35:狩り
異世界に来て初めて接触した異世界の人達と色々話しているうちにどうやら狩り場に近づいてきたらしいことが分かった。
先頭を歩く人が「待った」のゼスチャーをすると、皆そこで立ち止まり槍の鞘を抜いたので私も槍の鞘を抜いた。周りの人達が小さく「ホウ」と私の刀身を見て声を出した。
先頭を歩く人が背を低くして足早に岩陰に隠れるようにして前方の様子を偵察しに行った。
しばらくすると前方の人がこちらを振り向いて指を3本立てた。
「おお!これは大漁だ、しかもこちらには東方の村一番の槍使いもいる、めったにない良い日だぞ今日は」
最初に私に話しかけてきた人がそう言った。
私達は互いにアイコンタクトで頷き合い、背を低くして足音を立てないように気を付けながら先頭の人がいる岩陰に向かって行った。
「なるほどさすがだ、足運びからも実力が分かる」
ベルムと言う名の人が褒めてくれた。自分では分からないが果たしてそうなのだろうか。
「ところで獲物は何でしょうか?」
私は小声で尋ねてみた。
「ロックワームだ、ここに来る途中見なかったかね?」
「はい、遠い山に大きな何かが飛んでいるのを見た以外、まだ生き物を見ませんでした」
「なるほど、ロックワームは外から来た人には岩にしか見えないからな、恐らく気付かなかったのだろう」
「そうなんですね」
なるほど、擬態というやつか、これまで生き物に出会わないと思っていたのは私がただ単に気が付かなかっただけのようだった。
先頭の偵察役の人の元に辿り着くと、私を見て手に口を当てたので、私は頷いて同じゼスチャーをしてみせて黙ることにした。
ベルムはそんな私を見てウンウンと何かに納得したように頷いていた。
最初に私に話しかけてきた人が岩陰から頭を出して目の上に手のひらをかざして目を細めて注意深く前方の様子を見た。
それからこちら側に向き直し、目の前にあった石を3っつ手に取り地面に置き、向かって右の石を指さした後に自らを指差し続いて偵察役を指さした、次に真ん中の石を指さして私とベルムを指さした、そして残りの石を指さして、私の背後にいた二人にそれぞれ指さした。
全員互いの顔を見回して頷き、二列縦隊に並び、最初に話しかけてきた人が右手の拳を頭の横に揚げてから、パッと開いて小さく前に振った。それを合図に全員全力で突撃を開始した。
私は勢い余って躓くこともなく、前の二人にぶつかることもなく、岩陰から飛び出した。
前方の二人が斜め右に向かって行ったので視界が開け、そこで初めて目の前の状況を見た。
およそ15メートル前方に三つの細長い岩のような物体が存在するのを見た。
大きなイモムシのようなフォルムに岩と見間違うかのような色、大きさは1メートル程はありそうだった。
さらに接近したところで私は「情報」と念じた。
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ロックワーム
レベル:2
生命力:2
魔法力:0
持久力:2
攻撃力:1
防御力:5
素早さ:1
幸運度:0
魅力:0
魔法技能:0
異常耐性:0
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かなり弱い敵だ、ロックワームというだけあって防御力が高いが、恐らく苦戦する相手ではないだろう。油断大敵ではあるがこれなら一撃で倒せそうだと安心した。
ロックワームを見ると私に近い方に穴が空いていて小さなトゲトゲの歯が見えたので恐らくそれが口だと考え、ならば頭もそこに違いないと判断し、7メートルに達した所で、私はステップインして槍を突き出した。
まるで手応えもなくスルリと槍はロックワームの頭部と思われる先端に突き刺さり、元々動いていなったロックワームは口を閉じてグッタリした。
ベルムが近づいてきて私の二の腕をパンパンと叩き彫りの深い笑顔で大きく何度も頷いた。私も笑顔で頷き返した。
