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必滅少女伝  作者: 鈴神楽
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さらわれた少女

智代編パート二。処により八百刃と良美の我侭あり

 放課後の教室で、智代がトラブルの原因の指輪を見る。

「神器かー」

 そこに智代のクラスメイト、大門良美がやってくる。

「神器がどうかしたの?」

 智代が小さく溜息を吐きながら言う。

「良美は、神器なんか信じる?」

 すると良美は、胸を張って言う。

「あたしも持ってるもん」

 そういって、鞄の中から卵型したアイテムを取り出す。

「神器、スクランブルエッグ」

 智代は、それを手に取り、色々触って言う。

「玩具みたいだね? どうやって手に入れたの?」

「あれは、ちょっと前の頃の話でね」

 良美が事情を話し始める。



 回想開始。



 何時もの様に、平然と何もせずにご飯を食べている良美の後ろから、何故か毎週の様に来ている、八百刃が言う。

「おはよう、今日のご飯は、何?」

 良美も慣れた様子で、フォークでスクランブルエッグを指して言う。

「おはよう。今日は、トーストにスクランブルエッグ。甘いぞ」

 垂れた涎を拭い、八百刃が大声を出す。

「ヤヤちゃん、あちきにも同じのをお願いね!」

 そこに、ベーコンエッグを持ってきた較が済まなそうに言う。

「すいません。卵は、もうきらしていて、作れないんです。このベーコンエッグを食べますか?」

 八百刃は、スクランブルエッグとベーコンエッグを見比べて言う。

「あちきは、スクランブルエッグが良いの!」

 駄々をこね始めた八百刃に、ヤヤが溜息を吐いて良美に言う。

「そういうことだから、取り替えてくれない?」

 嫌そうな顔をする良美。

「今日は、スクランブルエッグって態々リクエストしたのに?」

 実は、ヤヤが事前にベーコンエッグを作っていたのを、良美の我侭で、後からスクランブルエッグを作ったのである。

 そこに八百刃が割り込んでくる。

「だったら、スクランブルエッグを譲ってくれたら神器作ってあげるよ」

「強いの?」

 良美の問いに八百刃が頷く。

「そこら辺の神様だって斬れる奴」

「ちょっとまって下さい。そんな危険な物を良美に渡さないで下さい」

 必死に止めるヤヤだったが、良美がスクランブルエッグを渡して言う。

「そういう事でよろしく」

 八百刃は、嬉しそうにスクランブルエッグを食べながら頷く。

「了解」

 ヤヤが大きく溜息を吐くのであった。


 回想終了。



「それで貰ったのが、その神器、スクランブルエッグ」

 良美の言葉に智代が断言する。

「絶対パチモンだよ。だいたい、何処の世界に卵料理を食べたくて、駄々をこねる神様がいるの」

 良美が遠い目をして言う。

「薬を使って幼女と無理やり和姦する神様もいるって聞いたことあるよ」

「それって強姦だから」

 智代が大きく溜息を吐く。

 そこにクラス委員長の鈴木優子が来る。

「大門さん、まだ教室に居たの。白風さんと外の掃除当番でしょ」

 良美が手を叩く。

「そうだった。それじゃあまた明日」

 鞄を持って行ってしまう良美。

「また明日ね!」

 智代は、見送った後、手にスクランブルエッグが残っている事に気付く。

「まあ、明日返せば良いか」

 そう言って、ポケットにしまい、達樹から貰った名刺に書かれた場所に向かうのであった。



「意外と早かったな」

 駅の改札を出るなり現れる達樹。

「なんで、こんな所で待っていたの?」

 驚く智代に達樹が面倒そうに言う。

「本当だったら、学校まで迎えに行きたかったくらいだが、竜夢区には、入れない。万が一にも入れ違いになっても困るからここで待ってた」

「別の場所に誘導しようとしてない?」

 疑る智代に、達樹が首を振る。

「お前が先行して行け」

 智代が頷き、歩き出す。



 裏通りに入り、人気が無くなったところで達樹が言う。

「ここまでくれば、もう大丈夫だろう」

 その瞬間、達樹の足に鎖が突き刺さる。

「大丈夫!」

 智代が駆け寄ろうとするが、達樹が怒鳴る。

「急いで事務所に向かえ!」

 しかし、智代の後ろには、昨日の、クライシスコーラーの女が立っていた。

 智代が振り返った瞬間、その額に針を突き刺す女。

「油断したわね」

 達樹が、最後の力を振り絞り、音切を抜く。

「その力を解放しろ、音切オトギリ

 だが、その前にクライシスコーラーの鎖使い、蛇鎖が現れて、その鎖で音切の攻撃を防ぐ。

「お前の相手は、俺だ」

 その間に、女が言う。

「さあ、導いて、私達が求める魔神の封印の在り処に」

 虚ろな目をした智代は、一枚の写真を見せられると、導きの指輪をした指で方向を示す。

 女は、笑みを浮かべて、智代が指差す方向に移動を開始する。

「待て!」

 傷ついた足で駆け寄ろうとする達樹だったが、その足に再び、鎖が突き刺さる。

「俺の神器、蛇鎖の味は、どうだ? ゆっくり遊んでやりたいが、時間も無いから今回は、ここまでだ。追って来い。次は、ゆっくり相手してやるよ」

 そして、倒れる達樹の目の前で、智代は連れ去られるのであった。

「智代!」

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