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第三十七話

「教団ですか……? あそこはただの宗教団体じゃ? 特に悪い噂は聞きませんよ」

 

 日本でもたまに宗教がらみの話題はあるが、それに近いものなのだろうか。


 王は肉を骨ごと頬張って飲み込んだ。


「げぷっ、……失礼。だからこそだと言えるな。表での活動を盾にして裏でこそこそと何かを仕掛けているらしい。それの証明として、教団に関わった騎士が何人か帰ってこなくなったんじゃ。ケルシャ山の件もそれと関係があるかと思って、冒険者ギルドに依頼したんじゃ。一つ聞きたいことがあるんじゃが、良いか?」


 多分、騎士を調査に送ると姿を消してしまうので、全く別の場所から送り込もうとしたということなのだろう。

 王という立場にありながら、断りを入れて質問をするなんて、何を聞く気なんだ?


「良いですよ」

「うむ、クリハラ君、君はこの国の出身ではないよな。それもかなり遠くから来たんじゃろ? 深く詮索するつもりはないから、答えれる範囲で良いぞ」


 俺とココは顔を見合わせる。

 どう説明したものか。異世界から来たと言ったら、通じはするだろうが、どういう反応をされるか分からない。

 クリハラなんて名前のやつは珍しいだろう。この世界で一度も会ったことが無い。

 俺の出自に関して、よほどの違和感を感じたから断りを入れたのだろう。


「遠くから、それも常識の全く違う場所から来ました。これ以上は誤解を生みそうなので……すみません」


 俺はどうとでも捉えられるように言った。


「ガッハハハ! 謝らなくても良いのじゃ。出自が分からないかつ、正義感を持った者をわしは望んでいたのだ。《《スパイとして使えるとは思わんかね》》?」


 出自を隠したからといって、王城を追い出されるようなことはないようだ。

 なるほど。俺のバックボーンを調べようとしても何も出てこない。つい数日前まで、存在していなかった男なのだから。


「確かにそうですね。そこでタルマハジャ教団の裏を調べて欲しいというわけですか」

「そういうことになる。どうだ? この頼み、受けてもらえるか?」


 多額の報酬がもらえるということはココが反対することはないだろう。

 俺の「力を得て、復讐する」という目的とは異なるが、俺に「守り」を授けている という神については知っておきたいかもしれない。教団を調べることは俺について知ることに繋がる気がする。


「受けます。やらせてください」

「うむ。よろしく頼むぞ……もう食べ終わったか?」

「はい」


 目の前にある食べ物はすべて平らげた。男子高校生だったからな。これくらいなら食べられる。


「ところで、君は出自がバレてしまっても問題はないのか?」


 王がココに聞く。


「大丈夫です。家族と縁を切って何年も経ちますから」


 初めて聞いた事実だ。プライベートなことを喋ってくれなかったのも、それが原因なのかもしれない。


「こう言うのはなんだが、君もスパイ向きじゃな。それならば、よし、例のものを持ってきてくれ」


 王が近場にいるメイドに言った。数秒後にそのメイドは布に包まれた棒状のようなものを王に手渡した。

 王は立ち上がって、俺の目の前にまで来てそれを手渡してきた。

 受け取るとずっしりとした重みを感じた。


「……これは?」


 布を外してみると、鞘に入った剣が出てきた。精緻な文様が施されており、所々に小さな魔石らしきものがはまっている。形は標準的な片手剣だ。


「わしらからの事前報酬じゃ。剣士になりたいと聞いておったのでな。ちなみに、オーウェン君が監修して作らせたものじゃぞ。一日で作ったが、有名な職人の手で作られたものだから安心すると良い」


 オーウェンさんが視界の隅でウィンクをしたのが見えた。きっと王に提案してくれたのだろう。

 少しさやから剣を抜いてみると、鏡のように光を反射して、自分の顔が見えた。少し青がかった色をしている。ただの金属ではなさそうだ。


「ありがとうございます! 大切にします」

「うむ。修練に励むと良い」

「その剣はね、使用者のスキルが増幅されるようにできているよ」

「オーウェンさんも、ありがとうございます」

「君には剣の才能があるからね」


 スキルが増幅か。俺の場合、10レベル以上離れている相手にもこの剣を使えばスキルが通じるようになるというわけか。強力だ。

 剣のプロである騎士にそう言われて嬉しくないはずがない。何にも才能が無いと思っていたが、意外な所で見つかるものだ。日本では見つけようもなかった才能だ。


「そして、君が来るとは思っていなかったからなあ、下品だがこれで良いかな?」


 王は袋をココに手渡した。


「ありがたき……しあわせ」


 中身は金か。分かりやすいなあ。

 ココは中を確認すると、王の前にひざまずいた。


 しまった。王から物を頂いたのに、言葉だけの感謝じゃ足りなかったか。無礼な奴だと思われただろうか。


「やめい、やめい。もうそういう時代は終わったんじゃよ」


 王はココを立たせた。

 良かった。貴族制度も廃止されたと聞いたし。身分差のようなものはあまりないのかもしれない。

 ココが大げさだっただけだ。


「よし、詳しい説明に入るぞ」


 俺たちは気持ちを切り替えて、王の説明を聞いた。

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