34:接触
いよいよ異世界で初めての村、多分ヒトが住んでいるであろう村へと私は近づいて行った。
言葉が通じるかも分からない上に、友好的かどうかも分からないというのに、我ながら随分度胸があるなと思いながら、どうか揉め事が起こりませんように、良い人達でありますようにと祈りながら村の入り口らしい場所へと近づいた。
見張り台にいるヒトが何やら指を刺して大声をあげたので、私はそこで止まりとりあえず槍を地面に置いて深くお辞儀をした。
すると見張り台の人の大声は止んで、さらに何人かのヒトが集まってきて堀の向こうに集まってこちらの様子を注意深く伺っていた。
私はなるべく刺激しないように少し大きくはっきりと「こんには、私は旅の者です」と声を出した。
すると見張り台のヒトの方から大きな音が聞こえた。見てみると何かを口に当ててラッパのように吹いて鳴らしているようだった。
その様子を見ていると、背後に人の気配がしたので振り返ってみたところ、先ほど双眼鏡で見た槍を持った一団がこちらに戻って近づいているのが見えた。
私は一層心臓の鼓動が強く速く頭に響く程に緊張した。
10メートル程にまでその一団が近づいたところでその一団は停止した。一団は5人いた。
「こんにちは、私は旅の者です」
もう一度私は頭を下げて挨拶をした。
すると一団の中の一人が近づいてきた。5メートル程近づいたところで、私は「情報」と念じた。
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???
??歳男性
レベル:3
生命力:30
魔法力:0
持久力:30
攻撃力:3
防御力:3
素早さ:3
幸運度:3
魅力:3
魔法技能:0
異常耐性:0
【スキル】
槍使いLv3
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私は内心でホッとした。当然このヒト達と戦いたくはないが、それでももしもの時は自分の命を守る範囲での自衛は止む終えないので、今目の前のヒトが自分よりもステータスが低いことに正直安心した。だがだからといって決して油断は出来ない。
「旅の者、お前はどこから来た?」
なんという僥倖!言葉が通じる!私は内心でとても喜んだ。私はまだまだ人生経験の浅い若造なのでその嬉しさが隠しきれずに顔に出てしまった。私の目の前にいるのは確かに紛れもなく人間だった。
「私の名は多田野 仁、群馬から来ました、修行の旅をしている者です」
我ながら修行の旅などという言葉がすぐに出てきてつい内心でおかしくなった。
「グンマ?そんな村は聞いたことがない、誰かグンマ村を知っている者はいるか?」
後ろに控えていた一団は一様に首を振ったが、一人だけ近づいて話してきた人がいた。
「グンマ村は知らんが、その男の身なりからして遠い東方の人間のような気がする、以前町でそのような身なりの男を見た」
「なるほど、そうか。旅の者、タダノよ、お前は何しにここへきた?」
「はい、私は修行のため村から出てきたのですが、なにぶん田舎の小さな村の出身なもので、ここら辺のことは何も知りません、出来れば色々と教えていただけないでしょうか」
「ううむ・・・旅の者よ、見たところお前は槍が使えるようだな」
「はい、村では一番の槍使いでした、なので村の宝ともいえる槍をもらって、こうして旅をしております」
我ながら良くスラスラと口から出まかせデタラメが出てくるものだと感心した。
「確かに、相当良い槍のようだ、だが、そのような村の宝ともいえる物をいつまでも地面に置いておくものではない、自分の命を守る大切な槍だ、鞘をしっかりしていることでそちらに敵意がないのは分かった、槍を手にするがよい」
「ありがとうございます」
「さて、旅の者よ、わしらは御覧の通り今から狩りに出かけなければならぬ忙しい身だ、ここいら辺のことを知りたくばどうだ、一緒についてくるか?」
「はい!喜んで!」
自分の予想が全く追いつかない展開に、私の胸は高まる一方だった。
確かに最近のロールプレイングゲーム、とりわけ海外作品はストーリー分岐がかなり豊富で昔のような一方通行の英雄物語りではなくなっているが、今こうしてやりとりしていることは、全く作り物のような気がしないとてもリアルなものに感じ、私はとにかく感激していた。
「では、ついてこい」
「はい、よろしくお願いします」
私は槍の一団について行き一緒に狩りに出かけることになった。果たして何を狩りに行くのだろうか。
私を取り囲むように先頭を行く者が一人、先ほど私に話しかけてきた人が私の右横に、もう一人別の人が左側に、残る二人が私の背後にという布陣で、私達は村を後にして彼等が狩り場と呼ぶ場所へと移動した。
あまりジロジロ見たわけではないので詳細には分からないが、どことなく中東の国にいる人達のような割と彫りが深い目鼻立ちで髪の毛は私と同じ黒っぽい色に見えた。
「それにしても良くそのような軽装でここまで来れたな」
「はい、なんとか無事にここまでたどり着きましたが、どこかで金を稼いで装備を整えたいと思います」
「それが良いだろう」
「確か東方の者は攻撃主体の戦法を用いるものが多いと聞いたぞ、剣士は盾を使わないそうだ」
私の左側にいる人がそう言った。
「なるほどいかにもそれは納得がいく、その男の装備は軽装だが革靴は非常に良い物のように見える。恐らく動きやすさを重視した戦闘スタイルなのだろう。上半身の装備が軽装なのは槍の攻撃を妨げないように動きさやすさを重視し、その分足元はしっかりした装備になっている」
私の背後にいる人がそう言った。
「それにしても若いな、まだ子供の様だぞ」
背後にいる別の人がそう言った。声からして若い人のようだった。
「確かに私はまだ若輩者です、つい最近20歳になりました」
「なに、20歳だと?12~3歳かと思ったぞ」
「いや、東方の人間は見た目はかなり若く見えるのだ」
「エルフぐらいにか!?」
「いや、アレ程ではない、アレはそもそも我々ヒトとは違う生き物だ」
エルフ!!今エルフと言ったぞ!この世界にはエルフがいるのか!それもお約束の設定!私はなんとかしてニンマリしないようにポーカーフェイスでいようと思ったが、嬉しくて仕方がなかった。
「いや、この者の身体つきと足の運び、確かに若いし線も細いがただ者ではないと見た、先ほど村の宝だといった槍も非常に立派な物に見える」
背後にいる人から褒められた。
「東方の人間は筋骨隆々な者は少なく大抵線は細いが膂力はなかなかのもので、速さを重視するらしいのだ」
「ベルムは物知りだな、さすが町の冒険者ギルドに所属しているだけのことはある」
冒険者ギルド!!今冒険者ギルドと言ったぞ!やった!素晴らしい情報を得ることが出来た!だめだ、顔がニヤケてしまう、マフラーなどして顔を隠したいところだ。
「ホウ、狩りを前にその笑顔とは、やはりそれなりに腕の立つ者のようだ」(左)
「ウーム、そうなのか・・・」(背後の若者)
私は先ほどから東方の人に詳しいベルムという人をチラ見して「情報」と念じてみた。
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ベルム
??歳男性
レベル:3
生命力:25
魔法力:5
持久力:25
攻撃力:3
防御力:2
素早さ:2
幸運度:1
魅力:2
魔法技能:1
異常耐性:1
【スキル】
槍使いLv3
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微妙に細部の数値が異なることに私は感心した。
ともあれ、勇気を出して初めて異世界にいる人達に接触してみて予想以上に情報を得られたことに私は大いに喜んだ。




