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必滅少女伝  作者: 鈴神楽
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親友の為に掟を破る少年

今回から、白風の分家のお話し。初回は、長の仕事について

「前から疑問に思ってたんだけど、八刃の長って何をやっているんだ?」

 良美の質問に、小較も不思議な顔をする。

「そういえば、お父さんって家にあまり居ないけど、仕事は、大丈夫なの?」

 良美が半歩下がって怯えた様に言う。

「まさか、娘の稼ぎで暮らしているの?」

 ぬいぐるみを作っていた較が溜息混じりに答える。

「あのね、お父さんは、世界を回っている最中に、現地の特殊な武術等を取材して、それについての本を出版してるの。良美だって何冊か持ってるでしょ?」

 良美が思い出した様に手を叩く。

「そういえば、昔、サインしてもらったっけ」

 小較が呆れた顔をする。

「もうボケが始まったの?」

 良美がにらみ返す。

「うるさい!」

 較は、止めもせず、話しを続ける。

「基本的な生活費は、今までの本の印税で十分だし、バトルで稼いだ金が兆単位で残ってる。あちきと違って、投資までは、してないけど、国債や預金してるだけでも、年間で物凄い額になるんだよ。他にも白風家に限らず、八刃の本家や上位の分家は、あちき達が住む、竜夢区の土地を保有しているから、土地の借地料等でも儲けがある。ちなみに、ゼロさん達は、本島にある白風の土地の地主をやって生活費をだしてたりするよ」

 良美が少し驚いた顔をして言う。

「もしかして、白風家って物凄い金持ちなの?」

 較があっさり頷く。

「白風だけじゃないよ。事業をやってる萌野や間結も日本でも指折りの金持ち。霧流なんかも、異界に出稼ぎをメインでかなり設けてる、八子さんの趣味が無ければお金に困ることは、まずないよ」

「そういえば、谷走は、間結のサポートで共同経営者の場合が多いんだよね?」

 小較の言葉に較が頷く。

「そう、あそこは、表に出ることを嫌ってるからあまり目立った資産は、無いけど。神谷は、意外と裏やオカルト業界と繋がり深く、そっちでの儲けが大きいらしい。百母も本来は、そっち。次期長が宝石商をやるって言ってたけど、あそこは、八百刃様の御付が多かったから商売向きだとは、思えないね」

「遠糸は、いまは、事実上ないとして、分家は、どうなるの?」

 小較の質問に較が答える。

「基本的には、竜夢区に土地あるから、そっちの儲けと表向きの仕事の収益で暮らしてる。最初のヨシの質問に関わるんだけど、分家の中には、お金にならないけど、八刃として必要な仕事やる人がいるから、その人達の仕事の割り振りや若手の教育内容等を決めて、分家から集めたお金を割り振るのが長の仕事の一つ」

 良美が感嘆の声をあげる。

「やっぱり上納金ってあるのか!」

 較が嫌そうな顔をする。

「人聞きの悪い事言わないでよ。収めないと罰則があるとか無いんだから。出せる金額を納めて貰う形で、殆どが、さっき言った事に使われるんだから。だから、あちきも自分の起こした騒動を静めるのに掛かった費用は、自腹なんだからね」

 良美が頷く。

「確かに、山を消滅させた時に掛かった費用の請求書見た時のお前の顔は、凄かったな」

 較が遠い目をして言う。

「あの時は、占有していた会社の株を、その上層部に買い取って貰って、なんとかだったな」

 首を傾げる小較。

「ヤヤお姉ちゃんってどうしてそんなに株とか持ってるの?」

 較が視線を逸らすのに気付いて良美が追求する。

「大人しく答えたら?」

 較が諦めた表情で言う。

「バトルをやってた頃は、自暴自棄だったから、無謀な株式投資を結構やったの。何故か殆ど、大化けしちゃったけどね」

 良美が呆れた顔をして言う。

「どうせ、未来のことなんて指先ほども考えてなかったんでしょ」

 何もいえない顔になる較を見て、小較が良美に言う。

「良美は、明日の事も考えて無いけどね」

「なんだと!」

 再び睨み合う二人。

「とにかく、仕事の割り振りやお金の配分なんかは、ネット上から行っている。八刃の上層部会議なんかは、あちきが代行で出てるから、あちきは、嫌なんだけど、大丈夫。後の細かい実務的な作業は、分家頭筆頭の白水零子がやってくれてる」

