Symudiad mawr _ 川を流れて大移動 _
二人分合わせて六匹の魚が釣れ、ひとまずは野草の余りやそれらを焚き火で串焼きにしたものを食べて昼食を済ませた。腹八分目ほどには胃袋を満たせたので、出立の準備にかかる。
簡易テントは自然のものだけで作ったので、そのうち勝手に崩れるだろうということで放置、打製石器も、鋭いため危ないとは思ったもののこの半年の間、一度も人間とは出会っていないので大丈夫だろうとその場においていくことになった。
そのため、二人の持ち物は相変わらず衣類の代わりに被った大きな葉を繋ぎ合わせたものと、最後に一つ余った鋭利な爪くらいのもので、あっという間に準備は完了した。
「よし行くぞ、輝かしい未来が俺達を待っている」
「また変なこと言ってないでちゃんと押して転がして。もしおちて砂利にこすれでもしたら、ボロイカダがもっとボロくなる。そんなことになったら沈んで流れて死ぬよ?」
「現実主義者め……いいじゃんかちょっとくらい遊んだって」
ベアリング、という、丸太の上を転がす事で地面との接触──摩擦を避けることで、重いものでも簡単に運ぶことのできる方法を使って、イカダを川のそばまで移動する。
ごろごろと転がしながら、典がどこぞのラノベか何かの登場人物のような言い回しで旅立ちを告げるかのように、どこか小芝居じみた言葉を言えば、もはやここまでがいつもの流れと化したのか、恭行が現実を突きつけた。
「じゃあ、はい。ここ乗って」
恭行はそのまま一度イカダを掴み、転がすのを止めてから、その上を指差しながら言う。
「え、もう??? まだ川入れてないじゃん、え、登れって???? うっそだろお前まじで????」
「だって川入れたら流れてっちゃうし、飛び乗るなんてできないでしょ」
「…………ハイ、仰る通りでございますね」
まさにぐうの音も出ない、といった様子で典が諦めたようにイカダの上へとよじ登る。と、登り終わったのを確認した恭行がイカダを更に転がし、川へと入れる。
「ちょっと揺れるから気をつけてね」
と言うと恭行は典の返事を待たずして、更に助走もなしに一mと少し離れたイカダに跳び、しっかりと着地をした。
「……ッお前ちゃんと返事してからにしろ!!?! 落ちるかと思っただろ危ねえな!!!」
先程からほぼ確認も何もなく急に自分のいる場所が揺らされていた典がここでようやく口を開いて文句を垂れる。というのも、少し前まで危うく落ちかけたためイカダにしがみついていて文句をつけている暇などなかったのだった。
「助走してないしそんなに勢いつかないし、大丈夫だと思って」
「大丈夫だったから今回は許す。次は返事待て、いいな、待てよ待つんだ」
「待ってたら流されるけど、いいの?」
「お前どうせ3mとか4mくらいなら跳べるだろ」
「流石にそれは無理でしょ……」
勝手にそんなことを言われても困る、という調子で恭行は否定したのだが、典が次のように説明をしだしたことで、どうもやれそうな気がしてきてしまった。
「いいや行けるな完全主観の根拠ならある。なんかどっかの中2の陸上、走り幅跳びの記録5mとか言ってた気がするから行ける。お前の身体能力は野生動物並みだからいける。運動神経良い奴なら小学校の高学年、さらに女子であっても3mとか飛ぶから3mかそこら辺なら確実に行けると俺は勝手に確信してる」
「その話聞いてたら普通に行けそうな気がしてきたけど、いざってときじゃないとやらないからね」
ちなみにだが、実は転生前の恭行が普通に山の中を駆け回っていた際、飛んで超えていた小川に三mくらいの幅のものがあったのだが、本人は二m以内だと思っている。
「つーかむしろいざって時以外に無意味に跳べるからって理由で3mも4mもばびゅーんする奴とかいんの?」
「………………………………うん、さすがにしないよね」
「なんだその間は、なんだその俺ならやりかねないって目は。やらないしまずそんな身体能力ねえわ。あと珍しくばびゅーんとか擬音使ったんだからそこツッコめよ」
「いまのツッコミどころだったの?」
「ツッコミ待ちでしたあ。まぁ流石に知識はある程度つけてもそっちはまだまだか」
わざとらしく口を尖らせたあと、恭行にとってはうざったく感じられるような鬱陶しい言い方でまだまだと言うと、典はようやくイカダの上でのバランスをしっかりと取れたらしく、普通にあぐらをかいて座った。
「ほら俺はろ過装置だからいらないものは流してるんだよ」
「……忘れてないからな〇〇系にしとけばなんとかなるっつー微妙な情報」
「そっちはホントのろ過装置だよね、そういういらないことも覚えてる」
「うっせ不可抗力だ」




