第4話 説教おじさん、番人おじさんに処される
異世界四日目。
私は、重大なことに気づいてしまった。
この店、ルールがない。
いや、酒場にルールなんてあるの?と言われたら、まあ確かに知らない。異世界の酒場なんて知らん。前世でもファンタジー酒場に出勤したことはない。
でも、ルールがないにも限度があるだろ!
床はベタベタだし。客は勝手に席に座る。ボルザさんは毎日いる。薄いエール一杯で粘るし、見守り席とかいう謎の役職を与えたら、本人の中で何かが始まってしまった。
怖い。
私が軽い気持ちで配置したおじさんが、勝手に物語を始めている。
「ミリア、これ、どこ?」
リリが木札を持って、こてんと首を傾げた。
耳も一緒に傾いた。
はい、かわいい。
この子、絶対に耳で接客した方がいいよ。本人は無表情なのに耳が全部言っちゃってる。前世だったら「感情だだ漏れ獣人キャバ嬢」とかで一部のおじさんに刺さりすぎて大変なことになっていたと思う。
いや、待て。
刺さりすぎるのは危ない。
ガチ恋製造機の可能性があるな。
私が保護しよう。
「それは中央席の札。銀貨以上使いそうなお客さんが来たら置いて」
「銀貨以上」
「そう。三人組とか、服が綺麗な人とか、靴がちゃんとしてる人とか」
「靴?」
「靴は大事。靴が汚い金持ちもいるけど、靴が綺麗な貧乏人は少ない」
「難しいよ」
「大丈夫。私も昨日までこの世界の通貨すら知らなかったから」
「それは大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないね」
普通に大丈夫じゃない。
転生四日目で何を偉そうに席配置を語っているんだ私は。
でも、やるしかない。
この店は放っておいたら死ぬ。
床のベタつきと一緒に沈んでいく。
ついでにリリの目も死ぬ。
それはだめ。
リリの耳は守らなければならない。
「リリ、昨日の鉱夫っぽい人に腕つかまれてたよね」
そう言った瞬間、リリの耳がぴたっと止まった。
わかりやすい。
耳、正直すぎ。
「……うん」
「嫌だった?」
「少し」
「少しじゃない耳してるよ」
「耳……」
「めちゃくちゃ伏せてる」
リリは自分の耳を触った。
今さら隠しても遅い。全部出てた。感情が無料公開されてた。
「でも、お客さんだから」
出た。
お客さんだから。
はい出ました。
前世でも何回聞いたかわからない呪文。
お客さんだから我慢して。
お客さんだから少しくらい流して。
お客さんだから、なんだよ!
神か?違うだろ。
神ならもっと金を落とせ。賽銭箱に銅貨一枚で四時間居座る神がいてたまるか。
「リリ、触ってくる客は客じゃないから」
「客じゃない?」
「そう。妖怪」
「ようかい」
「避けていい。避けられなかったら人を呼んでいい。嫌なら嫌って言っていい。怒らせてもいい」
「怒らせても、いいの?」
「いい。怒らせちゃいけない客もいるけど、怒らせていい客もいる」
「見分け方は?」
「注文してるかどうか」
「そこ?」
「まずそこ」
注文していない客は弱い。
少なくとも店側から見たら弱い。
いや、声はでかい。態度もでかい。なぜか椅子にも深く座る。でも会計が発生していない時点で、商売としては存在が薄い。
薄い。
ボルザさんのエールくらい薄い。
「ミリア、聞こえてるぞ」
入口横の見守り席から、ボルザさんが低い声を出した。
今日もいる。
当然のようにいる。
出勤簿つけた方がいいんじゃない?