 較が説明を続けていると携帯がなる。

「はい。タイムリーですね。丁度、零子さんが分家頭筆頭として、お父さんの仕事を手伝って下さっている事を話していたんですよ」

 その後、少し話した後、較が言う。

「ヨシ、ちょっと小較と留守番していてくれない? ちょっと雑用が入ったの」

「危険な事じゃないよね?」

 良美の言葉に較が頷く。

「うん。全く危険じゃないよ」



 そこに居たのは、禍々しい衣装を纏った集団であった。

 その集団は、邪悪な儀式を行っていた。

『今こそ、蘇れ、憎悪の王』

 何人もの死骸が並ぶ魔方陣。

 その中央に新たな少女が奉げられようとしていた。

「助けて!」

 必死に助けを求める少女、怪しい仮面を被った男達に押さえつけられた少年が必死に叫ぶ。

「止めろ!」

 中央に立つ神の仮面を被った司祭が言う。

「諦めろ、この娘の命は、偉大なる我等の神に奉げられるのだ!」

「それは、どうかな!」

 天を揺るがすような声と共に、怪しい仮面を被った男達を蹴散らし、抑えられている少年より小柄の少年が現れた。

「そこまでだ! こっから先は、俺が相手だ!」

 新しく現れた少年を見て、囚われていた少年が叫ぶ。

「ガイ! どうしてここに!」

 ガイと呼ばれた少年は、親指を立てて言う。

「親友のピンチを助けるなんて当然だろう、正一」

 正一と呼ばれた少年が複雑な顔をする。

「聞きたいのは、そういうことじゃないが、とにかく、桃宮(モモミヤ)さんを助けてくれ!」

「任せておけ!」

 ガイと呼ばれた少年は、魔方陣に送り込まれようとした桃宮と呼ばれた少女の所に向かう。

 司祭がガイと呼ばれた少年を杖で示し、命令を下す。

「その者の命を、我等の神に奉げよ!」

 一斉に動く怪しい仮面の男達。

 ガイと呼ばれた少年は、呪文を唱えながら指を擦る。

『白い風よ、我が炎を煽り、強き炎とかせ、白風炎(ハクフウエン)』

 ガイと呼ばれた少年の手からあがった火花が増幅し、周囲に居た男達を吹き飛ばす。

 司祭が驚く。

「まさか、こんな所に術者が来るとは。しかし、いくら術者といえ、単独で我等に勝てると思うな。我等の力を見せてやれ」

 司祭が左右に居た神官達に指示を出すと、神官達は、呪文を唱える。

『我が憎悪に答え、魔界の炎を与えたまえ。憎炎(ゾウエン)』

 暗い憎悪が篭った炎が一斉にガイと呼ばれた少年に襲い掛かる。

 しかし、少年は、炎を操りそれを弾き飛ばす。

「その程度の炎で俺を倒せると思うなよ!」

 言葉を無くす神官達。

 司祭が後退しながら言う。

「独りであれだけの術を弾き返すなど、お前は、本当に人間か?」

 ガイと呼ばれた少年は、不敵な笑みを浮かべて言う。

「言われ、慣れてるよ!」

 一気に桃宮と呼ばれた少女を確保すると、正一と呼んだ少年と一緒に一度、後退する。

「本当に助かった。しかし、お前、その力は何なんだ?」

 正一と呼ばれた少年の言葉にガイと呼ばれた少年が苦い笑みを浮かべる。

「すまないな、詳しくは、話せないんだ」

「邪魔をしてただで済むと思ってるのか?」

 司祭の言葉にガイと呼ばれた少年が拳を構えて答える。

「とことんやってやるぜ!」

 その時、少年たちの後方から、少年達より若い、少女の声がした。

「そこまでだよ、貴方、自分が八刃の一つ、白風の分家、白火(シラビ)の人間だって言って無いでしょう、白火凱(タノシ)」

 現れた少女を見て、言われた少年、ガイこと白火凱が呻く。

