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悪役令嬢、頑張ります。  作者: 影干し
第二章 学園始まり
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42、宝石と宝石


 私たちはまだお茶会室で4人で喋っていた。

 私とモモはジークという意外な共通点に頭を抱えていた。

 あの眼鏡が無表情で黙って騙すのは常套手段だけれど、複雑だ。


「私もジークは知っているけれど、貴族が平民からのツテとは珍しいね」


 とライルが会話に入り込んできた。


「わぁ、私に興味持たないで下さい!!」


「え??」


 モモの変化球すぎる返答にライルは鳩に豆鉄砲を食らったような顔をしていた。


「あのさ…それは自意識過剰すぎない?せめて普通の会話が成立するようにしなさいよ」


 私は冷静に突っ込んだ。


「だって怖いんです!レイス様も私の目を見ただけで好きになっちゃうしキャラクター補正が強すぎて、どう働くのかわからないんですもん!」


「好っ…!?」


 モモの叫びにレイスが赤くなって反応した。


「レイスみたいな単純馬鹿じゃなかったら、顔見て一目惚れしてすぐに「綺麗だ好き!」なんてめったに無いから安心しなさい」


「…本当ですか…?」


「……わかんないけど…」


「けど、この目が影響力が強すぎるのはあると思うんです…」


 と言ってモモは目を覆うように、かけていた分厚い眼鏡を片手で覆った。

 モモがその仕草をするとライルが言った。


「その眼鏡は目を隠すためにしているの?さっきレイスもその目を隠すのはもったいないって言ってたけど…」


 その言葉を聞くとモモはビクッとしてライルを見ながら怯えた。


「宝石のようにとてもきれいな瞳だった。見れない人間はとても損をしていると思うぐらいに」


 とレイスが間髪入れずに答えた。


「へぇ…、そうなんだ、宝石ね。その目に興味を持たれるのがモモ嬢は怖いの?」


 目とモモ自身に興味を持たれるのが怖いと思うのだけどね…。

 ゲーム上のライルもヒロインの目を見て好意は持ったと思うのだけど、どうなるんだろう?

 やっぱりモモの目を見たらフラグが立っちゃうのかな?

 そしたら私はゲーム上の下の爵位のまだ喋った事のない貴族に嫁ぐのかなぁ?

 結構長く一緒にいたから少し寂しいかも。もしモモの事、好きになってもライル友人でいてくれないかな?

 …小さい頃からわかっていたしライル自身にもそれとなく伝えてきたのに、それは都合がいいか…。


 よし!


