表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、頑張ります。  作者: 影干し
第一章 気づいたら侯爵令嬢
29/64

25、もっと便座カバー


 ジークの授業が終わった後に使用人達に便座カバーの事を話してみた。

 予想以上に受けが悪かった。

 貴族らしく、刺繍のばっちり入った豪華な布地の厚いものにしたらという提案も空しく却下されてしまった。

 トイレ自体が汚いものとしての機能と認識が強いため、そこに労力を割く事は受け入れてもらえなかった。

 むむむむむ!!いいもん、一人でやるもん!と今までやった事のない刺繍セットを借りて普通の布を使ってやろうとしたら布がもったいないと怒られてしまった。なんでや!

 最終兵器お父様に泣きついても複雑な顔をして苦笑いしていた。

 こうなったら、こっそりやるしかないとシュナイザーと寝る前の時間に刺繍…というか裁縫セットを借りて私が小さくなって着れなくなった服を再利用して作ってみた。許して高い布…。

 シュナイザーの目の前でやってたので元の私の服にはさみを入れた時点でシュナイザーは、「姉さま!?」と驚いていたようだった。


「シュナイザー、姉様は皆に駄目だと言われても作りたいのです!」


「姉さまはちょっとがんこです…。姉さまが着ていた服が少しかわいそうです…。」


 と、シュナイザーのしょんぼりした姿に「うっ…」と、ほだされかけつつ、手を進めていった。

 よく考えたら型紙なんかないしゴムも無いので自分で考えながら作らなくちゃならないんだけど…、えぇ…?紐つければなんとかなるか…。

 あんまり何も考えずに進めていたら、がたがたの縫い目によくわからない芋虫のようになった物が誕生した。


 ふぇえええ…、縫い物なんてした事ないよぉ…。

 芋虫の前で自分の不甲斐なさにベッドの上で土下座の形でつっぷしてるとシュナイザーがもう眠いだろうに心配して頭を撫でてくれた。


「姉さま、これが作りたかったのですか?」


「ちがうよ゛ぉ、しゅないざー…。芋虫になる予定は無かったんだよぉ…。」


「ではまず紙に書いてみたらどうでしょう?どういう物かイメージできるように。」


 私は涙目でさっさっとトイレとそこにつける便座カバーの形を描いた。私のイメージの中では、ふたにつけるのと便座につけるのと、下に敷くマットは3点セットだ。その中でこれが作りたいと便座に矢印をつけておいた。


「なんだかトイレがかわいく見える絵ですね。」


「デフォルめ…ってこっちは無いか。簡略化した絵ですよ。」


「この絵を使用人たちに見せるのはどうでしょうか?」


「…また怒られてしまいそうです。」


「大丈夫ですよ、もう寝ましょう姉さま。」と言って眠そうな顔をして私に柔らかい笑みを見せてくれた。

 シュナイザーの気遣いと笑顔にじーんとしてしまったので、裁縫道具は慎重に片づけて、一緒に眠った。


 次の日、死ぬほどお母様に怒られた。

 私を飾りたてる事が好きなお母様は私に合わせてデザインされた服にはさみを入れて酷い有様にしてしまった事にご立腹だったようだ。

 とばっちりでシュナイザーも何故か涙目でごめんなさいしていた。

 私が全面的に悪いんです、とシュナイザーの前に立って芋虫をぶんぶんしながら謝った。

 お母様は頭が痛いと言わんばかりに額を抑えてしまった。

 それでも、こんな事になるぐらいなら、と使用人たちに私の我が儘を聞いて欲しいと侯爵夫人令が下った。少し後の事になるけれど、お母様から直々に刺繍の手ほどきを受ける事になる事件だった。


 お母様令が下ったので使用人たちに昨夜描いた絵を見せてみた。

 どうもこの絵はわかりやすかったようだ。私は補足を入れたり芋虫を見せながらここはこうしたかったんだと説明したりした。

 やはり便座カバーを作る事に抵抗はあるものの、針仕事が得意な使用人たちがこれはこうすれば良いんじゃないかと知恵を出し合って、なんと3点セットで作ってくれた。

 トイレの中の周りの豪華さにも負けず劣らずの物を作ってもらったので、余計華やかになった。

 嬉しかったので家族や家の者にも見てもらった。こう見ると華やかさが増しますね、と納得してくれる人も出てきてくれた。

 私の我が儘で作ってもらった物だから、私専用って事になったけれど。

 私一人が使っても意味が無いんだけどな…。

 作ってもらった使用人たちに、自分の家でも作って使ってみてとは言ったけれど、やってくれるかは謎だ。

 けれど、私が褒めに褒めちぎったので、割とまんざらでもなさそうだ。



 次の授業の時にジークにも自慢してみた。端的に言えば私専用トイレに案内してどうよと自慢したのだけど。


「お嬢様、私の世間体も気にしていただけませんか?」


 と、眉間にしわを寄せながら文句を言われてしまった。


「だって、今このトイレにしかこれは存在しないのだもの、しょうがないじゃない。それに私の言ってた事わかってくれた?華やかだし見た目も良いでしょ。自信作よ!作ったのは私じゃないけど!」


