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どうも。先日助けていただいたダークドラゴンです  作者: 紅井止々(あかい とまと)


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60話 鍛冶師オイヴィとことの顛末

「ふむ。世話をかけたようじゃの。礼を言うぞ、ヌシらよ。ワがカジャの町で鍛冶師をしとるオイヴィ・マユラじゃ。以後見知り置いてくりゃんせのぅ」


 目の前の幼女の言葉に、俺たちは全員目を丸くする。


「なんじゃ? 変な顔をして。ワが何かおかしなことを言うたかえ?」


 目の前にいる幼女は、ミスリルゴーレムから救出された、カジャの町の天才鍛冶師、オイヴィ・マユラ。テオドラの探し人だ。

 が、なんだこの口調は?

『ワ』ってのは『ワタシ』ってことか?


 見た目とのギャップが半端ない。

 茶色い髪は首の高さで切り揃えられ、前髪も眉の高さで綺麗に揃えられている。

 大きな瞳はくりくりキラキラとしており、頬がぷっくりとしていて突っつくと柔らかそうだ。

 真珠のような不思議な輝きを持つ真っ白な肌は、ほのかな紅色が差すことで一層可愛らしさが際立つ。

 手足はスラリとして、小柄な体ながらバランスの取れたスタイルをしている。

 もっとも、出るところは出ず、引っ込むところもストーンとした幼女ボディではあるのだが。

 ドーエンが見たら速攻で連れ去ってしまうだろう。それくらいに完璧な『理想的な幼女』なのだ。


 が、この口調だ。


「なるほど。これがロリババアと呼ばれる人種か」

「ご主人さんっ!?」

「たわけが!」


 ルゥシールが慌てた様子で俺を止めに入るが、それとほぼ同時にオイヴィが近くに転がっていた木炭を投げつけてきた。

 素晴らしいコントロールだ。見事に俺の眉間にヒットした。……痛い。


「誰が『ロリ』じゃ!?」


 あ、『ババア』はいいんだ……


「すみません。ご主人さんはちょっとアレな人なもので……」

「まったく最近の若いもんは年配者に対する敬いの心というものに欠けておる。嘆かわしいことじゃ」


 そんなことを幼女に言われてもな……


 俺たちは、揃って気絶していた村人を一人残らず縛り上げ、一箇所に集めた。場所的に村長の家跡地がいいだろうということで、そこに運んだ。広いからな。

 それにしても、村人は全員が全員年寄りだった。子供はもちろん、青年や壮年と呼べそうな人間もいない。例外なく老人なのだ。……なんなんだろうな、この村は。


 そんなことをしている間にフランカとオイヴィは目を覚まし、少し話をすることになったのだ。

 で、オイヴィの口調にみんなして驚いているわけだ。


「見てくれはこんなじゃが、ワは千と十二年も生きておるんじゃぞ」

「十二歳? サバ読むんじゃねぇよ。どう見ても十歳未満だろうが」

「千十二歳じゃ。見た目で判断するなと言うておろうに」

「いえ、見た目年齢は大切だと思いますよっ!」


 ルゥシールが熱く語る。

 そこは譲れないらしい。

 千を超えると気にならなくなるものなのかもしれないな。


「しかし、無事でなによりです、オイヴィ」

「心配をかけたの、テオドラよ。しかし、ヌシなら必ずや救い出してくれると確信しておったぞ」

「ワタシ一人の力ではありません。彼らあってこそです」

「うむ。そうじゃの」


 テオドラとオイヴィが俺たちを見る。

 そしてオイヴィが改めて頭を下げる。


「ワのこともじゃが、テオドラを守ってくれて感謝するぞぇ。少し抜けたヤツじゃがの、ワにはなかなかに可愛く思える数少ない友人なのじゃ」

「オイヴィ……ワタシのことを、そんな風に…………嬉しい」


 一年間粘り続けたテオドラ。その思いはしっかりと伝わっていたということか。


「しかし、こうもスグにヌシに会えるとは思わなんだぞ、ブレンドレルの第一王子よ」

「俺を知っているのか?」

「ヌシは自覚がないのかぇ? 割と有名じゃぞ」

