ひたすら続く、悪口と無視に心が壊れそうになる。


⋯嫌だ⋯!

こんな思い、耐えられない⋯!


「っ⋯もうやめて⋯!」


涙が溢れて止まらない。


「っ⋯ごめんなさい⋯私⋯ちゃんと人の気持ちを考えてなかった⋯」


不意に、視界が歪む。


「いじめられる人の気持ち、理解出来ましたか?」

「っ⋯はい⋯」


震える手で涙を拭う。


軽い気持ちでしていた事の重さに、体感して初めて気付いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「報告します。いじめの罪で幻覚教育対象者となった、神崎莉央ですが⋯。その後は、いじめられている人を見付けると助けに入っているようです。これにて、幻覚教育を終了致します。」

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