青眼褐色コサックガールとリア充ライフ
■1
数年後。
カラト村。
夕方。
ナディアは、幼い子どもの手を引いて農場の前に立っていた。
「ほら」
草原の向こうを指す。
「パパとママが帰ってきたわよ」
「パパー!」
「ママー!」
遠くから、二頭の馬が近づいてくる。
一頭には修司。
もう一頭にはソーニャ。
その周りを。
チェルとベルカが走っていた。
「ただいまー!」
ソーニャが大きく手を振る。
少し膨らんだお腹。
それでも。
いつも通り、ザリャの上にいる。
「おかえりなさい」
ナディアが笑った。
二人が馬を止める。
「今日も大変だったわ」
ソーニャがザリャの首を撫でる。
「羊が一頭、迷子になっちゃって」
「見つかったの?」
「もちろん」
ソーニャがチェルを見る。
「チェルが見つけてくれたの」
「ワン!」
褒められたのが分かったのか。
チェルが尻尾を振る。
そのとき。
ポケットのスマートフォンが震えた。
「ん?」
画面を見る。
村人からのメッセージだった。
《畑にまた何か入ってるみたいなんだ》
《明日、時間あったら見てくれないか?》
そのまま返信しようとする。
「シュージ」
「はい?」
隣を見る。
ソーニャが、にこにこしていた。
「馬上スマホは危ないぞ♡」
「……はい」
修司は素直にスマートフォンをしまった。
ナディアが笑う。
子どもも、意味も分からず笑っている。
修司はミーラから降りた。
顔を上げる。
青い。
大きな空。
その下には。
どこまでも続く草原。
あの日と同じ景色だった。
ただ。
今はもう。
一人ではなかった。
『道庁クマ課でクレームに病んだおっさん公務員、ユーラシアの真ん中で青眼褐色コサックガールとリア充ライフ』
完




