第二十七話 ジン
ありですよね? ぎりぎりセーフですよね?
「ガルルルル!」
「こいつが最後のボス……」
アオト達は百階層のボスとの対決に今まさに直面していた。
「名は魔獣・ビーストル」
魔獣。この異世界には獣人と言う種族がいるがそれとはまた違った育ち方をした姿で獣人と元は同じ種類に分類された獣の魔物。理性を持っていて魔物の中ではとても珍しく、本能も多々残っていて魔物の中でも最高ランク程の脅威がある。その中でもこのビーストルは理性を忘れると何もかも壊してまわるので危険度が計り知れないものなのだ。全長8m程度で体重は1000tに達する。大きな牙と爪。底なしの黄金に黒の線が入った毛皮が特徴だ(今は従魔と言った形なので全身が黒い)。防御はそのふわふわの毛皮が、攻撃はその硬い牙と爪が主な方法だ。魔法は基礎能力増加などの肉体系が多く、炎系の魔法も多少使う。
「なんとも強そうな奴だな」
「これでも僕の迷宮の最下層を担っていた魔物だからね」
「そりゃそっか。サーシャさんとの迷宮だもんな」
ビーストルを横目にレンに対してサーシャさんの部分だけ強調させて言う。
「まあね。負けるわけにはいかないよ」
「負ける気なんざはなからねえよ」
「だろうね」
「《鑑定》」
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魔獣
??歳
種族 魔物
レベル 63
体力 2367+12000
魔力 2139+12000
破壊力 2076+12000
耐久力 1957+12000
魔耐久 2255+12000
素早さ 2184+12000
知能 1020−500
運 50
魔法適性 炎 闇
スキル 威力増加(+炎) 鋭爪 黒炎
称号 ダンジョンボス 従魔
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「流石と言った所か」
「うん。でも甘く見ちゃいけないよ。体型の違いでも結構な差が出るから」
「ああ」
「ガルアアア!」
獲物がそこにあると言うかの如く充血した目で襲いかかってきた。その姿にレンは一度気持ち悪さを感じたがすぐに立て直す。
「なあ、レン」
「なあに?」
刻一刻とビーストルはアオト達に近づいている。
「早く行きたいんだよな?」
「できるだけね」
ビーストルは逃げぬ獲物に今まさに口を大きく開けて喰おうと迫っていた。
「ガルアアア!」
「……黙れよ」
アオトが発したその声はこの世のものとは思えない程のドスがきいた声だった。それを間近で受けたレンも自分に向けられたものではないと分かっていても本能的にアオトを見てしまう。勿論仰天だけでなく、恐怖の表情も含まれて。そしてその声を向けられたビーストルはまるで自分の主の怒りに触れたかのように立ち尽くしていた。
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能力獲得条件をクリアしました。
スキル“脅迫”を自動的に獲得します。
……スキル“脅迫”を解放しました。
“脅迫”のスキルの使用をオンにし、“脅迫”をアクティブしました。
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「………………は?」
まさかの通達にアオトの脳は現状を理解する事ができずにいた。今まで一度しか見た事のない通達。あの三つのチート(と呼んで良いのか?)的なものを手に入れたときと似たような頭の中に直接入ってくるような感じ。
(懐かしいと言うかなんと言うか……は? としか言えないんだけども)
頭で考えるのをやめてまずは目の前の敵を倒す事に専念する。
(今は止まっているけど何時動き出すのか分かったもんじゃないからな)
もう愛剣と言っても過言じゃない“雷狼”を引き抜き、足の付け根部分を斬り裂こうと剣を振るう。だが―――
「くっ、重い」
血は次から次へと流れてくるのに斬れていく感触は極僅かだ。今までの魔物とはやはり格が違う。防御力だけではなく毛皮での耐性が強いのだろう。
ビーストルがぴくりと痙攣を起こし、今にも動き出そうかと思う程の勢いで気迫が元に戻っていく。
「アオト、目だ!」
レンの指示を聞き、足から回転を利用して無理矢理抜き出してビーストルの目の高さまでジャンプする。ジャンプのときに地面が大きく凹んだが無視だ。
「ガ……ガルウウウウウ!」
ビーストルは動き出し始め、アオトの真上に手を振り上げ、思いっきり振り下ろした。
「無茶だ!」
「このまま押し切る!」
“雷狼”を上に翳した。そして何かぶつぶつ呟いているようだが何かは分からない。ビーストルの手は直ぐそこまで来ている。
「アオト!」
「……《雷撃》!」
アオトの“雷狼”から真上に強力な雷の魔力が放出される。その光は黄色より明るく、光り輝いていて神々しい光景へと辺りが変化している。
どうやら《雷撃》は形を変化させる事が可能みたいだ。
「ガガ!?」
自分は自慢の爪で斬り裂き、踏みつぶす側だと思っていたのに獲物が莫大な量の魔力を放出した事により驚いた。そしてその雷の魔力が自分の爪を弾くばかりか当たった所を綺麗に穴を空けたことに驚きよりも驚きの表情になっている。
「これが最後だ。魔力は今、弾丸となる 高速を超えた超速は何人も止める事は不可能 神をも貫くその弾をここに顕微せよ」
アオトのオリジナルで最大の魔法。
「名付けて……《神弾》だ!」
アオトの広げた手の平に濃密な魔力が発生し、一つの弾丸が形成される。これまた神々しい光を放ちながらもどこかこの迷宮に合う感じの黒が浮かび上がる。
「ルアアアアア!!?」
その光は最初にいた地点から少し落ちた所から目の角膜に入り、そのまま貫通し、一瞬にして頭蓋骨を突き抜けた。
「え、えええええええ!?」
自分の爪が粉砕されても牙で歯向かおうと牙を向けたが時既に遅しだった。やはり爪が破壊された事に対しての硬直が負けた要点の一つになったようだ。
レンも自分が用意していた最後の魔物がこうも簡単に倒されるとは思ってもみなかったので仰天である。
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能力獲得条件をクリアしました。
スキル“魔法作成”を自動的に獲得します。
……スキル“魔法作成”を解放しました。
“魔法作成”のスキルをオンにし、“魔法作成”をアクティブしました。
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「俺はなにも見てねえ!!」
そんな叫びも虚しく消えていった。
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自分が【脅迫】と【魔法作成】を獲得した事を報告した後、アオトとレンは魔力が回復次第急いで最後のステージに向かった。どうやら階層が下がるにつれて魔力の濃密さは高くなり、魔力の回復も早くなるようだった。
「アオト、次の敵は真っ正面からだけでは勝てないと思うから一人だけは無しと言う事で良いね?」
「分かってるって」
(本当かな〜?)
そんな会話が終わるのを待っていたように突如今までの扉とは存在感が段違いの扉が出現した。
「これは相当な敵だな……」
「この魔力何処かで……」
と、それぞれに考える所があるながらも中から漂う魔力の大きさと特徴に頭の中を全てそれで埋め尽くされながらも扉を開けた。扉は今までのとは違い、少し押すだけですぐに開く事ができた。
そして中にいたのは―――
「初めまして二人とも。途中で俺の声を聞いたと思うけどそれは抜きでな」
「……な、なんで!? なんで君がここにいるの!?」
「いや、レン。お前とは久しぶりだな。覚えてくれて嬉しいなあ。お前が思っている通り俺はジンだぜ?」
人影の正体……それは姿は怖くなれど二代目勇者の最初の犠牲者迅だった。
まさかの投稿の文字を押すのを忘れていたとは……。
まあ、一応感想待ってまーす。




