第十八話 コトノ、空気と化す
作者、通知表上がったのですがどうしても釈然とこない感じが……。
それは少し置いといて誤りがあれば報告宜しくお願い致します。
アオト達がビッググリムリーパーを倒した頃、勇者一行は迷宮を一度脱出し、王都へと帰還しようとしていた。
「ちっ、俺はあそこに残っていても良かったのによ」
そんな強がりを言うのはシンマである。前回でも説明させてもらったがこのシンマ
はアオトを突き落とした張本人であり、今では然程恨んではいないかもしれないが一応アオトの復讐したい奴ナンバーワンである。
「そんな事を言っちゃいけないよ。皆いろいろとあり過ぎて疲れが限界に達しているからね。そんな強がりを言ってもシンマ君も相当に疲れがたまってるだろ?」
ピンポイントで自分の状態を言い当てたセイイチはやはり自分たちとは格が違うと実感するシンマ。
「まあな」
「それにしてもコトノさん目が覚めないね」
この状況からコトノの話へといきなり変える所から見てセイイチはやはり彼女の事が好きだと言える事が分かる。
そして尚悪いのはコトノがアオトの事を好いていることに気づけていない事だ。このままでは仲間思いではなくご都合主義者になりそうだ。もうなっている気もするが。
それを分かっているのかシンマは苦笑いを向ける。
「私が威力が強い魔法を掛けたからよ」
そんな中、セイカがどこから現れた! と言われても仕方ない程に唐突に姿を現した。
「なんでそんなことを!?」
「今起きたらまた気が気ではないままこの馬車の中で暴れるかもしれないからよ」
今、勇者達がいるのは馬車の中で12台の馬車にそれぞれ均等になるように別れている。そして、その誰もが浮かない表情をしている。心の中であざ笑っている奴も居るが。
「それに私の魔法だけでもないと思うわ」
「どうして?」
「心が傷ついているせいで意識の保ちようが悪くなっているじゃないかしら?」
「……確かにそれにも一理ある」
納得はしたくないようだが現実がそうである以上可能性がないとは言い切れない。
「シンマ君」
「は、はい」
「君は少しの間眠って居なさい」
「えっ」
「私は最近精神に関わる魔法を研究してきたから少しわかるけれど貴方、自分が思っている以上に精神的な疲れが溜まっていますよ」
(セイカさん、セイイチにだけは言葉遣いが違い過ぎる……)
と思っているのだが、シンマは……。
「……はい」
そのシンマの声はまるで操られたかのようにすんなりと聞き入れ、後ろの馬車へと魔法で出来た透明な板を使い歩いていき、近くの魔物の毛皮を被り、眠ってしまった。
「……私も疲れちゃった」
近くの人は誰一人として起きていない。馬車を動かす為に王国の騎士が一人前を向いているが距離があるのでよっぽどの事がない限り聞こえる事もないだろう。
「あれ? 他の人はどこに?」
「皆疲れて向こう側で眠っているわ」
そう言って後ろの方の馬車を指差す。と、同時に布の生地でできたカーテンのようなもので外と中を別々にわける。
「……まあ、あんな事があったばかりだから仕方ないか」
セイイチは何の疑いも無しにその言葉を丸ごと信じる。実はセイカが精神を少しだけ操って指差した馬車の方へ行くように少しだけ手を加えたのだが、そんな事に少しも疑いを持たないセイイチはご都合主義がどこまで行くのか誰にもわからない。
「あ」
「ちょっとだけ」
そう言ってセイイチを魔物の素材でできたふわふわのソファーらしきものに座らせるとその膝の部分に自分の頭をのせた。
「……はあ」
この溜め息は何に対してだろうか。
今までの事を振り返ったから?
違う。
セイカのこの行動が嫌だったから?
もっと違う。
今までにもこういう甘えモードがあったから?
正解。
ということである。セイカとセイイチは昔からの親友で一応両思い(?)に入る……筈ってところである。そして二人だけのときにセイカは甘えモードになってしまう事がしばしばあったのだ。
「……セイカはこうなったら止めないからなー」
「……すうすう」
と言いながらもセイカの寝息を聞いて「変わらないな」と思い出に浸る。セイカは途中までは眠っていなくてこのままこの時間を堪能したかったのだが、途中から魔法の行使のし過ぎからか眠ってしまった事で起きたときに顔が赤くなり、同時に残念な気持ちが込み上げてきたのはまあ別の話。
「すうすう」
そんな二人と少し離れた所で一人だけ空気を読まない奴みたいに眠るコトノはなんと言ってあげれば良いのか……いや、何も言ってあげない事の方が彼女のためになるだろう。
夏休みだーー!!
皆さんは何をして過ごすつもりでしょうか?
自分は小説を書きながらも海に行きたいと思っています。皆様もこの夏休みがいいものになる事を願っています。