第13話 ヒロインの秘密
石の部屋には、静かな光が満ちていた。
中央の装置は相変わらず淡く輝き、魔力の脈動を繰り返している。
アルトは装置の周囲を歩きながら、刻まれた文字を必死に読み取ろうとしていた。
「……魔力循環……蓄積……」
だが、風化している部分が多く、完全には解読できない。
「うーん……」
ミラは退屈そうに壁にもたれている。
「まだかかる?」
ガルドは床に座り込み、剣を磨いていた。
「研究者ってのは気が長いな」
エリシアは装置を観察しながら言う。
「でも確かに変な装置」
そのときだった。
リィナがゆっくり装置へ近づいた。
アルトは顔を上げる。
「リィナ?」
彼女は中央の結晶を見つめている。
まるで引き寄せられるように。
「……これ」
小さく呟く。
そして、そっと手を伸ばした。
「待って――」
アルトが止めようとした、その瞬間。
リィナの指先が結晶に触れた。
次の瞬間。
ブゥン――
装置が強く光った。
部屋全体が青い光に包まれる。
ミラが叫ぶ。
「うわっ!?」
ガルドが立ち上がる。
「何だ!?」
装置の輪がゆっくり回転し始めた。
結晶の光が強く脈打つ。
まるで――
起動したように。
エリシアが驚く。
「魔力が急激に増えてる!」
アルトは目を見開く。
「どうして……?」
この装置は古代文明の研究機器。
普通なら動くはずがない。
それなのに――
反応した。
しかも。
リィナが触れた瞬間に。
光は数秒続き、やがてゆっくり弱まった。
装置は再び静かになる。
部屋に沈黙が戻る。
ミラがぽつりと言う。
「……今の何?」
ガルドがリィナを見る。
「お前、何した?」
リィナは困ったように首を振る。
「……わからない」
アルトは装置を確認する。
結晶の光。
魔力の流れ。
確かに一瞬だけ強くなっていた。
彼の頭の中で、ある仮説が浮かぶ。
「……まさか」
エリシアが聞く。
「何か分かった?」
アルトはゆっくり振り向いた。
視線の先にはリィナ。
彼女は不安そうに立っている。
アルトは慎重に言った。
「この装置は……」
「特定の条件でしか動かない可能性があります」
ミラが首を傾げる。
「条件?」
アルトは少し迷った。
だが、言うしかない。
「古代文明の装置は」
「使用者を識別する仕組みを持っていた可能性があります」
ガルドが眉をひそめる。
「つまり?」
アルトは静かに答えた。
「リィナが触れたから動いた」
部屋が静まり返る。
エリシアが小さく呟く。
「……それって」
アルトは続けた。
「つまり」
「リィナは――」
一度息を吸う。
そして言った。
「古代文明の血を引く存在」
その可能性があります」
ミラが目を丸くする。
「ええっ!?」
ガルドも驚いた顔をする。
「そんなことあるのか?」
リィナはただ黙っていた。
自分の手を見る。
さっき装置に触れた手。
アルトは優しく言う。
「まだ確定じゃありません」
「でも、この装置が反応した理由は」
「それしか考えられない」
リィナは小さく呟く。
「……私が?」
アルトはゆっくり頷いた。
この遺跡。
古代文明。
そしてリィナ。
すべてが繋がり始めている。
アルトは装置を見つめながら思う。
この遺跡には――
まだ大きな秘密が眠っている。