「聞こえるように言ってますんで」
「俺のエールは薄くない」
「じゃあ濃いですか?」
「……飲みやすい」
「ほぼ自白ですよ」
ボルザさんはむっとしながら、薄いエールを飲んだ。
薄いエールを飲む姿だけは堂々としている。
人間、堂々としていれば薄いエールでも威厳が出るんだな。出てないか。出てないな。
「ボルザさん」
「なんだ」
「今日から見守り席の仕事を追加します」
「仕事?」
ボルザさんの目が光った。
やめろ。
そんな嬉しそうな顔をするな。
役職を与えると伸びるタイプのおじさん、本当に怖い。給料は発生しないのに責任感だけ勝手に育つんだもん。
「女の子に変なことする客がいたら止めてください」
「変なこととは?」
「触る。怒鳴る。説教する。金を払わずに長時間語るなどですかね。」
「ふん。許せんな」
どの口が言うんだ。
最後のやつ、お前だぞ。
金を払わずに長時間語るの、銀の鹿亭代表選手じゃん。
私は頭上を見た。
【名前:ボルザ】
【職業:銀の鹿亭の番人(自称)】
【防衛本能:発生】
【役職意識:上昇中】
【本日の売上予定:銅貨一枚】
【自分の昔話は例外だと思っている度:SS】
やっぱり。
自分だけ治外法権だと思ってる。
「ボルザさんの昔話も長いですからね」
「俺のは店の歴史だ」
「酒場で世界史の授業始めないでください」
「八年だぞ」
「八年を教科書にするな」
リリが小さく笑った。
お。
笑った。
いいね。
リリが笑うと、この店の空気がちょっとだけマシになる。床はベタついているけど、空気はマシになる。床も頑張れ。
そんなことをしていたら、入口のドアが開いた。
昼過ぎ。
普通の人なら働いている時間。
つまり、この時間に酒場へ来る男は、だいたい何かをこじらせている。
「ここが銀の鹿亭か」
入ってきたのは、妙に背筋の伸びた中年男だった。
髪は後ろに撫でつけている。
口ひげ。
古いけど小綺麗な服。
手には杖。
杖。
魔法使いの杖ではない。
説教の途中で床をコツコツするための杖である。
見た瞬間にわかる。
これは面倒くさい。
まだ一言しか喋ってないのに、もう帰ってほしい。
私は頭上を見た。
【名前:モーガン】
【職業:元礼法講師】
【財布残量:銀貨一枚】
【説教欲:SS】
【支払い意欲:D】
【本日の目的:若い娘に物申す】
【口癖:昔はこうではなかった】
【注文予定:水】
【クソ客度:A】
水。
水!?
水で物申す気か!?
井戸か川行けよ。ここは一応店なんだヮ。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「見ればわかるだろう」
うわ。
初手から減点方式。
質問に答えたら死ぬ呪いでもかかってるのかってくらい、まず一回否定する人。
「では、こちらのお席へどうぞ」
私はカウンター寄りの席を示した。
中央席はダメ。
説教欲SSを中央に置いたら、店の中心に毒沼ができる。新規客が全員スリップダメージを受ける。
「なぜそこだ。あちらが空いている」
「中央席は団体様用なんです」
「客を見て席を選ぶのか?」
「はい」
「堂々と言うな」
言うわ。
昨日、客単価を学んだばかりの女をなめるな。
こっちは鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の階段を知ったんだ。水予定の説教おじさんを中央に置くほど、もう初心者じゃない。
モーガンは眉を寄せた。
【説教開始まで:残り十秒】
来る。
嫌なカウントダウン来た。
「最近の若い娘は、客の扱いというものを知らんようだな」
【説教開始まで:残り五秒】
早い早い早い。
秒で開講するな。
「おい新入り、お前、接客のいろはってやつをだな……」
はい始まりました。
モーガン先生の無料講座。
受講料プライスレス。
拘束時間不明。
退室不可。
内容はだいたい昔話。
地獄か?
いや、一回死んでるから地獄の可能性も出てきてるな。
「まず客というものは、店に入った時点で敬われるべき存在であってだな」
「なるほど」
「目上の者に対する態度、声の出し方、立ち居振る舞い。そういうものがなっておらん」
「はい」
「そもそも酒場の娘というものは、男を立てることを知らねばならん」
「そうなんですね」
「返事が軽い!」
「重めにします?」
「そういうことではない!」
めんどくさ。
軽いって言うから重くしようとしたのに。
じゃあ何グラムが正解なんだよ。返事の重量指定してくれよな。
モーガンの頭上を見る。
【説教欲:SS → SSS】
【本人満足度:上昇】
【支払い意欲:D → E】
【注文予定:水 → 水も迷い中】
水も迷うな。
飲め。
いや、飲まなくていい。帰れ。
「おじさん」
私はカウンター奥の店主を見た。
おじさんは、目をそらした。
おい。
今そらしたな?
