セルゲイ
セルゲイはザ・騎士って感じの人。
ただの元男爵令嬢の私をまるでお姫様みたいに扱ってくれる。
今は伯爵夫人だから、これが正しいのかもしれないけれど、やはり慣れなくて未だに戸惑ってしまう。
馬車を乗り降りする時に、剣を握り続けてすっかり皮が厚くなった手で、壊れ物にでも触れるように慎重に手を取られる。視察や街への買い物など一人で出かけることも多いのだけれど、そんな時は私の身の安全にとても気を配ってくれる。
「仕事ですから」と言われても、時に身体を張って守られて、ときめかない女はいないと思う。
ある日遠くの視察先で、襲ってきた暴漢を彼が斬り殺したことがあった。その時のひどく青ざめた様子が気にかかって、宿に着いてから彼の部屋を訪ねた。そして、彼が人を殺したのはこれが初めてだったと知った。
犯罪者を捕縛することは何度もあったけれど、怪我は負わせても死なせることは一度もなかったのだと。
ひどく動揺する彼を抱きしめたのは、ただ落ちつかせたかったからだ。
でも、きつく抱きしめ返してきた彼に何度も激しく口付けられて、彼が何を必要としているのか悟った。だから力を抜いて身を任せた。
彼は私の身体中にキスをしながら私を抱いた。すべてを忘れようとするかのように。
その日以降も、彼はいつもまるで崇拝するかのように私の全身にキスをする。旋毛から肩先、髪、指、掌、足の爪にまで。
私がくすぐったがって笑うと、とても幸せそうに私を見つめる。そしてさらにたくさんのキスをしてくれるのだ。
おまけは本編の直後に入れました。