 私は下を向いて私にくっついていたモモの眼鏡をスッと取った。


「えっ!!!!????」


 驚きで大きく見開かれた目にはゲームで見たとてもきれいな瞳があった。

 あぁ、久しぶりに見た大好きな乙女ゲームの主人公の目だ。


「嫌だ!!返して下さい!!!」


 モモは涙目で私に必死に縋ってきた。


「2人ともどう?モモの目綺麗でしょう?」


「ローズ、彼女が嫌がる事はするなって言っただろ」


「隠すのがもったいないって言ってたくせに何で怒るの?私も綺麗だと思うわ」


 そうするとライルが席を立って私の方へ近づいてきた。

 ライルは私がモモから隠すようにしていた眼鏡をそっと取って彼女へ返した。

 モモはすぐに取り返した眼鏡をしてまったが、そのまま顔を隠すようにソファの上で体育座りで縮こまって震えてしまった。

 ライルは席へ戻って私を真っ直ぐに見て笑顔で答えた。


「うん、綺麗だよ。とても」


 なんだか自分の胸にトンと叩かれたような違和感が走る。


「けれどそんなに怖がらなくても良いと思うよ」


 ライルは余裕そうにお茶を飲む姿は全然変わらなかった。

 レイスはモモを慰めたいのに慰められない感じで時々私に悪意ある視線を向けてきた。

 何よ。


「申し訳ないけど、私はモモ嬢が眼鏡を取っても2人が並んでるとローズにしか目がいかないしね。あんまり関係ないや」


 ライルの言葉に胸がドッと波打つ。心臓に悪いのは相変わらずだ。

 モモもその言葉を聞いてぴくっと少し動いた。


「みんなみんな婚約者の人とうまくいってれば良いのに…」


 モモがうっうっと目をこすりながら泣いて真っ赤になっていた。


「はぁ…、ごめんなさい。…瞼をこすらないで。氷水につけて濡らした布をくださる?」


 私は給仕の人に冷やした布をもらってモモの目にかぶせた。


「モモ嬢は婚約者はいないの?」


「いません…。私、家の中でどこに出しても貴族として恥ずかしい存在ですから…」


「けど貴族に好意を持たれるのは嫌なんでしょう?将来どうするの?」


「学園を卒業したら、家の領地で平民として生きていけたらと思っています…」


「えっ!?」


 ライルがモモに聞いているとレイスが横から驚いた声を出した。


「平民といっても、どうやって食べていくの?働かないといけないでしょう」


 私も口を出した。

 平民は大体、手に職をつけていないと食べていくことが難しい。


「ルネさんのお手伝いとか…紹介してもらおうかなと思ってます」


「何故この学園に来ようと思ったの?平民として働くならば学園に通う必要ないでしょう?」


 ライルが聞いたけれど私は理由を知っている。


「………エレオノーラ様とお会いしたくて…」


「「え??」」


 ライルとレイスの2人がハモった。


「と、とても憧れていて…その…」


 2人にはゲームで見て憧れたとか、あんまり詳しい事を言えないのでモモは口ごもってしまった。


「エレオノーラ嬢ね…。」「エレオノーラ様か…。」


 ライルとレイスは呆れたように顔を見合わせた。


「ローズ、エレオノーラ嬢と学園で入学以来喋った?」


「目が合うと手を振ってくれる事ぐらいならあるけれど、いつも殿下達のどちかがいて周りに人が多いからあんまり喋れないわね」


 今の学園にはエレオノーラ様と王太子である第一王子のシュバルツ殿下と攻略対象である第二王子のヴィズ殿下がいるのだ。

 3人とも学年が違うはずなのになぜかどちらかがエレオノーラ様と一緒にいる事が多い。

 これも実はゲーム上と同じなのだけれど…。

 結局ヴィズ殿下は王太子の婚約者であるエレオノーラ様の事が好きになってしまったみたいだ。

 ヴィズ殿下は私達よりも1つ上の学年だけれど、積極的にエレオノーラ様がいる学年へ行くことが多い。

 正直言ってヴィズ殿下が怖くてエレオノーラ様に近寄れないところもあるのだ。

 

「目が合うと手…手を振ってくれる…!!??どうして!?」


 モモが目から布をとっぱらって、つんのめる勢いで私に詰め寄ってきた。

 私は思わず体を引いてしまう。


「レイスとローズは小さい頃からエレオノーラ嬢との友人だよ。たぶん私も?」


「ずっ…ずるいです!!!!!ローゼマリー様!!私…やっとの思いでここに来たのに…」


 私の襟元をつかんで、どんどん私に近づいてくるので顔が近い近い。


「ねぇ、殿下達といつも一緒にいるエレオノーラ様に今のあなたが声をかけるのは正直まずいと思うのだけれど」


「…ヴィズ殿下の目を盗んでなんとかいけませんか?」


「えぇとね、そういう事じゃなくて貴族としての教育あまり受けてこなかったのでしょう?こんな小さなお茶会でも自分でお茶を淹れてお菓子を取り分けてきてしまうのに、あなたこれからどうやって他の貴族と関わって社交やダンスの教育受けるのよ。そういう人が殿下達の前に出れる?」


 とモモに言うとライルがモモにストップというように私達の目の前に立った。


「…そうだねぇ。とりあえず私の婚約者の上からどいてくれない?侯爵令嬢につかみかかる子爵令嬢なんて見た事ないね」


 モモはハッとして「ご、ごめんなさい」と言って私の上からどいた。

 若干ライルの笑顔が黒い気がする。


「よくローズにずっと執心していられるな…」


 レイスがライルに呆れ顔で感心していた。どういう意味だ。


「私にとってはありがたいけど、これだけ一緒にいてローズに目がいかないレイスも凄いよね。入学式ではローズが周りの男達の視線を集めまくっていたから気が気じゃなかったのに。あ、モモ嬢がちゃんとすれば見た目で周りの興味は散らせるんじゃない?さっさとその眼鏡はずしてもう一回デビューしない?」


 にこにこと笑顔でライルが言うと、モモは絶対にはずさないと言わんばかりに青くなりながらがっちり自分がしている眼鏡を掴んだ。


 正直、ライルがヒロインと会っても変わらないのは予想外だった。

 ずっと挨拶がわりに恥ずかしい言葉をぽんぽんと言うなぁと思ったのに、あれ、本当にそう思って言ってた事だったの?

 ヒロインが現れたらそういうものも全部ヒロインの方へ向くと思っていたのに、改めて自分の考えもそうだけれど、死ぬほど恥ずかしくなってきた。


「ローズ?大丈夫?顔赤いよ?」


「赤くありません!」


 ライルに問われて思わず、顔を思い切り逸らしてしまった。

今更驚く主人公。

突発で開かれた無礼講のお茶会はここでおしまい。

ヒロイン登場でタグを足しました。ざまぁはありません。


まとめて何話か書き溜めしたかったのですが、遅筆な自分が恨めしい…。

最近、金曜日更新を心掛けています。

いつも読んでくださりありがとうございます。

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