「まぁ……魔導ギルドの連中には面が割れているかもしれんが……」

「違う違う。そんな小さなコミュニティの話ではありんせんがな。もっと大きな括りでの話じゃ」


 オイヴィはけらけらと楽しそうに笑い、そして、無邪気な笑みを俺に向けてくる。

 その笑みを見て……なぜだか分からないが…………ぞくっとした。

 無邪気な笑顔の奥に、計り知れない思惑のようなものが見え隠れしていたのだが……うまく読み取れなかった。理解の及ばない不気味さが、その笑みにはあった。


「まぁ、そう緊張せんでくりゃれや。脅かすつもりはさらさらありんせんよ」


 くるっと口を湾曲させると頬が膨らみ、人形のようなあどけなさが前面に押し出される。

 子供らしい、愛嬌のある笑みに変わる。


「実はの、先日ミーミルのヤツが突然訪ねて来おったのじゃ」

「ミーミルを知っているのか?」


 ミーミルは魔界に棲む魔神で、極度の活字中毒の変わり者で叡智の巨人などと呼ばれている。先日、『古の遺跡』地下の魔法陣によって召喚された巨人だ。

 ま、俺が呼び出したんだが。


『古の遺跡』関連のごたごたが済むとすぐに魔界に戻ると言っていたのだが……カジャに寄っていたのか。


「ミーミルとは昔馴染みでのぅ。鉱石について、よく話を交わしたもんじゃ。ヤツの知識はなかなかに面白いものがあるからの。ま、ただのオタクじゃがな」


 くふふと、含み笑いを零すオイヴィの表情を見るに、本当に仲のいい友人のようだ。


「そのミーミルが言うておったぞ。『ガウルテリオの秘蔵っ子が動き出した』との。じゃから、ワはテオドラに剣を打つつもりになったんじゃ」

「彼のおかげで?」


 テオドラが驚いた顔でこちらを見る。

 驚きたいのはこっちだっつの。

 なんで俺とテオドラの剣が関係あるんだよ?


「ヌシよ。魔法陣を……次元の結界を壊す気じゃろ?」


 オイヴィの指摘に、俺は素直に頷く。

 するとオイヴィは満足そうに、満面の笑みを浮かべた。


「なら、この娘を連れていっておやりな。きっと力になってくれるじゃろうて」


 オイヴィに背を押され、一歩前に押し出されるテオドラ。そのテオドラ本人が一番驚いた顔をしている。


「え、え? ワ、ワタシが? えっ?」

「本人が戸惑いまくってんじゃねぇかよ」

「なぁに。最終的には一緒に行くことになるさよ」

「俺の意見は?」

「ヌシに拒否権はないさね。それともなにかぇ? こんな可愛い娘との旅に、何か不満でもあると言うつもりかぇ?」


 いや、可愛い娘との旅って……


「そりゃ、確かにテオドラは可愛いけれど」

「かわっ!? そ、そんなあっさり肯定しないでくれまいか!?」

「お? 可愛くないのか? 価値ないか?」

「あ、ある! ワタシは可愛い! 可愛いから、その『柔らかくてそこそこ大きな何かをもみもみするような手つき』をやめてくれまいか!?」


 そいつは残念だ。


「うむうむ。仲もよいようで何よりじゃの」

「仲がよいって……そう見えますか、オイヴィ?」

「照れてはおるが、嫌がっておるようには見えんからの」

「……もう!」


 テオドラはオイヴィには手も足も出ない様子で、顔を赤く染めて一歩身を退いた。

 もう、好きにしてください、ということだろう。


「では決まりじゃの。ヌシの連れには、ヌシからうまく言っておいてくりゃれ」

「いや、うまくって……」


 俺は、俺の背後に控えている二人に視線を向ける。


「……って、ことらしいんだけど?」

「まぁ……わたしは、ご主人さんが決めたことでしたら……テオドラさんもいい人ですし……文句はありませんけど……」

「……物理攻撃が可能な人員は必要…………だけれど……」


 二人とも、肯定的な意見を述べながらも、どこか不満そうな表情を見せる。


「……そりゃ、テオドラさんは可愛いですし、性格も素直ですけど……そうあっさりと可愛いって認められると……自分との差を感じるというか……」

「……尻を抵抗なく触らせる辺りで、不当な評価ポイントが加算されている疑惑がある」


 なにをぶつぶつと言っているだ?