「既にこの部屋が華やかすぎるんですけどね。」


「シュナイザーが絵を描いてイメージを伝えたらって言わなかったら出来なかったかもしれないわ。」


 ふふんとニコニコしながら弟自慢をさらっとする事が日課だ。


「絵?お嬢様は絵を描けるのですか?」


「描けるってほどではないわ。簡単なのだけど…。」


 と言って便座カバーの絵を見せた。


「なるほど、どんな物か簡単にはわかりますね。ふむ…。」


 ジークはその絵をじっと見て考えているようだった。

「また何か企んでない?」と言うと目線を私の方へ向けてきた。


「人聞きが悪いですね。せっかくの知識をこんな事に労力を使って喜んでるようなお嬢様に何を企むと言うんですか。」


「何でいちいち腹の立つ言い方をするのよ。」


 馬鹿にしやがって。


「けれど、この絵にする方法は良いですね。お嬢様でなければ思いつけないものを伝えるのにわかりやすいです。絵本作家よりも抽象的なような、写実的なような不思議な絵です。」


「ドレスのデザイン画も同じような感じじゃない?インテリアのデザインとかも簡単に描いたりするでしょ?」


 よくある可愛いイラスト的な感じで描いてみたけれど、こういうのわかりやすいんだなぁ。

 写実的な方が受け入れられやすいのかと思ってたけど。

 こちらの絵師で食べていけるのは断然、写実的に残せる画家だ。写真が無いからね。

 家でイーゼルを立てかけて屋敷を描いてる絵師さんを見るとフランスだ…!ルーブル美術館だ…!とちょっと興奮する。

 家のお抱え絵師さんにお願いして私をモデルにクロッキーを描いてもらって凄いと飛び跳ねて回った記憶がある。ちなみにクロッキーは10分くらいの短い時間で描く事で、ようは簡単に描いたのが欲しいとねだった物だ。


「貴族の方が絵をここまで描けるのは珍しいんじゃないですか?小さい頃から触ってなければ難しいでしょう。デザイン画も普通は例えば奥様が口頭で説明して、針子がデザインに起こしていくものでは無いですか?」


「あぁ、なるほど…。え?じゃあ私割と上手いの、これ?もっと写実的な人が上手いっていうのかと思っていたけど。」


「いえ、その認識で合ってます。上手いのはもっと写実的なものです。お嬢様の絵は個性的ですね。」


「一応、褒め言葉として受け取っておくわ。」


「…お嬢様、いい加減ここから出ても良いでしょうか?」


「ジークもきちんと広めてね???」


 ニッコリと良い笑顔で扉の前で腰に手を当てて便座カバー3点セットを指差した。

 ジークはいつもの無表情から一転、見た事のない笑顔で自分の胸に手を当てて「心得ております、お嬢様。」と返してきた。

 ひっ!絶対やる気ない!なんて笑顔が似合わない男だ…!シュナイザーと正反対だ…!爽やかな笑顔が一発で嘘だとわかる人間も珍しいんですけど…!


 とりあえず、トイレからは移動して、いつもの授業体勢に戻った。


「はぁ…。予想以上にお嬢様が阿呆だったので私は困惑しました。」


 と言って疲れた風に深いため息をついて眼鏡を直していた。



間が空いてしまいました。申し訳ない。

主人公がどんどんアホの子になっていく気がしています。チートなんて出来るのか。


いつも閲覧、ブクマ、評価、本当にありがとうございます。

ちょうどブックマークが1000件を超えてて、おお!!と一人で感動してました。

稚拙な作品ですが楽しんでいただければ幸いです。

マイペースにやっていきたいと思ってますので、よろしくお願いします。



一週間は風邪を引いて何もできず、そういえば自分、具合が悪くて休養中だったんだな、と再確認させられました。

ぼちぼち起き上がれるぐらいから書きはじめていたのですが、もう少し考えたかったのと書きためておきたいな、と思って時系列関係無く思いつく限り飛び飛びで執筆してました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