85 古代都市中枢
重力迷宮と幻覚回廊を突破したアルトたちは、長い通路の先にたどり着いていた。
通路の奥に、巨大な扉がある。
それはこれまで見てきたどの遺跡の扉よりも巨大だった。
高さは数十メートル。
古代文字と幾何学模様がびっしりと刻まれている。
レオンが息を呑む。
「……ここだ」
アルトが聞く。
「何が?」
レオンはゆっくり言った。
「都市中枢区画」
「世界核装置の制御都市だ」
ミラが小さく呟く。
「ついに……」
ガルドが腕を組む。
「開けるしかねえな」
アルトは頷いた。
彼は扉の中央にある古代端末へ手を伸ばす。
その瞬間。
淡い光が走った。
《文明継承候補者 認証》
《中枢都市 アクセス許可》
重い音が響く。
ゴォォォォン――
巨大扉がゆっくりと開いていく。
その先に広がっていたのは――
都市だった。
ミラが声を失う。
「……え?」
地下のはずなのに、そこには空のように広い空間が広がっていた。
巨大な塔。
無数の橋。
階層都市のような構造。
そして都市の中心にそびえるのは――
巨大エネルギー炉。
青白い魔力が渦を巻きながら燃えている。
まるで小さな太陽のようだった。
レオンが震える声で言う。
「古代文明の……主炉」
「世界魔力ネットワークの中枢エネルギーだ」
ガルドが口笛を吹く。
「とんでもねえ規模だな」
さらにその奥。
都市の中心に一本の巨大な塔が立っている。
天井に届くほど高い。
アルトが言う。
「……あれが」
レオンが答える。
「封印制御塔」
ミラが周囲を見回す。
都市の至る所から光の線が伸びていた。
魔力回路。
それらはすべて塔へと集まっている。
レオンが説明する。
「世界中の古代装置はこの都市に接続されている」
「つまり」
彼は塔を見上げた。
「ここが――」
「世界魔力ネットワークの中心だ」
アルトたちはゆっくり歩き出す。
橋を渡り、都市の中央へ。
そして塔の根元へとたどり着いた。
そこには円形の広場があった。
巨大な魔法陣が描かれている。
その中央にあるものを見て
ミラが息を呑む。
「……あれ」
アルトも目を細めた。
そこに存在していたのは
空間の裂け目。
黒い球体のような歪んだ空間。
まるで世界そのものが穴を開けられたようだった。
レオンが震える声で言う。
「……封印空間」
アルトが聞く。
「つまり?」
レオンは答えた。
「この中にいる」
「古代文明が封じた存在」
ミラが小さく言う。
「異界生命体の王……」
ガルドが剣を握る。
「ラスボスってやつか」
空間の奥から
わずかな振動が伝わってくる。
ドクン……
ドクン……
心臓の鼓動のような音。
アルトはその黒い空間を見つめた。
ここが
世界の中心。
そして
封印の核心。
彼は静かに言った。
「……もうすぐだ」
しかしその瞬間。
空間の奥で
何かが
目を開けた。