 お前らだって負けないくらいに可愛いだろうが。


「お前らも負けないくらいに可愛いだろうが」

「にょっ!?」

「……え?」

「………………………………あ」


 しまった。

 また思ったことが口をついて出てしまったらしい。

 ……仲間に向かって可愛いとか…………恥ずい、死にたい。


「……もぅ、そうやって一緒くたにして、雑な褒め方をされても…………全然嬉しくなんか……ぅぅぅうううっ、嘘です! 嬉しいです! ありがとうございます!」

「……私も、そんな風に思われていたなんて……………………ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」


 怖い怖い怖い!

 フランカ怖いよ!?


 いかん。

 やっぱり仲間は下手に褒めない方がいい。

「おっぱいが可愛いサイズだからね!」とか言ってお茶を濁そうかな?


「…………今、とても気分がいいから、余計なことを言うと……手加減出来る保証も自信もまるでないから」

「……い、言わないよ…………なにも」


 やべぇ、先に釘を刺された。……呪いの釘を。

 ま、まぁ、気分がいいなら、いっかなぁ……はは。


「面白い男じゃの、ヌシは」


 他人事のようにオイヴィが笑っている。

 くそぅ……もとはと言えばこいつが原因なのに。


 ……お前も照れて恥ずかしがれ!


「オイヴィもすっげぇ可愛いよな! 俺、めっちゃ好みだよ!」

「ふふん、そうじゃろう? けど、ワに惚れると火傷じゃ済まんぞぇ。なにせ、鍛冶師じゃからな。くふふ」


 くっそ!

 軽くかわされた!

 全然面白くない!

 もっと少女の心を大切に保管しとけよ、心の真ん中によぉ!


 ――と、その時俺は不穏な空気に気が付いた。

 辺りを見渡すと、ルゥシールとフランカ、テオドラまでもが、表情の抜け落ちた顔でこちらを凝視していたのだ。

 ……え、なに?


「……ご主人さん…………やはり、ドーエンさんと同じご病気に……」

「ち、違うぞ!?」

「……火葬、する」

「待て、フランカッ!? 魔法陣を展開するな! 詠唱を始めるな!」

「介錯は、任せてくれたまえ……」

「自害とかしないからな!? テオドラ、カタナは人に向けるな! な!?」

「くふふ……な? 火傷じゃ済まんじゃろう?」


 だから、なんで諸悪の根源が楽しそうに笑ってんだっての!?


「まぁ、そう不満そうな顔をせんでくりゃれ」


 少し申し訳なさそうな表情で、オイヴィが柔らかい声を出す。

 手首から先をパタパタと振り、俺を宥めるような目を向けてくる。


「助けてくれた礼と、ワの友人の面倒を頼む礼、まとめて払わせてもらうからの。のぅ、それでよかろ?」

「礼って?」

「そうじゃのぉ……」


 と、オイヴィは、するりと、襟元を緩めると白い肩をなまめかしく露出させる。


「思春期の小僧は、こういうのがお好みかや?」

「ダメですっ!」 


 俺が何かを言う前に、ルゥシールがオイヴィに飛びかかり、乱れた衣服を強制的に正す。


「ご主人さんの病気が悪化してしまいます!」


 いやいや、おいこら、ルゥシール。

 流石に俺でも、幼女の肩なんかに興奮はしねぇよ?

 あと、病気発症してねぇからな?


