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3話 最初のスローライフ

俺が作った家の前で、しばらく立ち尽くしていた。


「……ほんとに建ってる」


さっきまで何もなかった場所だ。


それなのに今は、立派な木の家が一軒建っている。


屋根付き。煙突付き。

しかも結構いい感じの家だ。


「すごいわね」


肩の上に座った妖精サイズのリリィが、家を見上げて言う。


「初めてにしては上出来じゃない?」


「初めてって?」


「クリエイトブックで建物を作るのよ」


「前の作者はもっと派手だったけど」


「城とか書いてたし」


「いきなり城は無理だろ……」


俺は苦笑した。


でも、これはチャンスだ。


戦う力はなくても。


この本があれば――


「生活はできそうだな」


「スローライフするんでしょ?」


「そのつもり」


俺は家のドアを開ける。


中には

•テーブル

•椅子

•ベッド

•暖炉


ちゃんと家具までそろっていた。


「おお……」


「意外と快適そうね」


リリィは空中をふわふわ飛びながら部屋を見回す。


「作者のイメージで作られるから、想像がちゃんとしてるといい家になるのよ」


「へぇ」


俺は椅子に座った。


異世界に来てからずっと緊張していたけど。


やっと落ち着いた気がする。


「まずは畑だな」


「農業?」


「食べ物ないと困るだろ」


俺は再びクリエイトブックを開いた。


カリカリカリ。


『家の近くに小さな畑ができる』


ページが光る。


数秒後。


窓の外の地面が盛り上がり――


畑ができた。


「便利すぎない?」


リリィが笑う。


「作者だもの」


「それくらいできないと」


俺は窓から外を見る。


森の中。


一軒の家。


小さな畑。


まだ何もない場所。


だけど。


「ここから始めるか」


「何を?」


リリィが聞く。


俺は少し考えてから言った。


「町づくり」


「へぇ」


「家を増やして」


「人も増やして」


「そのうち村にする」


リリィは楽しそうに笑う。


「作者っぽいじゃない」


「だろ?」


「でもね」


リリィは少し真面目な顔になった。


「人を作るときは気をつけて」


「え?」


「クリエイトブックで作った存在は」


リリィはゆっくり言う。


「物語の登場人物になるの」


「登場人物?」


「そう」


「つまり――」


そのとき。


外から音がした。


ガサッ。


「……ん?」


森の方を見る。


誰かいる。


木の陰から――


一人の少女が倒れ込んできた。


鎧を着た少女。


剣士だ。


どう見ても――


冒険者。


「……た、助けて」


そう言って。


少女は地面に倒れた。


「ええええ!?」


俺は慌てて外に飛び出す。


リリィが肩の上で小さく笑った。


「ふふ」


「どうやら」


「あなたの物語、もう動き始めてるみたいね」


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