012話 知識は力なり
キャラ設定はつけていく方向で決めているのですが色とかどうなの?
など容姿の設定は後程投稿する狩人シリーズの設定集に詳しく盛り込む予定です。
なおキャラが小説に出れば追加していく感じになります( 一一)b
ではでは本編ご覧ください。
『招待状だよ。俺のね。
期限は一週間後の月曜日。この日に第二特別講習部屋を訪ねてくれ。
俺はそこにいる。そこで君とワンモアワン……もとい勧誘をさせてもらう。
君にもしもチームがあるのであればチームの人たちも含めて。
……じゃあ俺はこれで。返事を楽しみにしておくよ』
育斗は一室で森岡白牙という男に渡された手紙を
ベッドの上で眺めながらその時に言われたことを思い出していた。
育斗が今いる場所は学校指定の寮の一室だ。
他にチームメイトもおりその中には黄泉月桜、木並唯がいる。
木並唯は育斗の幼馴染で進んでこの部屋分けに参戦した。
本来寮の一室は全員が入れるわけじゃないので確かに
ぎゅうぎゅう詰めになるのも分かるが異性というのは全くの例外だった。
しかしそれを提案したのはあろうことか狩人専門学校、狩研の人たちではない。
それは現狩人一番隊隊長を務めまた自分や桜を保護という形で監視する張本人、霧島勇吾だった。
霧島さんが言うには確かに監視の目的もあるが神の剣という絶対的な力が暴走しては元も子もない。
そのためには抑止力が必要とされそれが自分たちに値する、というもの。
結果僕や唯が桜を監視、抑制するために一緒に暮らすということになったのだった。
(勧誘ね……)
話を戻そう。
三日前僕は森岡白牙に勧誘という名目でとある封筒を渡される。
その場にいる僕だけがその価値を分からなかったが
守の指摘でそれがどんなものかを理解したのだった。
それは言うなれば1対1の公式で正式な試合ができるチャンス
……森岡白牙との一騎打ちができるチケットのようなものだという。
しかもそのチケットは招待する側、つまり森岡白牙に行使する権利があり
誰がどんな風なアプローチで森岡白牙という男に対して魅了や勧誘、懇願したとしても
本人が了承しない限りは対戦を受けないということができる。
まぁそんなようなことが簡単に行えるチケットと言ったほうが早いだろう。
しかも本人が既に了承済みという。
僕は受け取ったばかりに言われた守のことを思い出す。
『勧誘ってのはいわば”一騎打ちを申し込む”ってのなんだ。
だけど普通の勧誘は回数に制限がない。迷惑行為にあたるものはすべてダメだけど、
色んな人物から数回勧誘されるのには別に問題ではないんだ。
だけどそこにさっきのような”招待状”があると話は別だ。
それは招待状を貰った人間に対して他の人物は勧誘することが出来なくなるんだ。
猶予期間ってことで一時的に勧誘されなくなる盾を持ったっていうイメージが良いかもしれないな。』
守はそう自分が知っている範囲での情報を教えてくれた。
『……パパっと説明すると白牙先輩はある能力を持った人間、
つまり能力者の一人だ。―――その一つが”危険指定能力”』
危険指定能力、これは制約や制限が少なくまた絶対能力に近い能力が区分されるらしい。
例えば対象物を煙に変えたり武器を次々と生み出したり……と様々な能力がこれに該当する。
そして守はそれをある人物に例を挙げて喋り出す。
まぁこの流れで行けば分かるのだろうけどその人物の名は―――
『―――森岡白牙、彼も危険指定能力を持つ能力者なんだ。
能力は【物質変化】……決められた決まりはあるらしいけど物質を変化させられる』
『一週間後、それまでにある程度は戦えるようになっておけよ?育斗……―――』
「―――ふぅ。あんなこと言われてもな……もう三日経ったんだもんな……」
三日、その間に起こったことそれは多くの人たちの噂の真偽確認と
その受け答え、激励を貰いそしてオリエンテーションだった。
……ああ、あとC先生の授業。まだ全然序盤だからなって言ってたっけ。
オリエンテーション……そのC先生の授業でここ狩人研修専門学校において
どのように単位を取ったりどのような授業を受けていくのか、
よく分からない単語とともにそれを受けて今に至る。
来週から本格的な授業が始まり学科に関してもよく分かるようになってくるだろう。
今日は木曜日……本当ドタバタした一週間だったな……って。
もう期限まで三日しかないのか。
「―――うーん……今は情報が欲しい、受け身になってちゃダメだよな。
それは分かってるんだけど……。やる気が出ない……」
ベッドの上で育斗は招待状を持ちながらその腕で灯りから逃げるように目を伏せる。
どうしてか眠りたかった。逃げたいのかもしれない。
どうしてこんなことになった?僕のせいか?
……その場しのぎのちっぽけな勇気がこの結果を生み出した。
僕は馬鹿だ。僕の怠慢が今僕の首を絞めている。
そのうち絞め殺すのだろうか?その前にまた僕は誰かを巻き込むのだろうか?
もう迷惑はかけたくない。できるのなら今すぐ消えてしまいたい。
僕は卑屈だな……でも事実だし変わらない現実だ。
理想なんかくそくらえだ。
「―――起きてるー?育斗?」
ドア越に唯がそう呟いた。
「!……ああ、うん。起きてるよ唯」
そう言ってベッドから起き上がって育斗はドアを引く。
するとそこにはTシャツにジーンズのハーフパンツを着た唯がその場に立っていた。
その姿に育斗は驚いて一瞬たじろくが唯の方は変わらず話を続ける。
育斗はそれに少し照れた表情で話に耳を傾けた。
「森岡先輩の件のことなんだけどさあれって観戦できるとかないのかなって思ったんだけど」
「へ、観戦?」
そう育斗はボケっとして答えると唯はうん、と呟いて続ける。
「ちょっと調べてたんだけどね?森岡先輩含め今までの先輩たちが
招待状を送ったことってやっぱり稀なんだけど、稀だからって言っても
結局はワンモアワン……勧誘とは変わらないわけでしょ?