「くふふっ! 冗談じゃ、冗談」

「……むぅ。そういう冗談は、よくないですっ」

「すまんすまん。のぅ、小僧よ」


 膨れるルゥシールの頭を撫でながら、その肩ごしに俺を窺うオイヴィ。


「ヌシの剣を鍛え直してやろう。ヌシなら『魔法剣』くらい使えるのじゃろ?」

「魔力さえ補給出来ればな」

「上等じゃ」


 まぁ、そういうことなら、条件を呑んでやるかな。

 テオドラなら、足を引っ張られることもないだろうし、仲間に迎え入れようじゃないか。


「……ワタシは一年も粘ったのに……こんなにあっさり剣を鍛え直してもらえるなんて…………ワタシの努力は……?」


 いや……ちょっと、メンドクサイかな?


「そうしょげるな、テオドラ。これもみんな次元の結界を破るためじゃ。それにの、こやつなら、必ずそれを成し遂げてくれるじゃろうて。のぅ?」


「のぅ」と、視線を向けられては、「おぅ」と返すしかないだろう。

 俺の返事を聞くとオイヴィは「よい返事じゃ」と、上機嫌に笑った。


 なんだか、すべてがこいつの思惑通りに進んでいるようで釈然としないでもない。

 これがあれか、年の功ってヤツか? 


「そうと決まれば、カジャの町へ戻るかの。こんな村では鍛冶も出来んせんわな」


 価値のないものを視る目で村を睥睨するオイヴィ。

 その『価値のないもの』の中には、アルジージャのジジイどもも含まれていた。


「こやつらは、まったく懲りとらんかったようじゃの。今度は、もっときつい仕置きを受けるとよかろう」

「今度って……、前にも何かしでかしてたのか、このジジイどもは」

「あぁ、こやつらはの、元々カジャの町の重役だった者たちなんじゃよ」


 そう言えば、そんなことを言っていた気がするな。


「ま、もっとも。他所から来た商人が金に物を言わせてカジャの町を浸食していった結果、ぶんどられたような重役だったがの」


 千年生きるオイヴィは、町の歴史をその目で見てきたのだろう。

 遠くを見つめる瞳はどこか悲しそうだった。


 ウジンたちは、祖父の代にカジャに移住し、そして、徐々にその勢力を強めていったのだという。そして、仲間を増やし、ついには町の施政を担う重役の過半数を身内で固め、三代経つ頃には完全にカジャの町の実権を握っていたのだという。

 そして、権力を笠に、相当あくどいことを行っていたらしい。そんなウジンたち重役を止めることが出来る人間は、町にはいなくなっていた。


「こやつらは、幼い子供をさらい奴隷にしたんじゃ」


 借金の肩に奪ったり、時には夜道で誘拐したりと、そのやり方はかなり強引だったようだ。そして、男は奴隷として鉱山の採掘やたたら場での労働力、鍛冶場の雑務と、きつい仕事を押しつけ、女は…………そこで言葉を濁されたが、まぁ、変態のすることだからな。

 きっと目も覆いたくなるような酷い仕打ちをしていたのだろう。


「そんな時、一人の冒険者がカジャの町に訪れ、重役どもを一人残らず追放したんじゃ」


 その冒険者こそが、ウジンたちが言っていた『悪魔』に相違なかった。

 冒険者は町の惨状を目の当たりにして、相当怒り狂ったそうだ。町を破壊し、容赦なく徹底的にウジンたち重役を追い詰めた。

 死者も相当出し、カジャの町は再起不能な状態へと追い込まれた。

 人が住めなくなった町を捨て、ウジンたちは逃げ延びた先で、このアルジージャを作った。


 だからなのか。この町に老人ばかりなのは。

 実権を握っていた当時の大人たちが逃れて作った村だから若者がいないのだ。

 己の保身しか考えないウジンのようなものが主導者なら、年の若いものから順に盾代わりにされただろうし……子供も増やせず、気付けば老人だけの村になっていた。そんなところだろう。


「しかし、鉱山を手放し、ため込んだ金品を捨てて逃げた重役どもには何ものうなった。奴隷に鍛冶仕事をすべて押しつけておったせいで、鍛冶すらろくに出来んせん。ヤツらは、文字通り『すべて』を失ったんじゃよ」


