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異世界小説家  作者: キクメン


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36:町へ

 最初の村、ゴドルム村の集会場に案内された私はそこでようやく、狩人達のリーダーでこの村の代表者でもある狩人の自己紹介を聞いた。


「良く来てくれたタダノよ、オレはゴドルム村の代表のドルバだ、こっちは妻のルウで、ルウの後ろにひっついているのは息子のダルバだ」


「初めまして、私は東の辺境にある片田舎の群馬から来た多田野(ただの) (ひとし)と申します、修行の旅でこちらにやって来ました」


「まぁそうでしたか、それはまた遠い所からようこそいらっしゃいました」


 その後もドルバが私の事を紹介し、腕の立つ武人だと褒めてくれて、まだ幼い息子のダルバも興味が湧いたのか私に近づいてじっと見つめてドルバの話しを聞いていた。


 その後何やらとても良い匂いがしてきて、先ほどの中年女性達が大きなお盆に沢山皿を乗せてやってきた。


「そら、ご馳走の登場だ!」

「おお!きたか!」

「おお!うまそうな匂いだ!」

「こりゃたまらんな!」

「やった!ご馳走だ!」


 先ほどまで一緒に狩りをした人達が一斉に喜びの声をあげた。


 テーブルの上に皿が置かれていき、私の前にも置いてくれたので見てみると、分厚くて大きなステーキ肉が乗せられていて、何かの刻んだ薬味のようなものがふりかけられており、周りにもニンニクに似た何かの植物がきつね色の焦げ目がつくほどに炒められていた。


 立ち込める湯気の香りを嗅いだ途端、私の腹がグゥ~~~ッと大分大きな音を立てて鳴り、一同大笑いで一気に雰囲気が和らいだ。


「冷めてもウマイが、熱いうちにいただこう!」

「「「オォーッ!」」」


 早速私も全く遠慮なく、目の前のステーキ肉にかぶりついた。文字通りガブリとかぶりついた。というのもフォークはあるのだがナイフがなくて、全員フォークを突き刺してガブリと噛み千切っているのである。


 ガブリと何の肉か分からないステーキを口にした瞬間、これまで食べたことのない最上級牛ステーキ肉ですらここまで旨くはないのじゃないかと思える程に短い乏しい人生経験、食経験の中でもダントツブッチギリの一位で美味しかった。泣きそうなくらい美味しかった。


 これまでステーキ肉といえば、ファミレスのステーキ肉を食べたくらいで、結構スジがあってなかなか噛み千切れず飲み込むのに苦労する安物ステーキ肉しか食べたことがなかったのだが、このステーキときたら、とても分厚くて大きいのに、まるで筋肉繊維スジがなく、ガブリと噛んだ瞬間肉汁が口の中にジュワーと広がり、数回噛んだだけで溶けてなくなる程の柔らかさで、それでいてまったく口の中が脂でギトギトになることもなかった。