だったらあるんじゃないかって思ったんだけど……」
「え、ああ……うん、それは良いんじゃないかな?
というかどうして観戦する必要が……」
すると唯は呆れたようにはぁと溜め息をついて育斗に真剣な眼差しを向ける。
「良い?戦闘面の技術っていうのは自分で鍛えるのも一つの手段だけど、
まず誰かの戦い方を見るのも重要なのよ?
じゃなきゃ蛍火くんみたいにアクロバティックに攻撃してホーミング攻撃するなんてないじゃない。」
「え、見てたの」
さらにポカンとする育斗に唯は頭を悩ませる。
どうして私だけこんなに真面目に悩んでいるのかという思いは仕舞いこみながら唯は話を再開した。
「蛍火くんは能力を持ち合わせていない。
でもその状況で育斗を圧倒してみせた……まぁ育斗はそもそも戦いの経験が少ないから
圧倒されるのかもしれないけど、それでも能力以外で属性の力でそれらすべてを補って戦っていた。
他の人たちだってそう。全員が全員戦うわけじゃないけどそれでも属性だけでもそれだけの力と技術がある。
ずっと持ってきた力だったならどういうことをすれば良いのか”自己流”があるのよ。
じゃあそこに能力を合わせたら?
属性は確かに攻撃方法も異なるかもしれないけどその属性が分かれば対処は簡単、
でも能力は非公開がほとんどだからどんな能力を持っているのかが分からない。
―――その状態で、その人の戦う姿を見て何も学べないって言いたいの?」
「そこまで言ってはいないけど……」
唯は正論を僕にぶつけた。
育斗は考える。
言われた通りだったためだ。
何も分かっていない状況で対策なんてしようもない。
だったらその対策を調べなくちゃいけない。
でも調べるとしたらどうすれば?本にでも載っているのか?
いいや、そんな出版なんて生徒だけで出来るわけないし、そもそも出す意味もない。
ならどうすれば……
「だーかーら!先輩に直接会いに行くのよ。
とは言っても聞くことがあるってだけどね。
あとはそこで聞きたいことがあるならそこで聞けばいいし。ね?」
唯の反論に育斗はハッとして耽っていた頭を元に戻して考える。
確かにそうなれば自ずと聞けることもあるし怪しまれることもない。
それに答えてくれなくても観戦できるかどうかは含まれていない。
……良いアイデアだ。
「ああ、良いね!
そうしよう。明日森岡先輩に会いに行ってみることにするよ。
唯も行く?」
「いいや私は桜ちゃんと一緒にいるよ。
そんな桜ちゃんは疲れて寝ているし、今言ったことをもう一度説明するのも手間がかかるしね。」
育斗はそっか、と少し残念そうに呟いて守にお願いしようと考えて
唯にありがとうと礼を言うと、唯は笑って大丈夫だよ!とまるで天使のような笑みで礼を受け取った。
後日。
育斗と守は第1教室へと足を進める。
中をのぞくと中には茶色に少し近い黒髪の男と世間話をする森岡白牙の姿があった。
見つけて声を掛けるよりも先に白牙は2人の存在に気付いて
黒髪の男に気さくに少し遅れると言って育斗のところに近づく。
「やぁ、考えてくれたかな?もう返事をするのには遅すぎるかもしれないけど……」
「単刀直入に聞きます。森岡先輩の戦い方……つまりどう戦うのか
そしてそれを躱す方法を教えてください―――むぐっ」
すると一緒にアイデアを発表するため来てもらった守も
またそのことに少し、いやかなり驚いて育斗の口を慌てて塞ぐ。
(は?お前馬鹿なの?
なんで倒そうとしてる人物に"倒せる弱点ってどこですか"って聞くんだよ。天然か?!)
守は怒り口調で育斗に耳打ちをするがそれにキョトンとした白牙は呟く。
「構わないが……話はそれだけか?」
対して
「良いんだ。」
そう守の心の声が漏れ出た。
そうしていると育斗が観戦のことについても白牙に対して呟いた。
それは今までやってきた戦いはすべて公開され観戦できるというもの。
だったら自分が所属するチームの人たちだけでも見れるようにできないかというものだった。
すると白牙はそれに答える。
「良い発想だな。
よし、認めよう。でも観戦するのはチームの人員のみだ。
そして別室が観戦場所としてマジックミラーで見れるようにしておこう。
ああ、あとさっき言っていた攻撃の回避方法のことだが別に拘らなくて良い。
誰かの真似をするというのは悪手だからそれもあまりやめた方が。
君の持てる力だけを振り絞って戦って見せれば良い。
たとえそれが傍から見ておかしげなものだったとしても、
俺は君が参加を表明するという意味でその質問をしてきたという仮定のもとに敬意を表そう。
……他に何かあるか?」
「あ、いや……大丈夫です。
ありがとうございました。」
すると白牙は笑みを浮かべて育斗に背を向ける。
守は背を向けて自分の席かは分からないが席に向かっていく白牙を横目に育斗になおり呟いた。
「本当に良かったのか?
あんまり大した情報もなかったけど……」
「……いや情報ならあったよ」
それに守はへ?とポカンとしていたが育斗だけは自身の左手のひらを
見てそれをしっかりと握って教室を守と共に跡にした。
「あ、そういや守……土日暇な時間ある?少しトレーニングに付き合ってほしいんだけど……」
次回、森岡白牙との戦いです。