「どうして、本家の次期長がここに居るんだよ!」

 その少女、較が肩をすくめる。

「次期分家頭筆頭って言われている貴方が暴走してるから。白水の零子さんだと、余計な火種が出るからだよ」

 痛い所を突かれた顔をして凱が言う。

「見逃して貰うわけには、行かないか?」

 較が呆れた顔をして言う。

「駄目に決まってるでしょうが。とにかくそっちの人、八刃は、この世界の抗争に直接関わりません。少女は、うちの分家の人間の知り合いらしいので、引き取らせて貰いますが、儀式そのものを邪魔は、しません」

 凱が怒鳴る。

「馬鹿いうな! 目の前で人が生贄になってるんだぞ! 止めさせるのが当然だろうが!」

 較が頭をかきながら答える。

「正義の味方のつもり? もしそうなら、あちきを倒してからしてくれる。それだったら認めてあげるよ」

 淡々とした言葉だったが、凱は、冷や汗を垂らしながら一歩後退する。

「彼女は、何者なのだ?」

 正一と呼ばれた少年の質問に凱が答えに困っていると較があっさりばらす。

「彼は、八刃って特殊な組織に属する家の人間で、あちきは、その中でも偉い家の跡取り。かなり偉いんです。分家の彼は、あちきには、基本的には、逆らえないので戸惑っているんですよ。ついでに言うと、八刃は、こういうことに直接的に関与することは、許されていません。仕事として雇われるか、もしくは、直接被害がでた場合を除き、例え赤子殺しが行われていても、無視するのが決まりです」

 正一と呼ばれた少年が沈痛な表情で言う。

「お前も邪悪な組織の家の人間だったのか。大変だったな。だけど私は、お前自身は、信じるぞ」

 凱が叫ぶ。

「邪悪な組織って言うな! 一応、異界からくる化け物退治をやってるんだから、正義の味方だ!」

 較が鼻で笑う。

「所詮は、自分の身内が最優先の独善組織。正義の味方なんて上等な物じゃないよ」

 正一と呼ばれた少年にしがみついていた桃宮と呼ばれた少女が言う。

「小さいのに随分、冷めた子ですね」

「あれでも、十四歳だ。とにかく、俺は、目の前で大量の死人が出るのを見過ごせない。こいつ等の野望は、打ち破る。その為だったらあんたとも戦う」

 凱の言葉に較の雰囲気が一変する。

 先程までの落ち着いた雰囲気が無くなり、研ぎ澄まされた抜き身の刃のそれと変化した。

「覚悟は、良いの?」

 凱は、唾を飲み込みながらも駆け出す。

『白い風よ、我が炎を煽り、強き炎とかせ、白風炎』

 指を擦り、再び火花から炎を生み出して、較に襲い掛かる。

 正一と呼ばれた少年が慌てて声をかける。

「止めろ! そんな子供に危害を加えるなんて駄目だ!」

『ガルーダ』

 較の手の一振り、それだけで凱の炎が消える。

 顔が引きつる凱。

「どんな手品を使ったんだ? どう考えても、俺の炎の方が大量のエネルギーを保有していた筈だ」

 較は、右手を前に向けて指を二本、突き出す。

「簡単だよ、意志力で炎を増幅しているけど、元にした種火が消えれば全ての炎が消える。さっきの風で種火をピンポイントで消しただけ」

 凱は、額の汗を拭う。

「簡単に言いやがって、そんな神業じみた芸当が出来るのは、本家の人間くらいだ」

 較が肩をすくめながら言う。

「このくらいの事なら零子さんだって出来るよ。それより、最終通告。大人しく、友達を連れて退散する? そうすれば今回の件は、あちきが口をきいて、大事にならない様にしてあげるけど」

