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泣き虫の私が泣く人のいない世界に行った話。追加で絶対泣かない女がこっちの世界に来た話。  作者: ヤマト


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26.東の番外編 マリィ~ミカエル(*)


 

 今だ。

 思って気合を入れた瞬間に、じわっと眼球が濡れた。


「……ふええええ、うええええん……」

 

 私、泣くふりもできるわ。わざと泣くのだもの、全然大丈夫。



「うえ、うえええん、ミランダ様、ぐすっ……うえ」


 目を擦りながら前方を見ると、思惑通りに立ち止まって振り向くおふたり。ほらね。


「ま、まままま……マリースさま……!?」


「……っ!」


 真っ赤な顔で、驚きのあまり口を開けたままのミランダ様。と、動揺したのか思わずミランダ様にしがみつくペリオール様。私はしゃくり上げるのを堪えて必死に言い募った。


「ぐす、ふえ、ミランダ様、逃げるのでしゅ、あき……諦めたらだめなのです」


「ま、マリース様……」

 ミランダ様は呆然としたまま……しかし、小さく首を振る。


「いいのですマリース様、いいのです。わたくしどもはもう、いいのです。な、ななな……泣くほど……思いやってくださりありがとうございますね」


「だめなのです。ひっく。……何か必ず、よい方法がありましゅ」


「いいのですよ。……もう考え尽くしました。さあ、もう、な、ななな涙を、お拭きになって」


 ケイトより差し出されるハンカチを断って、私は鼻をすする。


「ミカエル様に頼めばよろしいわ」


「…………は?」


 信じられないと聞き返すミランダ様に、泣きながら真顔で頷く。


「ミカエル様に頼みましょう。きっと何か良い案をいただけます。……ぐすっ。だから諦めること、ないのでしゅ」


 そうして、私は胸を張った。


「わ、私は、少し前まで、あ、悪の令嬢でしたの。ぐすっ。だ、だから、思う通りに事を運びますわ、ミランダ様の意思など無視です。わがままですもの。私」


「…………あらあら」

 頬を染めて、それでもミランダ様が優しく、ぐずる妹を見る姉のようなお顔で笑った。


「これ以上、侯爵家若様を煩わせることはありませんわ。……それに、本当に打つ手もございません。領地は領主の自治。いかに若様と言えど、他家のことはいささか難題にございましょう」


「いいえ」

 私は堂々と否定する。



 わざと泣くふりをしているはずなのに、ミランダ様の困ったような笑顔を見るとどうしてか涙が止まらない。おかしいわ。



「いいえ。私の旦那様は国一番の知将にて天資英明。千手先を読む策略家でございます。ひっく、ぐしゅ……私、おねだりしますもの。悪女ですもの。思うがままになるまで、絶対に諦めませんわ」


「ふふ」

 嬉しそうに、滲むように笑って、ミランダ様が頭を下げる。ペリオール様をせかして、おふたりは行ってしまう。



「お、お覚悟なさるとよろしいわ、ミランダ様!」



 私は必死に叫んだ。




「ミカエル様は英明だけでなく果敢。……侯爵家も公爵家も、王家も全貴族も全社交界も、すべてを騙して鮮やかな大逆転を成し遂げる智謀百出の賢人ですの!絶対に、絶対に、今回も軽々と覆しますから!どうぞ、覚悟してお待ちなさいませ!」




 遠くなる背にぶつける。そして我慢できずに「うえーん」と泣いたら、「どこの赤ん坊よ」とダマヤ様が呆れ、ケイトが背中をとんとんしてくれた。



















「……」


 ミカエルはたまらなくなって駆け出した。慌ててケイトが追ってくる。


 あの夜会でも、先ほどの王宮でも、マリィのことで心がいっぱいになると自分は走り出すのだな、と他人事のように思った。


「……どこかふたりきりになれるところは!決して手は出さない、誓う!」


 背後に怒鳴ると、ケイトも怒鳴り返してくる。


「それなら本邸二階、ご夫婦の寝室予定のお部屋はどうでしょうか!ベッドは未設置でソファだけございます!」


 こらこらー、いけませんよーとのん気に言って、カリムが余裕の足取りで背後に迫る。が、「わっ」とつんのめった。ちらりと振り返ると、ケイトが短剣をカリムに向けて股間を刺そうとしている。それをカリムはやけに嬉しそうに避けていた。