『悪魔にすべてを奪われた』と言っていたウジン。

 しかし、実際のところは、自分たちが捨ててきたのだ。

 三代に渡る時間の中で、何一つ、基本的な技術すら身につけることもせずに。

 それを逆恨みしてカジャの悪口を吹聴していたのか…………


「何を喚こうが、負け犬の遠吠えと放置しておったのじゃが……一年くらい前かの? 何者かが重役どもに『力』を与えおったのじゃ」


 それが、ミスリルゴーレムと、あの口の突き出た奇妙な魔物だろう。


「ヤツらの狙いはワらしいという情報を掴んでの、なるべく人前には出んようにしておったのじゃが……まぁ、こんなことになってしもうたわけじゃ」


 誰がそんなことを……というか、誰があんなものを造ったのか、そっちの方が気になるか。


「どうやら、マウリーリオの技術を受け継ぐ者がおるようじゃの」


 オイヴィの言葉に、一瞬息が詰まる。

 俺も、その可能性を考えていたからだ。考えていただけで核心はなかったが……

 しかし、オイヴィは断言した。……ってことは、いるのか、マウリーリオの技術を継ぐ者が。


「ワを手に入れたかったのか、排除したかったのかまでは分からんがの」


 オイヴィを手に入れて『魔法剣』を作らせたい者。

 オイヴィを排除して『魔法剣』を作らせないようにしたい者。

 どちらの可能性もあり得るな。


「じゃからこそ、『魔法剣』を使えるヌシと、剣を窮めたテオドラが一緒に行動する方が都合がいいんじゃよ。個別に誘拐や殺害をされると、次元の結界が破れなくなるやもしれんしの」


 マウリーリオの技術を受け継ぐ者が、俺たちの邪魔をしてくるかもしれないのか……厄介だ。

 やはり、テオドラは連れていった方がいいだろうな。


 その後もう少し話し合いを重ね、ウジンをはじめアルジージャの連中はこのままここに放置して、冒険者ギルドの人間に引き渡すことになった。

 ……けど、逃げられたりしないかな?

 誰か見張りに残した方がいいだろうか。


「その心配なら無用じゃ」


 オイヴィは自信たっぷりにそう断言する。


「すまんが、ヌシらの誰でもいいんじゃが、向こうの倉庫からミスリルを持ってきてはくれんかの?」

「こんな辺鄙な村にミスリルなんか置いてあるのか?」

「大量にあるはずじゃぞ。なにせこやつらは、ミスリルゴーレムを手に入れてからの一年でワの鉱山から大量のミスリルをくすねてくれおったからの」

「当初の目的を忘れてこそ泥に精を出してたのか……何してんだここのジジイどもは」

「重役どもがごうつくだったおかげで、ワは先日まで無事でおれたんじゃ。その間にテオドラにも会えたしの。悪いことばかりではありんせん」

「欲は身を滅ぼすよなぁ……」

「まぁ、そういうことじゃな。ほれ、誰か早よぅ取ってきてくりゃれ」

「では、わたしが行ってきます!」


 ルゥシールが元気よく駆け出していく。

 爆発で吹き飛んだ村長の家のウラ庭に設置された頑丈な倉庫。

 そこにミスリルが隠されているとオイヴィは言うのだが…………はたして、その通りだった。


「ご、ご、ご主人さん!? 凄まじい量のミスリルがありましたよっ!?」


 ルゥシールが取り乱すほど、大量に備蓄されていたらしい。


「売ったりしなかったのか?」

「独占して値を吊り上げようとでもしておったのじゃろう。もしくは、出来もせん鍛冶に挑戦して、価値の高い武器を生み出そうとでもしておったか……どちらにせよ、欲に足を掬われとるがの」

「どこまでも自縄自縛な連中だな」

「そうじゃの。文字通り、自分たちで集めたミスリルで自分たちの動きを封じられれば、多少は懲りるじゃろうて」


 言いながら、オイヴィは懐から小さな槌を取り出す。

 黒と金色の、使い古された槌だ。

 鍛冶でもするつもりか?

 こんな炉も火もないような場所で?