 凱が再び指を合わせ怒鳴る。

「俺にも意地があるんだ!」

『アポロンビーム』

 較の指から放たれた熱線は、凱の腕を貫くと、その後の連射で凱は、倒される。

「ガイ!」

 倒れた凱に近づく正一と呼ばれた少年達。

 較がゆっくり近づくと正一と呼ばれた少年は、凱を庇うように立ちふさがる。

「君達の組織の事は、解らないが、私の親友にこれ以上、手を出させないぞ!」

 較が雰囲気を元に戻して笑顔で言う。

「良い友達を持ってるね。あちきもこれ以上は、何もしない。ガイさんを連れて帰りましょ」

 較は、倒れた凱を肩に載せて、来た方向に戻ろうとした。

「無視するのもいい加減にしろ! このまま帰れると思っているのか!」

 較は、振り返ると頭を下げる。

「今回は、うちの分家の人間がご迷惑をおかけしました。先程言ったように、この子達は、引き取らせてもらいますが、儀式には、影響は殆どない筈です。今回の事に対するお詫びは、後ほど正式に行わせて貰います」

 意外な低姿勢に戸惑いながらも司祭が言う。

「我々がそれを受け入れないといけない理由が何処にある! お前も神の生贄になれ!」

 今にも攻撃命令を出そうとした時、魔方陣が輝き、その中央から黒いオーラに包まれた鬼が現れる。

『我が憎悪を導くものは、お前等か?』

 司祭が振り返り歓喜の表情を浮かべる。

「我等の神が蘇ったぞ!」

 周りの信者達も歓声を上げる。

 しかし、憎悪の王と呼ばれる鬼は、冷酷に告げる。

『汝等の憎悪も我が一部とし、我が憎悪を晴らす礎となれ!』

「それは、どういうことでしょうか?」

 司祭の困惑とした状態での質問に対する答えは、態度で示された。

 魔方陣の周囲に居た術者達が憎悪の王に生きたまま食われた。

 慌てる司祭。

「お待ちください、生贄でしたら、用意します。ですから我等が信者には、手を出さないで下さい!」

 憎悪の王が笑みを浮かべて言う。

『なぜ我が、下位世界の人間の都合を考えないといけないのだ? 我が思うままに憎悪を喰らい。我が憎悪を晴らす気晴らしとして、この世界を滅ぼすまでよ』

「そんな……」

 司祭が膝を着く。

 較は、凱を正一と呼ばれた少年に渡す。

「ちょっと、あいつを始末してくるから、待っててね」

 正一と呼ばれた少年は、慌てて制止する。

「君が強いのは、解るが、あんな化け物に敵う訳無い。止めるのだ!」

 較が笑顔で答える。

「人の力を超越し、人の意思を無視する化け物、俗に神や悪魔って呼ばれる存在に抗う為、人である事を止めた者達。それが、八刃なんだよ」

 較が憎悪の王の前に立つ。

『お前の憎悪を奉げよ』

 較が余裕たっぷりな顔をして答える。

「そんな自分の弱点をばらして良いの? 詰り、貴方は、ここに居るだけの力も、殆ど無い。あいつらが言う生贄を待つ事すら出来ないほど切羽詰ってるって事でしょ?」

 憎悪の王の視線が鋭くなる。

『だとしたらどうすると言うのだ! お前等には、我が憎悪の薪になる事しか出来ぬ!』

 憎悪の王の拳が較に迫る。

『ドラゴンスケル』

 較は、憎悪の王の拳を受け流して、地面の魔方陣にぶつける。

 魔方陣とぶつかった拳は、軽い火花があがるが、それだけだった。

『避け続けられると思うな!』

 憎悪の王は、連続して拳を放つが較は、ドラゴンスケルであっさり受け流していく。

『馬鹿な……、下位の世界の虫けらが我が攻撃を避け続けることなど、出来る筈がない!』

 憎悪の王は、焦り、攻撃が雑になり、較が受け流す前から外れる攻撃まで出てきた。

『これで終わりだ!』

