集気の朱雀、そして黄龍
朱雀がでて、最後に黄龍との対決。久々にホワイトファングの出番です
『相手は、上海に拠点を持つ、応龍家の人間の仕業だと解った』(広東語)
麒の言葉に、較が答える。
「確か、中国に四霊と呼ばれる、式を生み出す名家があった筈。他の霊獣、麒麟や霊亀は、鳳凰家に吸収されて、残っていた応龍家が、黄龍事件以来、攻勢に出ていると聞いていますが」
麒が答える。
『奴等としては、黄龍の滅殺を見逃すわけには、いかないから、今回の暴挙出たのだろう』(広東語)
「それじゃあ、日本で件を襲った黒服の奴等もそいつ等の手先だった訳だね」
良美の言葉に麒が言う。
『日本でも、出ておったのか?』
較が、頭を掻き言う。
「とにかく、今は、一刻も早く、麟さんを助け出すのが優先ですね」
その時、件が駆け込んでくる。
「朱雀の反応が出ました。多分、麟が、操られて、降臨させたのでは?」
それに、麒が舌打ちをする。
『早く、回収しなければいけないな』(広東語)
較が手をあげる。
「朱雀の相手は、あちきがします。それでしたら麟さんの確保は、容易になるでしょう」
『それは、八刃が禁じている、抗争に対する干渉行為に当ると思うが?』(広東語)
麒の言葉に較が笑顔で答える。
「あちきは、あくまで朱雀の相手をするだけです」
麒が攻めるような視線を向ける。
『子供の言い逃れだな』(広東語)
あっさり頷く較。
「はい。あちきは、子供ですから」
少し呆れた顔をして麒が言う。
『朱雀が降臨した以上、一刻を争う。好きにしろ』(広東語)
較が頷き、部屋を出た所で、地龍に言う。
「どう考えても、もう一波乱ありそうだから、ここで待機していて下さい」
地龍が頷く。
「最悪は、この館は、諦めて良いな」
較が頷き朱雀の気を追いかける。
その横につきながら、良美が言う。
「意味が解らないんだけど、何が起こるの?」
較が簡単に答える。
「この場合、麟さんの誘拐は、陽動で、黄龍の確保を目的としてる可能性があるの。もしそうだったら、地龍さんにここの警護を頼むしかないけど、単独では、無理な可能性もあるの。最悪の場合、この館から全員を脱出させる事になるかも知れないって事。地龍さんだったら、その位の時間稼ぎくらいは、可能だよ」
何気ない顔で良美が言う。
「ヤヤが予測する最悪って、たいてい、実現するか、それより悪い状況になるよね」
疲れた顔をして較が良美を抱き上げる。
「更に悪くならないように、少し急ぐよ」
加速する較であった。
『貴女を倒す!』(広東語)
虚ろな目で宣言する麟に大きく溜息を吐く較。
麟の周りに居た、男達の一人の顔には、見覚えがあった。
『やっぱり、あの時の連中だね、それでどうするつもり、擬似四聖獣一体では、あちきに勝てないよ』(上海語)
黒服の中から人民服を着た男が出てきて言う。
『それは、どうですかな? この朱雀は、周囲の気を無制限に収束する。収束を開始してから、大分経ちます。これを防ぐ手段は、ありません。鳳凰家諸共、地上から消えて貰いましょう』(上海語)
上空に飛ぶ朱雀の前には、もし放たれれば、地形すら変えてしまいかねない力が集まっていた。
較が良美の方を向く。
「あれやるけど、良い?」
良美が敵に拳を突きつけて言う。
「借り物の力で偉そうな顔をしてる奴等なんて、ぶっ飛ばしちゃえ!」
較が右手を朱雀の方に向けるのを見て、人民服の男、応龍術者が言う。
『無理です、貴女の噂は、聞いていますが、どれほど凄かろうと、個人の力で、あそこまで収束された自然の力に抗う事は、出来ません』(上海語)
『ホワイトファング』
較の右手から放たれた白い光は、一瞬の抵抗すら許さずに朱雀を、収束した莫大なエネルギーを消滅させた。
言葉を無くす、応龍家の人間。
そこに鳳凰家の人間がやってきて、麟の確保と、応龍家の人間の捕縛を行う。
そして較が、応龍術者に近寄って言う。
『それで内通者は、誰?』(上海語)
その言葉に応龍術者が素知らぬ顔で答える。