「ワくらいの鍛冶師になると、鍛冶をする場所など選びゃあせん」


 そう言うと、オイヴィは左手に白い炎を発生させた。

 無詠唱、魔法陣なしの魔法だ。


「これはワの特殊能力で魔法ではありんせん。まぁ、見ておれ」


 そして、ルゥシールが持ってきたミスリルを燃える左手で掴む。と、一瞬でミスリルが真っ赤に熱せられる。それを右手の小さな槌で叩き始める。

 キンキンと甲高い金属音を響かせて、真っ赤に熱を帯びたミスリルが枷の形に整えられていく。


 それはあっという間の出来事で、一心不乱に槌を振るっていたオイヴィは、ほんのわずかな時間で人数分の枷を作成してみせた。

 器用なヤツだ。

 こんなに簡単に出来るのは、オイヴィが規格外の鍛冶師だからだろうな。

 オルミクル村でミスリルソードを修理してもらった時は物凄い時間かかってたし。


「あ、そうだ。ついでに一つ頼まれてくれないか?」

「なんじゃ?」


 俺は、当初の目的である馬車の車輪の軸を要請した。

 図々しいかとも思ったのだが、二つ返事でオイヴィは了承してくれた。

 武器でなければ、割と簡単に引き受けてくれるようだ。


 そうして、木製で構わないと言われていた車輪の軸が、思いがけず豪華になった。

 ミスリス製の軸を使った馬車ななんて、どこの世界にもないだろう。


「では、カジャへ戻るかの。話はワの家に戻ってからじゃ」


 そうして俺たちはいろいろあったアルジージャを後にした。

 途中でキャラバンに追いつき、想像以上に豪華な車輪の軸に驚かれ感激され、そこからは馬車に揺られながらカジャの町を目指した。



 まさか、あんなものが出迎えるとは思いもせずに。









ご来訪くださり、ありがとうございます。


本年、最後の更新となります。

お付き合いくださいました皆様、ありがとうございました。

是非来年も相変わりませぬお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。



さて、書いてみてびっくり。

「おっぱい」

一回しか出てきませんでした。

もっとテオドラのおっぱいを弄れたかもしれないシーンはあったんですが……

あ、弄るって、物理的にじゃないですよ。


感想で凄く惜しい(読みはほぼ正解)という方がいらっしゃいましたので……せめてルゥシールが初夢に現れるように祈るくらいはさせていただきたいと思います。(成功率は高くありませんが……もしかしたらフランカが『ぽいんぽいん』しようと努力をする、という悲しい夢になるかもしれませんが……)



ちなみに、

テオドラはそこそこ大きなお胸をしている設定です。

カップで言うとE~F。

……大したものですね。


が、ご主人さんは「微妙な胸」と表現します。

まぁ、隣にけしからん爆乳がいますので……相対的に微妙になるんでしょうね。


わがままなっ!



そして、ロリババア様登場です。


生粋のロリ信者の皆様には申し訳ないのですが、

鍛冶師オイヴィはこんな口調になりました!


好きなんです、ロリババア!


寒い冬にギュッてして寝たいくらいに好きななんです!


さんじやんとかわっちとかさいこー。



というわけで、何とか年内にアルジージャ辺りのゴタゴタを片付けられました。

来年はカジャの町です!


まぁ、ちょっとした引きで終わっていますが。

次の更新は来年!

といっても明日ですので、お暇な時間に覗きに来てくだされば幸いです。


栗きんとんでもつまみながら、ご笑覧ください。




さて、いよいよ2014年も終わり間近になりました。

本年、ご来訪くださった皆様、

ブクマしてくださった皆様、

感想をくださった皆様、

レビューを書いてくださった 鴉野兄貴 様、

勝手にランキングをポチッてくださった皆様、

その他、何かの時にふと気にかけてくださった皆様、


どうもありがとうございました。

皆様のおかげでとても素晴らしい一年になりました。


まだしばらくは続きそうですので、

この先もお付き合いいただければ、

こんなに幸せなことはございません。


どうか、今後ともよろしくお願いいたします。


皆様、よいお年を!!



とまと


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