 憎悪の王が渾身の力を籠めて、手を組んだ状態から振り下ろし攻撃、避ける以外の回避方法が無いと思われたそれに、較は、横に飛びのくと思わせて前転する。

『バハムートテール』

 較のかかと蹴りが憎悪の王の拳の方向を変えて、バランスを崩させる。

 較は、その隙を見逃さないで、憎悪の王の腕を駆け上り、顔面の前で飛び上がり、急降下蹴りを食らわす。

『バハムートクラッシュホーン』

『馬鹿な!』

 全身が砕けていく憎悪の王。

 それを見ていた司祭が震えながら較を見る。

「お前は、神を殺すと言うのか?」

 較が淡々と答える。

「異邪は、八刃によって滅ぼされる。覚えておいて下さい」

 そして、較は、正一と呼ばれた少年から凱を引き取ると、その場を後にする。



 帰り道、怯えた桃宮と呼ばれた少女、凱のクラスメイトの桃宮祥子(ショウコ)を背に庇いながら正一と呼ばれた少年、凱のクラスメイトで親友、紅(クレナイ)正一が言う。

「あんな化け物を倒すなんて、とんでもない力を持っているのですね」

 苦笑する較。

「別に倒して無いよ」

 驚いた顔をする正一。

「どういうことですか? 確かにあの化け物は、崩れていったでは、ありませんか?」

 較が祥子を指さしながら言う。

「元々生贄不足で、長時間こっちの世界に居られない状態だったの。だから、挑発して無駄に力を使わせただけ。最後の蹴りは、軽くはたかれた程度しか効いてないはずだよ。簡単に言えば、平均台の上でバランスを崩した所に頭をはたかれて、落ちたって所。こっちの世界に居られなくなったから元の世界に戻っただけだよ」

 正一が言う。

「ハッタリですか?」

 大きく頷く較。

「こっちの世界では、ハッタリと約束事が大切なんだよ。ガイさん」

「気付いてたんだったら、降ろせよ」

 凱の言葉に較が笑顔で答える。

「まだ歩くのは、辛いでしょ? 運んであげる」

 苦々しい顔をしながら凱が言う。

「最初から、あの化け物を送り返すつもりだったろ」

 較が笑みを浮かべて答える。

「勘ぐり過ぎ。あそこで召喚されたのは、偶然。まー、あのまま儀式続けていても、邪魔は、入ったのも確かだけどね」

 凱が眉をひそめていると正一が答える。

「まさかと思うが、警察に連絡しておいたのか?」

 凱が叫ぶ。

「対抗組織に儀式の情報を流しやがったな! それこそ制約違反の干渉じゃないか!」

 較が視線を合わせないように言う。

「嫌だな、証拠がない事を言わないで欲しい。あちきは、ただ、分家の人間が邪教の召喚儀式邪魔してるのを止めに、いきなり行かされることに対する愚痴を知り合いに漏らしただけだよ。ちゃんと、ここだけの話で、黙っててとお願いしておいたんだから」

 正一が呆れた顔をする。

「完全な確信犯ですね」

 不満気な顔をする凱に較が言う。

「あちきに逆らったんだから、次期分家頭筆頭の地位の剥奪は、覚悟してね」

 凱が躊躇無い声で言う。

「覚悟の上だ」

 正一がすまなそうな顔をして言う。

「詳しい事情は、解らないが、お前の立場を悪くした様だな。偽証が必要ならするぞ」

 凱が首を横に振る。

「必要ない。親友一人助けられないで、何が分家頭筆頭だ」

 較も頷く。

「そうだね、親友助けるのに、一々自分の立場を危うくする奴には、無理だね。あちきみたいに上手く立ち回らないと」

「月一で、人工衛星から確認できるトラブルを起こせる奴には、言われたくない!」

 凱の力の限りの叫びが夜空に響くのであった。

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