 ミカエルは走る。


 メイド達が驚き道を開け、護衛達が次々と走り寄る。ミカエルは中庭に飛び込むと、マリィの背中を見つけた。

 テーブルにつき、男爵令嬢と並んでいる。男爵令嬢は身振り手振りをつけて語り、マリィはメモと取りそうな真面目な様子で聞いている。こういう時のふたりはろくでもないことを話し合っているだけと報告を受けているので、かまわずにミカエルは「マリィ」と呼んだ。


「ミカエル様?」


 驚いたように振り返る目尻が赤い。銀糸の髪、白い頬、朱のきらめきを目に入れたミカエルはもう心臓が燃え上がり潰れる心地になって、そのまま横抱きに持ち上げた。


「ひゃっ」


「ただいま、マリィ」


「お、おかえりなさいませ?」


 びっくりして固まっている。可愛い。


 すいっと目を逸らす男爵令嬢を一瞥した後、本邸へ走り込む。開け放たれた荘厳な扉を抜けて重厚な階段を昇り、寝室の扉を蹴り上げて中に入る。ソファへそっと横たえるまで、マリィは朱の目を見開いて驚いたまま動かなかった。



「はあ。はあ。マリィ。大丈夫ですか」


「あ、はい。はい、ミカエル様」


 四つん這いで上から被さって、小さな顔の横に両手をついて閉じ込める。


「いろいろ、たくさん、お話ししたいことがります。はあ。聞きたいことも」


 呼吸を整えるミカエルに、マリィは瞬きをして何度も頷いてくれる。何がなんだかよくわかっていない表情も可愛らしく、ミカエルは少し笑ってしまった。


 しかしあえて、きゅっと口元に力を入れる。

「まず、わたしは、マリィ。あなたや義父上に、「妾を持ちたい」などという言葉は言いません。一生」


「え?あ、はい」


「マリィがもうひとりいたら少し考えます。でも、やはりひとりで手一杯ですから。最終的にそれはもうひとりのわたしに任せます」


「……ミカエル様がふたりいらっしゃるの?」


「もしそうなっても、マリィ、あなたはわたしの方を選んでくださいね?」


「……?……?」


 完全に混乱している可愛い頭の、まぶしい銀の髪をすく。それから、と畳みかけた。


「わたしは、女性優位な閨での技巧がどうのこうの、というような本は持ち合わせておりません。こちらへ持ち込む本すべて確認していただいても結構です」


「あ」

 ようやく自分たちの会話だと思い当ったようで、マリィがわずかに赤くなった。


「もしどうしても読みたいとマリィが言うなら入手しましょう。ただし、それはわたしとふたりきりで読みます。必ず。ひとりでも、他の人とでもいけません」


「い、いいえ。そういうわけでは……ほ、本の存在も知ったばかりで……」


「では探してみましょう。今度一緒に読みましょうね」


「ん、あ、はい?……え」


 流されて返事をしたあと、かっと染まる頬を見て楽しむ。


「そして、もう幾度も同じ話になってしまいますが。あの男爵令嬢の言うことを真に受けてはなりませんよ。……まあ、お茶をともに楽しむくらいなら……致し方ないとわたしもケイトも諦めておりますが……」


 苦渋の決断なのですよと銀の髪を掬う。それにそっと口付けた。


 ソファしか置かれていない広い部屋に、カーテンない窓から日差しが降り注ぐ。桟の影が背もたれにかかり、ミカエルの視界を遮った。



「そして」


 喉も内臓もすべて破裂しそうだ。愛しさと、それから罪悪感で。






「いつから、気付いていたのですか」





 ミカエル様は「すべてを」騙して鮮やかな大逆転を成し遂げる智謀百出の賢人ですの!絶対に、絶対に、「今回も」軽々と覆しますから!





