29 古代兵器の残骸
罠だらけの迷宮を抜けた先で、通路は急に広くなった。
天井の高い巨大な空間。
崩れた柱がいくつも倒れている。
ミラが辺りを見回す。
「ここ……広場?」
グランが床を調べる。
「いや」
「たぶん施設の区画だ」
アルトはゆっくり前へ進んだ。
すると、足元で何かに躓く。
金属音が響いた。
「……?」
アルトはしゃがみ込み、それを拾い上げる。
黒く焦げた金属片。
エリシアが覗き込む。
「それ、何?」
アルトは表面を観察した。
細かな魔法陣。
複雑な刻印。
アルトの顔が変わる。
「魔導装置の部品です」
ミラが周囲を見る。
「ってことは、この辺に装置があった?」
ガルドが少し先を指差した。
「いや」
「もっと大きいぞ」
全員がその方向を見る。
そこには――
巨大な金属の塊が横たわっていた。
高さは三メートル以上。
腕のような構造。
厚い装甲。
だが胸の部分は大きく裂け、完全に壊れている。
ミラが息を呑む。
「……ゴーレム?」
グランが近づいて叩く。
コン、コン
「金属製だ」
「しかもかなり強い合金だな」
アルトはその装甲を見つめていた。
「魔導ゴーレムです」
「しかも……軍用」
エリシアが驚く。
「軍用?」
アルトは頷いた。
「研究施設で見た守護ゴーレムよりずっと大型です」
彼は胸の破壊された部分を見る。
そこには黒く焼けた跡があった。
「戦闘で破壊された可能性が高い」
ミラが周囲を見回す。
「ちょっと待って」
彼女の声が少し低くなる。
「これ……一体じゃない」
ガルドも気づいた。
「……ああ」
広い空間のあちこちに、同じような残骸が転がっている。
折れた腕。
砕けた装甲。
崩れた魔導兵器。
まるで戦場の跡のようだった。
エリシアが呟く。
「これは……」
グランが低い声で言う。
「戦闘の跡だな」
アルトはゆっくり周囲を歩いた。
破壊された兵器。
焦げた石壁。
床に残る巨大な傷。
アルトの胸に、ある考えが浮かぶ。
「もしかして……」
ミラが聞く。
「何?」
アルトは静かに言った。
「古代文明は」
「戦争をしていたのかもしれません」
空気が静まり返る。
ガルドが腕を組む。
「誰と戦った?」
アルトは首を振る。
「まだわかりません」
彼は巨大ゴーレムの残骸を見上げる。
「でもこれだけの兵器があるなら」
「かなり大きな戦争だったはずです」
エリシアが考え込む。
「都市の内部で戦闘があった……?」
グランが床を見て言う。
「いや」
「防衛戦かもしれん」
ミラが呟く。
「つまり」
「この都市、襲われたってこと?」
アルトはゆっくり頷いた。
静かな地下都市。
だがその奥には――
激しい戦いの痕跡が残っていた。
アルトは破壊されたゴーレムを見つめる。
もし古代文明が戦争で滅んだなら。
この都市にはまだ――
その真実が眠っている。




