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悪役令嬢、頑張ります。  作者: 影干し
第一章 気づいたら侯爵令嬢
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11、可愛い弟と私の婚約者


 婚約披露パーティーが終わった後、また訓練所に行って鍛錬は続けている。

 レイスともあの日の話をしたり、たまに騎士棟の方にも行ったりしていた。

 エレオノーラ様はあの後、謹慎処分を受けたそうだ。

 けれど、エレオノーラ様は間違った事は言っていなかったし、王太子や第二王子の助けもあったのかもしれない。

 王太子との婚約解消という事はなかった。

 軟禁状態でスフォルビア公爵家にいるらしいけれど、おおいにまた周りを振り回していそうだ。


 シュナイザーは3歳になって、もっと喋れる言葉が増えてきた。

 物心がついて、「ねぇさま、あれはなんですか?」と私が手を繋いで屋敷中を連れまわして歩いているのでなんでも興味が尽きない。

 将来は研究職につくかもしれない。侍女頭にいちいちおおげさだと言われた。

 これを読んでくださいと何度も絵本の読み聞かせをせがまれたりもするので、シュナイザーの気が済むまで何時間でも読んであげる。

 もう空で言えるぐらいだけど、絵もついてないと駄目らしい。くそっ、絵本に嫉妬する。

 私がべったりしてるせいか、シュナイザーが私にべったりなのか、一緒に寝る事も多くなってきた。

 最初の内は絵本の読み聞かせでどっちも疲れて眠るパターンだったのだけど、その内一緒に寝ないとシュナイザーが寂しがったのだ。

 お姉ちゃん冥利に尽きる。

 「きょうは一緒でないのですか?」なんてショボンとした顔をしたシュナイザーが可愛すぎて、頬ずりしまくった。

 私がお父様だったらジョリジョリで擦り傷になっていただろう。

 むしろ私が今日からこっちで寝ますと高らかに宣言して押しかけていった。


 せっかくなので屋敷をシュナイザーと案内して周った時の事を語ろう。


「ねぇさま、これはなんですか?」


 と指差したのは水道。そう、水道、こちらの世界には上下水道が完備されている。

 中世ヨーロッパの世界観からしたらそこが整ってるのはおかしかろうと思うかもしれないが、日本で発売されるゲームだ。

 世界観に日本のものが混ざっている事も多い。

 貴族の屋敷なので無駄に豪華な洗面所や前世での自分の部屋ぐらい広いトイレなどがある。

 豪華さではこちらに軍配が上がるけれど、ウォシュレット機能や便座が温かくなる事が無いので座るとヒヤッとする。

 その内、便座カバー作ってもらおう。


「これは洗面所にある水道と言って、ここからお水が出るんですよ。」


 へ~、という顔をしている。

 その後、水の事ならばと、お風呂にも行った。


「おふろですね。あったかくてすきです。ひろいのでとうさまともはいります。」


 水が出る環境は整っている。ならばお風呂はというと大雑把に言うと無駄に豪華な五右衛門風呂…では無く、お湯を薪で沸かして広い風呂にどんどん流し込み水でまた調整するお風呂だ。