倒したロックワームを見てもロックワームは消滅することなくそのままの姿で残っていた。
他の人達を見回すと、右側の二人の槍がロックワームを突き刺しているのが見えて、左側の若干サイズが小さいロックワームには私の背後で装備を褒めてくれた人が突き刺していた。遅れて若く見える人も槍を突き刺した。
そこで全員槍を高らかに掲げたので、私も同じように槍を掲げた。
ベルムはロックワームを転がして体側を調べ、真ん中近くの少し窪んでいるように見えるところに槍を突き刺してしっかり貫通させ、穂先を布でぬぐってから鞘を被せた。
「反対側を持ってくれ」とベルムが言ったので「分かった」と返事をしてすぐに肩に担いだ。見た目に反して全然重いと感じなかった。
「おお、やはり力持ちなのだな」
周りを見ると同じようにして皆ロックワームを槍に刺して二人前後で肩に担いでいた。
「皆何ともないか」
「こっちは大丈夫だ」
「大丈夫だ」
「問題ない」
「どうだった、タダノは」
「実に見事だった、一瞬の早業で一撃でロックワームの頭を深々と突き刺した、村一番の槍使いの腕というのは本当だ」
「ホウ、そこまでのものか」
「ベルムがそこまで言うのだから相当な腕前なのだな」
「それにしてもこれ程のロックワームが3匹とは、なんという良い日だ、一匹は我らでいただくとして、大きな二匹は早速町に売りに行こう」
「そうだな、久しぶりにまとまった金が入るぞ、これでしばらくは村の者達にも楽をさせてやれる」
「町までは遠いのでしょうか?」
「歩けば3日はかかるが、ザラに乗って行けば1日かからないくらいで着く」
「ザラ、ですか?」
「うむ、ザラマンデルという大きなトカゲのことだ、コイツは卵の時から育ててやると大人しくて人の言うことをきくようになるのだ」
普通に会話しているだけでどんどん新鮮な情報が入ってくる。もう楽しくて楽しくて私は仕方がなかった。
「嬉しそうだな、旅の者、タダノよ」
「はい、何せずっと辺境の片田舎暮らしが長かったもので、こうして他所の人の話しが聞けるのが実に新鮮なのです」
「ハハハハ!分かる分かる、我らの村も大分辺境の田舎だからな!」
「タダノは修行の旅をしていると言ったな」
「はい!出来れば冒険者ギルドに加わりたいと思っております!」
「ホウ!それは良い事だ!装備を整えるにしても金がかかる、その点タダノの腕ならばすぐにでもそこそこ稼げるようになるだろう」
「私も町まで行ってみたいです」
「分かった、ロックワームを倒してくれたお礼もあるが、自分達も今日仕留めたロックワームを町に売りに行くから、一緒に連れて行こう」
「ありがとうございます!」
その後狩人達と一緒に村に入った、村の名はゴドルムという名で一番最初にこの村を作った時の狩人のリーダーの名前だそうだ。
村の周りにはそれほど広くも深くもない堀で囲まれており、後で聞いたところでは毒サソリや毒蛇などの危険な生き物が村に侵入してくるのを避けるためのものだそうだ。
村に入った途端村人達に囲まれ、仕留めたロックワームを見て大喜びする者や私を見てとても珍しがる人達で賑やかになった。
ベルムが集まる村人たちに私の事を東方の槍使いで武者修行の旅をしている、相当に腕が立つ若者だと説明してくれた。
狩人のリーダーが「これから早速町にロックワーム二匹を売りに行くから準備をしてくれ、旅人も一緒に連れて行くからザラを3頭用意してくれ」と声を上げると近くにいた若い二人の男性が頷いてすぐに離れていった。
次に中年と思われる女性達が手に何やら麻のようなものや何かの葉っぱのようなものを持ってやってきて、町で売るロックワームにとても慣れた手つきで巻き付けていった。恐らく鮮度維持のために包んでいるのだろう。
その後私は狩人のリーダーに呼ばれて、村の中央にある集会所へと向かって行った。




