思いつきは、突然に
アメリアはセント・ブライスラー教会のアーチ型の回廊を歩んでいた。
アメリア・ド・デルカノ侯爵令嬢は10代の頃、一時的に皇子の婚約者だったが、アルフレッド皇子が当時の伯爵令嬢と恋に落ち、いわゆる真実の愛だのなんだのと、こちらとしては到底受け入れ難い不義理な行いの末、婚約破棄になった事がある。破談だったかも知れないが、あまりの驚きと衝撃で、詳しくはどうだったかはアメリアは知らない。
当時は子供だったし、幼い頃から知っている優しい婚約者がそんな暴挙に出て、アメリアを傷つけるとは夢にも思わなかったので、当時の記憶は曖昧だ。
彼とは幼い頃から交流があって、気心も知れた仲であったのに、伯爵令嬢の一方的な発言を鵜呑みにされ、やってもいない事を捏造された上に、一時は自身の評判を著しくも堕とされ、痛い風評被害を被る状況にまでになった。
そこは、まあ、アメリアの毅然とした態度と、今までの功績で事なきを得たが、真面目で通っていた幼じみの恋の醜態は、男性への失望と、ある種恋の恐さを、アメリアに植え付ける衝撃的な出来事であった。
あれから月日は流れて、風評被害も払拭されたが、今だアメリアの中には、恋に焦がれた2人に巻き込まれた恋の後始末の後遺症が確かにある。
しかも後味の悪いやつだ。
もう、男はいいかなーーーーと、アメリアが思ってもしょうがないだろうと思うのだが、そろそろそうもいかない様で、両親や親族からそろそろ結婚しろとせっつかれるこの頃。
なんだかなぁと、思うのだ。
せっつかれて素敵な人と出会えるとでもいうのか?
そんなわけあるかと、呆れ気味にため息をついた。
そんな時、閃いたのだ。
この際、パートナー探しが難しいのであれば、子供だけでもいいのでは? と、閃いたのだ!
それはアメリアにとって稲妻に打たれたかの如き閃きだった。
私、天才だわ。
アメリアは人知れず微笑んだ。
そもそも、信頼のおける男性がいないなら、そこは、もう無くてもいいじゃない?
子種だけでいいじゃない!?
そうよ。父親は要らん。子供だけで、私は充分なのでは?
私、完璧な案を思いついてしまったわ。
爽やかな風の吹き抜ける回廊を歩きながら、教会内だとは思えぬ不適切な閃きに、ほくそ笑むアメリアだった。思考は更に加速してゆく。
そうなると、頭脳派か肉体派、どちらかね。
悩ましい悩み事に、ため息が出るアメリアだった。