「いつから。……いつから気付いて?マリィ、あの夜のことを、あなたは、一体いつ」


 第二案が本案だった。それだけ。


 じっと見つめる先の顔は少し首を傾げ、そしてぱちっと瞬きをする。

 銀の髪が曲線を描いて輪郭を辿り、しばしの沈黙のあと、「ふふっ」と無邪気な笑い声がした。


「気づいていただなんて。私が気づくわけありません。ただ最近、前よりもっともっとミカエル様を知って……知って行くうちに、ふと思ったのです」


 細くたおやかな指がそっとミカエルの額をなぞる。初めて、自分が汗を滲ませているのがわかった。


「ミカエル様、あの夜の馬車の中で、私を抱っこしながらおっしゃいましたでしょう。第一案は失敗です。すべて失敗ですと。わたしの落ち度です、と」


「……ええ」


 言った。あの夜、柔らかく甘いにおいのする体を抱き締めて言った。


 マリィはソファに散らばった銀の糸をきらめかせて、ミカエルの額を幾度も撫でながら何でもないことのように続ける。


「ミカエル様とたくさん一緒にいて、たくさんお話しして、ふと思ったのです。…………落ち度?って」




 ミカエル様の、落ち度?……失敗?



 そんなこと、ある?



「ミカエル様に、落ち度なんてことあるかしらと。……ではどういうことだろうと考えるに、例えば、「落ち度」も計画のうちなんじゃないかしらと思ったのです。第一案を失敗することも計画。だったのではと」


「…………け」

 胸が素手で握られたように痛い。


「軽蔑、しないのですか……わたしは、あなたを……騙して」



 マリィは一瞬きょとんとして、そして花が咲くように笑った。





「そこまでして、私の好きな方が私を望んでくれたのですもの。私は嬉しくて仕方がないのです。ミカエル様」




「……」



 マリィが涙を流す理由がわかる気がする。

 自分は、絶対に泣けないのだけれど。





「ね、ミカエル様。それよりも」


 口を噤んだミカエルに、マリィが下から身を乗り出す。朱色の目がきらきらしていた。


「それを考えているうちに、どんどん他の疑問も湧いてしまいました。ミカエル様。……本当に第一案第二案だけでしたか?ミカエル様でしたら、実は第三案もあったのではないでしょうか」


「十二……ほどありました……」


「まあ!本案第二の次は、有力候補やはり第三案でした?」


「……そうですね。第三案です。……王宮を出奔し馬車に乗って公爵家へ寄ったあと、そのまま港へ向かって国を渡る計画です。マリィを攫って他国へ逃亡……港近くにあるわたしの商会事務局の建物に、逃亡のための荷物や資金を準備しておりました。……公爵家に寄るまでは、実は頭の中では第三案が本案としのぎを削っておりました」