 黒い大理石なようなもので出来ており、日本でいうところの温泉ぐらいあるので風呂好きの日本人にはありがたい。

 正直言って、貴族ならば猫足のバスタブも夢見ていたんだけど、これはこれで好きだ。

 男性、女性と別れていて、私やお母様が使うお風呂の方には全身磨かれるエステ台がある。

 男性の方も望めば簡易的なものが作れるらしいけど。

 お父様はエステよりも部屋でマッサージなどで終わってしまうらしい。


「私もシュナイザーと入りたいです!今日はこちらでお父様も混ぜて3人で入りましょうか?」


「お嬢様、淑女とあろう者が慎みに欠けますよ。」


「お父様なら絶対賛成してくれるでしょう?」


 プクッと膨れて拗ねる。


「ねぇさまとも入りたいです。けどおんなのひととはだめだって言われます。」


「シュナイザー、こういう時はお父様に要相談です。」


 絶対に駄目だとは言いませんから。今は子どもだし恥ずかしくないもん。


「おかあさまもいっしょではだめなのですか?」


「大人の男性と女性が一緒に入るのは夫婦二人の時だけなのですよ。」


 意味深な笑顔で答えると、とてもわざとらしい咳ばらいが周りから聞こえてきた。


「坊ちゃまに何を言っているんですかお嬢様!」


「あ、そっか。今のは他の人には内緒ですよシュナイザー。」


「?はい。」


 その日、お父様に頼んだら喜び勇んで3人で入る事になったので後でお母様が拗ねてしまった。

 なのでお母様と私のシュナイザーの3人でも次の日に入った。

 ちなみに貴族的な価値観でいったら家族一緒に入るというのはアウトだ。

 広いんだから一緒に入ったって良いのにね。

 まぁ、シュナイザーのどうしておとこのひととおんなのひとは体がちがうのですか?という質問にさすがに困惑していた。

 お母様が困惑した後に観念したのか、こんこんと女性の体は子を育てるために違うのですよ。と真面目に説いているのがおもしろかった。

 お母様は見た目が派手なのに中身はかなり真面目で控え目な優しい人だ。


 とりあえず、水回りの紹介はしたけれど、こちらの世界は電気が無いので、そういう不便はある。

 プラスチックもないし。

 けれど、夜になると灯るランプも風情があって嫌いじゃない。内装がいちいち凝ってるしね。


 シュナイザーと、その他にも屋敷を回って私の部屋や両親の寝室、お父様の執務室、多数ある客室や玄関ホールやパーティーの時に解放するホール、ソファや椅子やテーブルなどが仕舞ってある部屋、ご飯を用意していた厨房に顔を出したり、使用人達が使用している部屋、洗濯場から抜けて外に出て広大な美しい庭も見て回った。

 屋敷はそれ以外にもまだ部屋がある。調度品や部屋の内装、外から見た屋敷を見ると本当に貴族に産まれてきたんだなぁと実感する。

 庭に出た時にシュナイザーが走りまわって花壇の一部にあるレンガで出来ている平衡感覚を必要とする細い所に入り込んで遊んでる姿を見ていると私と同じ運動音痴では無い事を痛感した。

 そんな充実した幸せな毎日を送っていた。




 私が6歳になった、ある日の事。


「お父様、大丈夫ですか?」


 なんだか泣きそうな顔で私を見てくるものだから、あ、これ決まったのかもとは思ったけれど。


「ローズ、マグノリア公爵家との縁談が決まった…。お前を幸せにしてくれそうなところに決めたつもりだが…、嫌だと思ったらすぐに辞めても良いんだからな」


「お父様、公爵家へのお断りは出来ないでしょう…。」


 むぐぐと口を結んで、凄い言いたい事を口の中でもごもごと言ってるみたい。

 その内諦めたようにお父様は口を開いた。


「その内、日が決まったらマグノリア公爵家で顔合わせがある。」


 お父様は、はぁ…とため息を吐いた。


「もう娘の嫁ぎ先を決めないといけないとは…。私は幼少期の婚約者などいなかったというのに…」


 と眉間にしわを寄せてぶつぶつと言っている。

 よし!今世では結婚できるぞやったー!にしても公爵家かぁ…。

 スフォルビア家と対立してる所ではさすがに無いよね?


「お父様、お母様にまた怒られてしまいますよ。マグノリア公爵家はエレオノーラ様のところとは…?」


「あぁ、心配ないよ。スフォルビア家がローズの後ろについている事も知っている家だし、スフォルビア家と対立してるって事は無いから。」


 まぁ破天荒とは言え、未来の王妃様に対して対立するのはかなり無謀なとこだよねぇ。


「わかりました。日にちが決まったら教えて下さい。」


「う゛ん゛。」


 あ~、これはお母様案件だわ…。お母様に慰めてもらって下さいお父様…。

 とりあえず、お父様は予想の範疇だったけれど、私の婚約が決まった事はシュナイザーにも衝撃だったようだ。


「ねぇさま、およめにいってしまうのですか?とうさまとかあさまとねぇさま、ずっと一緒が良いです!どこにもいかないでください!」


 と言って泣かれてしまって、さすがにどうしていいのかわからなかった。

 マグノリア公爵家との顔合わせの日も「ぼくがねぇさまとけっこんするのでいかないでください!」と泣いて縋るシュナイザーを執事や侍女たちがなだめていた。

 叶うならそりゃ私もシュナイザーと結婚して家族と一緒にいたいよ…。

 普段、聞き分けの良い子なのにこんなワガママを言うなんて、なんて可愛い弟なんだろう。やっぱ行かなくても良いかな?


