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ゲノマ・ゲーム  作者: やばくない奴
アークとの戦い
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千尋の独断

 一方、アークの会議室では、蓮(れん)が怒りを覚えていた。右手に時の鍵を携えつつ、彼は千尋(ちひろ)を責める。

「何故、時の鍵のアクセス権を書き換えた? 我々には朔上泰地(さくがみたいち)の力が必要だ……あの男の力がなければ、ジェネシスを倒すことはままならないぞ」

 何やら、泰地に迎えが来なかった理由は千尋の行いにあったようだ。会議室には風花(ふうか)と由美(ゆみ)も居合わせているが、つい先程まで命の危機に瀕していたはずの二人は無傷の状態だ。どうやら彼女たちの体は、千尋が回復させたらしい。そして千尋が時の鍵のアクセス権を書き換えたことには、彼女なりの理由がある。

「確かに、あの男は強い。だけど前にも言った通り、彼に人類の未来を任せることは出来ない。アタシが信じるのは、風花と由美の正義だから」

 そう――彼女は風花たちに希望を託していたのだ。しかし今のところ、由美は泰地ほど強くはない。そればかりか、風花に至ってはまだフェーズ2にすら達していない。そんな状況を目の前にして、蓮が千尋の行いを許すはずもないだろう。

「自分が何をしたのか、わかっているのか? 泰地も所詮は人間だ。一時的に混沌の時代が到来しても、泰地はいずれ死ぬ。人類が滅びる未来と秤にかければ、たかだか六十年前後の悪しき時代がもたらされる方が遥かにましだ」

 それが彼の言い分だった。確かに、ジェネシスを倒すにあたって、泰地の力を借りた方が無難ではあるだろう。風花たちに未来を委ねるのは、博打に他ならない。それでも千尋は、その「博打」に出ようと考えているのだ。

「もし上手くいかなかったら、また時間をやり直せば良い。いずれにせよ、泰地が忘却の遺跡に閉じ込められた今となっては、風花を覚醒させる以外に方法はないんだよ。だから、風花を徹底的に鍛えよう」

「千尋。君は無謀な博打に、全人類を巻き込んだんだ。その自覚はあるか?」

「アタシたちが介入しなければ、どのみち人類は滅びる運命にあるんだよ。アタシたちは善意で人類を救おうとしているのに、そのやり方にケチをつけるような人々がいるの? 仮にいたとして、そんな人々の声は雑音だよ」

 もはや、彼女が考えを変えることはないだろう。蓮は深いため息をつき、風花たちの方へと目を遣った。

「風花、由美。君たちに、人類の未来を背負う覚悟はあるか?」

 そう訊ねた彼は、いつもより増して真剣な顔つきをしていた。風花と由美は互いの顔を見つめ合い、そして頷く。彼女たちの目には、確固たる決意が宿っていた。

「もちろん、覚悟しているさ。だけどその前に、キミたちには落とし前をつけてもらわないといけない。キミたちは多くの人々を巻き込み、そして犠牲にしてきた。その責任から逃げることは、許さないよ」

「風花さんに同意します。私達をゲノマにし、貴方達の戦力にする分には許しましょう。しかし、無関係者の方々を巻き込むのは許されざることです」

 二人はジェネシスを倒すことに協力的だったが、その一方でゲノマ・ゲームの存在には否定的だった。特に、風花にはアークへの怒りを募らせている理由がある。

「過去に戻って、ゲノマ・ゲームを中止してもらおうか。ボクと由美以外は、誰も被験体にならない。環奈(かんな)だって、無事に生きていける――それがボクの望む未来だ!」

 元より、彼女はアークのせいで親友を失った身だ。そんな彼女が運命を変えることを望むのも、当然のことである。しかしこの期に及んでもなお、蓮は環奈の運命を決した人物が自分でないことを打ち明けない。

「環奈の件に関しては、申し訳なかった。だが、ゲノマ・ゲームをやり直すことは出来ない。あのゲームはプレイヤーを淘汰するだけでなく、ゲノマの成長にも関わっているからだ」

 曲がりなりにも責任を感じていた彼は、下手な自己弁護をしなかった。

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