「まあ。だから港に商会を作っておられたのですね」

 マリィがおかしそうに笑う。


 そうだ。自分が自分であるすべての理由は、ミカエルのすべての行動の理由は、マリィなのだ。


「マリィを……あなたを手に入れるためなら、なんだってします。悪辣なことも、なんでも。極悪人なのです。わたしは」


 懺悔のように告げると、マリィは顔の横の手に手を重ねた。


「……なぜ第三案は却下されましたの?」


「……マリィが……公爵家で、みなに囲まれて……泣いていたから……」


 だから、引き離すことはやめようと思った。……よし。やはり第二案で行こう、と。


 優しい弾むような笑い声が降る。


「ミカエル様は、あの夜ずっと私におっしゃってたわ。こんなことになって申し訳ない、必ずやり直すと。優しい極悪人ですね」


「……必ず、やり直します。やり直させてください。マリィにふさわしい場所で、一流のものに囲まれて、プロポーズを、何もかもを。だから忘れて欲しいのです、あの夜は」



 するとマリィは、可愛い眉を下げて悲しそうな声を出した。






「あんなに幸せだった夜を忘れるなんて、無理です。ミカエル様」








 愛しいという気持ちに色があるなら、きっと銀の色をしている。

 明ける朝に引く夜空のような朱色かもしれない。


 どちらにしろミカエルは、愛の形はマリィの形で、愛の音はマリィの声だと思うのだ。



 その愛の塊を、ミカエルはひとつだけ手に入れた。手に入れるために深海から浮かび上がってきた。それだけの話だ。








「くっ……」


 触りたくて仕方ないが誓ったので触れない。小さな顔の横についた腕がぶるぶる震える。ミカエルは頬の内側を噛んで耐えた。……耐えられるか。


 何か話題を変えて気を逸らそうとした時、マリィが「あの、ミカエル様。お願いが」と言う。ミカエルはわざと表情を改めた。


「……その前に。マリィ。もうひとつ聞きたいことがあります」


「はい」


 つられて真剣な顔になるマリィに目尻が下がってしまうのを堪えて、厳しく装う。


「お願い……わたしに何かをおねだりするそうですね?が、マリィ。おねだりの前にまずは、先触れなき身分不詳の人間を門内に招くことは二度としないと誓ってください。危機感を持たなければなりません。それができたならそのおねだりとやらの内容を聞きましょう」


「……」


「マリィ?」


 目を伏せて何事か考えていたマリィが、ふと視線を上げた。


「ダマヤ様から教えていただいた技術で、おねだりしてみます。私」


 え、いやそれは今は、まずい、


 と言いかけたミカエルの首に華奢な両腕が回る。

 優しい力に頭を引っ張られ、柔らかいものが唇に当たった。


「ちゅ」

 音まで可愛く響かせて桃色の唇が離れる。


「……」

 呆然とするミカエルが見たのは、耳まで真っ赤にして顔を両手で覆うマリィだった。


「こ、これは……ミカエル様も一発で黙るとダマヤ様がおっしゃって……叱られる時や、おねだりするときにいいと、じょ、女性が男の人をぐにゃぐにゃにしてしまうと、ひ、ひとつだけ……教わった技術なのです……」


「……」


 ……技術と言うか、あまりにも可愛らしい行為に魂が抜けた心地になる。しかしミカエルは確かに黙ったし、とてもぐにゃぐにゃになっている。やはりあの男爵令嬢についてはマリィにあまり近づかないよう言い聞かせなければ。


「あ、あのっ。でも、あの、本当は、おねだりするために教わったのではないのですっ。これは、私の第二案なのです!」


 ミカエルがぐにゃぐにゃしてる間に、マリィが手を離して訴える。


 ……第二案?


「宰相夫人……オーブリーお義母様が、ミカエル様は披露会が終わるまでは、私に指一本触れてはならない、決して手を出してはいけないと命じました。の、で、」


 マリィは赤くなりすぎて潤んだ目でミカエル見つめて、たどたどしく言った。


「ミカエル様「が」私に手を出してはいけないのなら、私「が」ミカエル様に手を出せばいいのではないかと思いまして!わ、私の第二案でございます!……でも、じょ、女性優位に……コトを進めるというのが……まだよくわかっておらず、手を出すというのは何をどのようにすればよいのか、ええと……」


「……」

 ミカエルは震えた。


 腹の底からカッとなり、あまりの灼熱に血という血が震える。


 愛しさはときに、暴力だと思う。


「…………では。わたしは、第三案を提案しましょう」


 ぱちぱちと瞬きするついでに、ぽろりとたまった涙を一粒こぼすマリィに微笑む。……うまく笑えているだろうか。確信がなく、こめかみに伝うそれを唇で「ちゅ」と吸い上げた。