「どうだ?旨いかね?」

「美味しいです!こんなに旨い肉食べたの初めてです!」

「ワハハハ!そうだろうそうだろう!」


「これは一体何の肉ですか?」

「これはさっき仕留めたロックワームの一番旨い部分の肉だ!」


「ロックワームってこんなに旨いんですね!」

「そうだ、だからかなり高く売れるのだ。だが、なかなかお目にかかれない貴重な生き物だ」


「あの通りの見てくれだから見つけるのも難しいし、油断すると大怪我するからな」

「なるほど、そうなんですね」


 その後も楽しく会食が続き、これは個人的にも是非ともロックワームを仕留めてアイテム格納バッグに入れて家に持ち帰りたいものだと思った。


 ロックワームステーキ肉をたらふく食べて、大満足していたことろで、ザラの準備が出来たと若い人が入って知らせてきた。


「よし、それじゃ行くか!オレとベルムで行ってくる!」

「父ちゃんお土産買ってきてね!」

「おう!楽しみにしとけ!」

「やった!」


「今から出れば途中夜中に休憩小屋で仮眠して、明日の朝には町に着く、タダノはそれでいいか?」

「はい!・・・でも、私はザラに乗ったことがありません」

「何、大丈夫だ!大人しい中でも一番大人しくて優しいのを用意させたからただ乗ってるだけでいい」

「そうなんですね、安心しました、それに楽しみです」

「ウム!」


 そうして早速私達は町へと向かうことにした。その際お弁当を渡されて水筒はあるかと聞かれて、他の人の水筒と明らかに異なる現代日本のそこそこ良い値段で購入したステンレス製の水筒など出すわけにもいかず持ってないと答えたところ、これまで一体どうやってやってきたんだと驚かれ、さらにアイテム格納バッグの中身が空っぽなのを見られて、良くそんな状態で生きてここまで来れたなと、ひと騒動になった。


 そこで、ここに来る途中親切な一団に出会い、一緒に途中まで来たのだが、朝起きたら一団はいなくなりバッグの中も空っぽになったと答えた。ついでにマントもとられてしまったが、槍だけは寝る時も肌身離さず抱いているのでとられなかったと、我ながらよくもまぁペラペラと滑らかに嘘八百が出てくるものだと驚きながら説明した。


「あぁ・・・こりゃあひょっとしたらズール族の仕業かも知れないな」

「ズール族か!あいつらのやりそうなことだ!」

「あぁ、何も知らない余所者に親切にして、おおかた夕食に眠り薬でも仕込んで身ぐるみ剥いでトンズラしたんだろう」

「タダノの腕が相当なのに気付いて槍を奪うのは諦めたんだろうぜきっと」


「お前さんも酷い目にあったなぁ」

「ええ、辺境の田舎村の出なもんで、そういう事にはまったく分かりませんでした」


「それにしても運がいい、この荒野に水も無しで歩いてくるなんて、3日も経たずに干からびて死んじまうところだ」

「はい、この村と皆さんのおかげです」

「そうか、そう言ってくれるか」


 ひたすら口から出まかせを述べる自分はかなり申し訳ない気持ちになった。とりわけ濡れ衣を着せられたズール族とやらにはより申し訳ない気持ちになった。


 そうした一幕もありながら、私達はゴドルム村を後にして町へと向かうことにした。これからはアイテム格納バッグの中を見られないようにかなり注意しなければ。


 私が乗ったザラはドルバの言う通りとても大人しくて、私は本当にただ乗っているだけで前方を進む二人のザラの後を追いかけて進んでいった。


 ザラは巨大なコモド大トカゲのような見た目で、パッと見た時は恐ろしく感じたが、近づいて顔を見るとなかなかに愛嬌のある可愛らしい顔をしていて、鼻筋を撫でてやると嬉しそうに目を細めて、私は顔を舐められて、周りの人達からもザラは心の優しい者の顔しか舐めないのだと言って褒めてくれた。


 そうしてザラの背中に乗って移動し続け、いつしか夕日が暮れて月明かりに照らされ始めた頃、目の前に休憩所と呼ばれる小屋が現れた。


 小屋の周りにはやはり堀があり、地面には板が置いてあり板を掘の上に置いて渡り、ザラの背中からロックワームを卸して二人がかりで小屋の中に運び、その後は堀の上から渡り板を外した。ザラは放し飼いのままでも問題ないようだった。


 私達は小屋の中に入り、脂のランプに火をつけてお弁当を食べた。お弁当はロックワームの肉を挟んだ分厚いナンに似たパンを食べた。昼にドルバが言った通りロックワームの肉は冷めても抜群に美味しかった。


 その後干し草が敷かれた上に横になり、夜は冷えるからと何かの動物の毛布を渡してもらい、私達は仮眠することにした。


 その後ドルバ達が起きだした気配を感じて私も目を覚ますと、ベルムからさすがだなと褒められた。ベルムはなるほど村の宝の槍が盗まれなかったわけだと言って納得した様子だった。


 そうして私達は動物の毛布を羽織ったままザラに乗って町への移動を再開した。


 吐く息が白くなるほどに気温が低下していたが、それほど寒く感じることはなく、そんな様子を見てまたしても二人から褒められ、そうして移動しているうちに辺りは薄明るくなり、遠くにハッキリと町を目にすることが出来た。

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