独白《アリア》
始めまして。
こちらの小説に興味を持ってくださりありがとうございます。
楽しんでいただけたら幸いです。
人の海に溺れている。言葉が肺に流れ込み、息が苦しい。
ふとそんな感覚に陥ることがある。
家族とか、青春とか、恋愛とか、言葉とか、そんな海の中を難なく泳いでいく魚たち。彼らの声が、遥か遠い音に感じられる。
それは孤独ではなくて、そもそもここが、自分の居場所ではないという感覚だった。
その思いを誰かに吐き出したい、そう思うことすら怖かった。
「甘え」だとか、自分でそう選んだ「責任」だとか、そんな社会に便利な言葉で片付けられてしまいそうだったから。
社会はそんなラベルをつけるのが好きだ。
性格に。立場に。関係に。傷に。まだ形になっていない感情にさえ。
誰かが勝手につけたラベルが、いつの間にか肌に貼りついて、剥がそうとするたびに痛む。人はみんな、その痛みにいつの間にか慣れている。
僕はそれに慣れることができず、逃げることしかできなかった。
それも社会では、「甘え」なのかもしれない。
それでも思う。
生まれ持ってエラを持つものと持たざる者では、環境への適応力が違うのではないか。
それは自分の努力不足なのだろうか。それともただ、「陸」という自分の生きるべき場所が見つかっていないだけなのだろうか。
けれど不思議と、遠くで鳴っているその歌だけは、水の底のこの場所まで届いた。
歌が自分を掬い上げたその瞬間だけは、自分がまだ生きているのだと、気づけた気がした。