「っ」


「……「手」を出してはいけないのなら、「唇や舌」を出せばいい。……これがわたしの第三案です」


「へ」


 半開きの可愛い口に近づき、かぷりと自分の口で覆う。そのまま舌を差し込み、甘くて狭い口の中をぐるりぐるりと舐め回した。


「ん、んんっ」


「……ちゅ……はあ。マリィ、頼みがあります。わたしは手を使えないので、そのドレスの首元と肩部分だけ、ホックを外してくれませんか。自分で」


「え、え?」


「大丈夫。何もしません。……がんばります」


「……」


 あまりにも情けない顔だったのか、つられるように眉を下げたマリィが、首横と片側の肩のホックをぱち、ぱちと外して行く。白い指が細かく震えていて、それすらも愛おしかった。


首とつながる肩部分だけが外れたドレスは前身ごろが斜めに重なっている。その端を口で咥えて、ミカエルはそっとめくった。


「み、ミカエル様」


「……やっぱり。肘に当たるのがずいぶん柔らかいと思っていました。コルセットはつけていないのですね」


 首から胸までがはだけて、そこには綺麗な双丘と、それをぴったりと覆う白く薄い布。


「あ、あの、あの……コルセットがやっぱり苦しくて、私のお胸のサイズがあまり無いらしくて……そうしたらメイドが、街で……売り出したばかりだけれど評判になっているという胸当てを教えてくれて」


 布にゴムが織り込んであり、伸縮が容易で胸の大きさに合わせて形を変えてくれる胸当てだという。下胸の部分に硬めのゴム布が配置されているため、「抑える」「持ち上げる」というよりは、「支える」心地なのだと。


「……注文してつけてみたら、とても快適で……あの、もちろん、外に出る時や正装時にはきちんとコルセットを装着いたします。邸内だけにしますので」


「そうですね。必ず邸内だけにしておきましょうね。でもこれならば、好きなお菓子もたくさん食べられますね、マリィ」


「……はい!」


 笑いかけると嬉しそうにする。その上下する胸当てからもよく見える、ハリのある胸のわずか横に、そっと唇を埋めた。


 ……まあ、この胸当てを開発して販売しているのはミカエルの別の商会だけれども。それは置いておいて。


 商会長だからこそ知る、この伸びる胸当ての弱点、脇のゴムが薄い部分を軽く噛む。

 そのまま下に少し引っ張ると、ぷるっと形の良い胸が飛び出してきた。


「きゃっ、え、ええっ」


「…………はあ」


 驚くマリィの胸の谷間に、鼻を埋める。

 ゆっくりゆっくり息を吸い、甘い匂いで胸をいっぱいにして、それから満足げな深い息を漏らす。


 そしてマリィごと体を横にずらし、ソファの座面にふたりで横たわってぎゅっと抱きしめた。


「……ほんの少しだけ、仮眠をとってもいいですか」


 柔らかさと弾力と、あたたかい温度と甘い匂いと。最高に心地の良いものに顔を囲まれ、ミカエルはうっとりと言った。


「……寝ておられませんの?ミカエル様」


「昨夜は読み物をしておりました。……寝不足だと頭が回りませんから、少しだけ」


 はい、と優しい声が落ちてきて、胸に抱き直され、同時に優しい手がミカエルの髪を撫でる。


 ソファだけの部屋の窓の隙間に、中庭から風が吹き込む。……ああ、カーテンも相談しなければ。


「……少し寝て、起きたら……至急策を練ってみせましょう」


「え」


「カニバル子爵家の、あのふたりのための策を。第二案でも第三案でも、いくらでも」

 胸に埋まり鼻を擦りつけると、至福の気持ちのまま浅い眠りが訪れる。



「……マリィ。とてもよく効くおねだりでした」








 



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