『何の事か、解らないな』(上海語)
較はまだ白い残光が残る右手を応龍術者に近づけて言う。
『嘘か本当か、脈を診て判断しよう』(上海語)
慌てる、応龍術者。
『その手で触らないでくれ、嘘を吐いていない!』(上海語)
較は、笑顔で言う。
『安心して、ちゃんと制御されてる時は、残光に触れても影響ないよ。さっき撃ったばかりだから、少しだけ制御が不安定だけど、多分大丈夫』(上海語)
較が腕を掴もうとした所で、応龍術者が泣き叫ぶ。
『鳳凰件だ! そこに居る巫女の双子の姉が、話を持ちかけて来たのだ! 鳳凰家で黄龍滅殺を行う予定で、その時に、八刃を関らせるから、そちらに集中している隙に、朱雀を奪えと、言ってきたのだ』(上海語)
どよめく、鳳凰家の人間。
較は、ホワイトファングの影響で息絶え絶えの良美を背負い言う。
「少し、急ぐけど我慢してね」
良美が頷く。
「了解。でも、どういうこと?」
較が駆け出しながら言う。
「全ては、黄龍を手に入れる為の伏線だよ。早く戻って、件の確保に向かわないと」
その時、天に達する金色の龍が現れた。
「一歩、出遅れた」
更に加速する較であった。
較達が黄龍の下についた時、地龍が人間の身で、黄龍の動きを制するという、出鱈目な事をしていた。
「流石の一言だね。力を正面からうけないで、相手の力、地形、諸々を考慮に入れて、動きを制限して、避難の時間を稼いでる」
較の言葉に、麒が現れて言う。
『だが、屋敷は、お終いだ』(広東語)
「それは、諦めてください。そっちの暴走なんですから」
較の言葉に、忌々しげに麒が言う。
『あの出来損ないが、妹以下の才能しかないのに、分相応な野望を抱きおって』(広東語)
較は、この時点で、麒を相手にするのを止めた。
「件さん、答え合わせしませんか?」
黄龍の頭の上に乗った件が言う。
「良いですね。どこまで解っているのですか?」
較が普通に答える。
「黄龍が暴走した原因が、実は、過剰に溜まったこの土地にエネルギーで、四聖獣を使ってガス抜きしてやれば、貴女や麟さんならば制御出来るようになる。その為の相手として、あちきを呼び。更にあちきの切り札、ホワイトファングを使わせる為に、応龍を利用したって所ですかね?」
驚いた顔をして拍手をする件。
「お見事です。殆ど正解です。捕捉するなら、応龍には、日本で貴方達を釣る為の餌になってもらう筈でした。まさか、麟が態々日本に来るなんて思いもしませんでした。そのお蔭で、玄武の力を消費出来ましたがね。理由は、解りますか?」
較が軽く答える。
「多分、名前ですか? 占いで付けられた名前が、自分が日本の逸話なのに対して、妹が高位霊獣だった。そして、名前が示すように、妹さんは、高い才能を示した。そんな物を撥ね退けるだけの何か、それが黄龍だったって事ですか?」
笑顔で件が答える。
「今度も正解。あなた達に、理解できますか? 姉の私より、妹の方が良い名前をつけられるのか? それも私達は、双子、ほんの少しの差があるだけなのに。納得できますか?」
肩を竦めて較が言う。
「解らない。自分を他人と比較して、上か下かなんて考えるのは、あちきには、意味無い事だから。あちきにとって大切なのは、自分に、自分が護りたい者を護れる力があるかどうかだもん」
苦笑する件。
「本当にシンプルですね。私は、認めて貰いたかったのです。そして、その力を得ました。もう誰も止められない。最強の式、黄龍を手に入れた私は、無敵です」
今度は、較が苦笑する。
「件さん、貴女は、大きな勘違いをしているよ」
首を傾げる件。
「なんですか?」
較が良美を麒に預けて、前に出る。
「切り札を最初から使うつもりの人間なんて居ないって事ですよ。あちきは、元からホワイトファング無しで、黄龍を滅殺するつもりでしたよ」
頬を引き攣らせる件。
「冗談は、止めて下さい! あの神の呪いの力抜きで、鳳凰家数千年の知識と百を越す術者の集大成である、黄龍が倒せる筈は、ありません!」