「やっぱり私…、」「ローズ、いけません。」


 お母様に嗜められる。

 お父様は、あからさまにワガママを言うシュナイザーを無言で応援してる感じだ。

 お母様は座って泣いているシュナイザーと目線を合わせた。


「シュナイザー、ローズは今すぐお嫁に行く訳ではありませんよ。婚約です。それにシュナイザーと結婚は出来ません。毎日一緒にいてくれる姉様が盗られてしまうような気持ちで寂しいのでしょう?」


「かあさま…。」


「姉様は大人になったら他の家にお嫁に行かなくてはならないのです。母様も父様のお嫁に来たから姉様とシュナイザーがいるのですよ。」


「ねぇさまはずっと家にいられないのですか?」


「シュナイザー、姉様はずっとこの家にいたら不幸になります。」


「どうして?」


「…どうしても納得できないのなら今日はこれから姉様は訓練所に出かけていくと思えば良いのです。今日は会うだけですからね。」


 あっ、お母様、話を逸らしましたね。

 うぅ、こんな状態のシュナイザーを置いていかなくちゃならないなんて…。

 「シュナイザー」名前を呼んで抱きしめる。


「ねぇさまはどうしても行くのですか?そんなねぇさまは嫌いです…。」


 うぉおお、そんなのやだぁああ!!嫌わないでシュナイザー!

 思わずがしっとしがみ付いてしまう。

「私もシュナイザーと結婚したいぐらい大好きですよ!シュナイザーに嫌われたら姉様も泣いてしまいます!」


 家の玄関の前でそんなやりとりをしてる内に「なるべく早く帰ってくるから」と馬車に乗り込んだ。

 気持ちはズーンと鉛のように重い。私はなんて駄目なお姉ちゃんなんだ…。


「大丈夫ですよ。ローズはこれから会うマグノリア家の心配をなさい。せっかく可愛くしたのに乱れてしまいましたね。」


 と少し乱れた服や髪をお母様が整えてくれた。


「シュナイザーに縛られる事はありません。新しい出会いは良い風ですよ。エレオノーラ様やレイス君と会ったようにね。」


「はい…。」そうだ。これから会う婚約者もこれから良い友人になれるかもしれない。気持ち切り替えなくては!



 マグノリア公爵家に着くと、お母様から身分が上の方ですから、粗相の無いように気を付けて、と注意された。

 お父様は真剣な顔で私にちょっとくらいなら粗相しても構わないと言って、お母様に怒られていた。


 マグノリア家の応接間に通され、私は公爵夫妻と私の婚約者となる子息の顔を見た。

 自分の両親も美男美女だけれど、公爵夫妻もまた違うタイプの美男美女で絵になる美しさだった。

 もちろんその息子である婚約者様も例外ではない。雰囲気的には優しい顔をしている。

 ただ、その顔になんとなく見覚えがある気がした。


「初めまして、私はライル・マグノリアと申します」


 ほわっとした微笑みで自己紹介する少年をなんて可愛い子だろうとおばちゃん根性でぼーっと見てしまい、ハッとして自分も自己紹介を返した。


「初めましてライル様。私はローゼマリー・ウィステリアと申します。これからどうぞよろしくお願い致します」


 と、ドレスをちょんとつまんで微笑みを返しながら淑女の礼を返す。

 ライルは少し頬を染めながら「こちらこそよろしく」と返してくれた。


 やはり、名まえと顔に違和感を覚える。違和感というか、デジャブ…?聞いた事があるのだ。



 と、同時に、いつもの一場面が見えるだけでは無く、どんどんとゲームの知識を思い出してきた。


 4人目の攻略者、ライル・マグノリア公爵子息。私の婚約者。


 私はライルの婚約者としてヒロインの邪魔をする悪役令嬢。

 ローゼマリー・ウィステリア。


 ライルが引き金だったのか。やっと全部思い出せた。


終盤、少し急ぎ足になってしまいました。

やっとゲーム全部を思い出します。

弟は立派なシスコンへ成長しました。


閲覧・ブクマ・評価ありがとうございます。なんかすみませんという気持ちが標準装備になってしまいそうです。大変励みになります。

私事で大変恐縮ですが、家族の手術付添いのため更新がまた開くと思います。すぐまた更新始めたいと思いますが…、現れたらまたよろしくお願い致します。

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