較が肩を竦めて言う。
「事前に切り札を使わないと行けないような状態が想定されるんだったら、切り札を使わなくても済む戦力を用意するのが普通ですよ。地龍さん、作戦通りにお願いします」
地龍の動きが変わる。
今までの受け流し主体から、受け流しからの攻撃に変わる。
地龍の拳が当り、その直後に、較の攻撃が来る。
『オーディーンランス』
突き刺すような両足蹴りが、黄龍の体をえぐる。
件の顔が青褪めた。
「青龍と同じ、術を完全に撥ね返す鱗で全身が覆われているのですよ。何故、白風の技が通用するのですか!」
黄龍の攻撃を受け流し、地龍の蹴りが入り、直後に較の回し蹴りが来る。
『トールサークル』
雷撃が、黄龍を蹂躙する。
着地した後、較が答える。
「地龍さんは、殆どの術を無効化にする技を持っています。その力で、鱗の能力を潰してる間に、あちきの撃術を決める。白虎の気を操る技は、白虎の時に見せたように、攻撃の瞬間を狙えば防御に使えない。ついでに言えば、朱雀の周囲の気を集める力で、十分な力を集める時間なんてあちきは、あげない」
次々と地龍と較の連携攻撃が決まり、黄龍は、全身に傷を負って行く。
そんな中でも件が諦めず叫ぶ。
「まだです、玄武の再生能力があります! 幾らダメージを与えた所で、瞬時に回復します!」
しかし、黄龍の回復は、始まらない内に、地龍が、黄龍の体を駆け上り、その頭に攻撃を入れて、同時に件を抱き上げて、飛び降りる。
そこに、右手を高らかに上げた較が来る。
「これでお終い!」
『ホワイトバハムートブレス』
較の右手に残った白い残光と一緒に放たれた気の衝撃波は、黄龍の頭を粉砕し、黄龍を滅殺した。
地面に着地した較に、件が詰め寄る。
「どうしてですか? どうして、再生が始まらないのですか?」
較は、自分が来た方を指差して言う。
「大規模な儀式魔法は、地形に影響を受ける。だから、逆に地形を変えてあげれば、既に発動済みの黄龍自身に関する能力は、奪えなくても、大地の力から新たな黄龍を生み出すことは、出来なくなるんだよ」
較の指差した先では、朱雀の後ろにあった為、歪な形になった山が存在していた。
青褪める鳳凰家の人々。
麒が駆け寄ってきて言う。
『どうしてくれる! これでは、我々の今まで培って来た技術の大半が失われてしまう!』(広東語)
それに対して、較は責任逃れをしようと視線を彷徨わせていると、件と視線が合う。
「もしかして、今は、儀式に組み込まれていない山の夢とか見てない。それも何かの儀式の様子と一緒に?」
件が驚いた顔をして頷く。
「そういう夢は、見たことありますが、それが何だと言うのですか?」
納得した顔をする較。
「だから件って、クダンって名前なんだよ。日本の逸話の件は、問題の予言をする雄とそれを解決する方法を予言する雌が居るの。女性の件だから、多分、鳳凰家のトラブルを解決する方法を予言する件の能力を持っているんだよ」
意外な言葉に、驚く件。
「まさか、私の名前に、そんな意味があるなんて」
『それが本当か、確認せんとならんぞ。早く夢の話を詳しく思い出せ』(広東語)
麒の言葉に、筆記者の前で、夢の話をする件であった。
「結局、件さんは、お咎めなしになったの?」
帰りの飛行機の中での良美の質問に較が答える。
「一応罰として、家から出る事を禁じられてるけど、予知能力の流出を恐れた事でしょうから、そうそう酷い目には、なってない筈だよ。大体、今回の一件も、鳳凰家として、黄龍を退治する一番の方法として夢を見てたのを、自分の意思と勘違いしてたんじゃないのかな?」
良美が納得できない顔をして言う。
「でも、あたしは、件が麟の事を心配してたのは、本当だと思ったんだけどな?」
較も頷く。
「それは、正解だと思う。元々、日本に呼ぶつもりも無かった上、一番危険な黄龍の降臨の場所から麟さんを遠ざけていた。口では、なんだかんだ言っても大切にしてたんだと思うよ」
良美も頷くのであった。