銀貨七枚の時はあんなに目を輝かせてたのに、説教おじさんには目をそらすんかい。
「おじさん?」
「……うむ」
「うむじゃないです」
「いや、あの客はな、昔は王都で礼法を教えていたとかで」
「それで?」
「ちょっと面倒なんだ」
「見ればわかります!」
見ればわかるどころか、頭上に全部出ている。
便利。
そして腹立つ。
そのとき、モーガンの視線がリリに向いた。
あ。
やめろ。
そこ行くな。
「そこの獣人の娘」
「……はい」
リリの耳が伏せた。
「客の前で耳を伏せるとは何事だ。接客の場に出るなら、そういう獣じみた癖も抑えねばならん」
店内の空気が、ぴきっと鳴った気がした。
いや、鳴ったのは私の中の何かかもしれない。
獣じみた?
癖?
抑えろ?
はい。
アウト。
今、心の中で椅子を投げました。
ついでにテーブルも投げました。床がベタついているので滑って当たりませんでした。床、ここで邪魔するな。
「リリは関係ないですよ」
「関係ある。店に立つ者は客に不快感を与えぬよう努力するべきだ」
「不快感なら今そっちから大量に出てますけど」
「なんだと?」
「ご注文は?」
「私は今、話をしている」
「ご注文は?」
「だから接客の」
「ご注文は?」
「お前、客に向かって!」
「ご注文は?」
モーガンの顔が赤くなった。
【怒り:上昇】
【説教欲:爆発寸前】
【クソ客度:A → S】
【注文予定:水 → 消滅】
おわー、進化した。
クソ客が進化した。
Bボタン連打したい。
「客にその態度はなんだ!」
モーガンが杖を床に打ちつけた。
ガンッ。
リリの耳がびくっと震える。
私は笑顔のまま一歩前に出た。
正直、少し困った。
私は口は悪い。心の中もまあまあ悪い。前世で客の話を聞きながら晩ごはんのことを考えるくらいには悪い。
でも、物理はなぁ。
剣もない。
魔法もない。
腕力もない。
胸もない。
最後は関係ない?
ある。
気持ちの問題。
どうする?追い返すか?
おじさんに言うか。
でもおじさん、目をそらしたしな。
リリは怖がってるし。
そう思った瞬間だった。
入口横から、椅子がぎしりと鳴った。
ボルザさんが立ち上がっていた。
薄いエールを片手に。
いや、片手に薄いエール持つな。
かっこいい登場なのに、飲み物が薄い。
「おい、そこの」
声が低い。
妙に低い。
さっきまで「俺のエールは薄くない」とか言ってた人とは思えない。
モーガンが振り返った。
「あぁ?なんだお前は」
ボルザさんは、薄いエールをテーブルに置いた。
置き方だけは強者。
お前も水みたいなもん飲んでるんだぞ。あぁまだこのクソ客は水すら飲んでなかった。
「新入りを困らせるんじゃない」
店内が止まった。
リリの耳も止まった。
おじさんも止まった。
私も止まった。
え。
動いた。
入口の置物が動いた。
いや、動くのは知ってたけど、こんなタイミングで?
私は頭上を見た。
【名前:ボルザ】
【職業:銀の鹿亭の番人(自称)】
【防衛本能:MAX】
【役職意識:異常】
【セリフ予定:この店は俺が守る】
【本日の売上貢献:銅貨一枚】
【存在価値:上昇中】
存在価値、上がってる!
銅貨一枚の男が、今だけちょっと銀貨っぽい。
金貨は言いすぎ。銀貨。いや、銀貨半分。でも上がってる。成長してる。
「ふん。常連か何か知らんが、私はこの店のために言ってやっているのだ」
「この店のため?」
「そうだ。礼儀を知らぬ娘を正してやっているのだ」
「余計なことをするな」
おお。
ボルザさん。
今日どうした。エール少し濃く作っちゃったかな。
「余計だと?」
「ここは俺が見ている」
「何を言っている」
「この店ができた頃から、俺はここを見てきた」
出た八年。
ボルザさん唯一にして最大の武器。
八年刀。
「八年だ」
抜いた。
八年刀、抜刀。
「八年?」
「そうだ。八年だ。お前は?」
「私は王都で礼法を」
「この店に何年通った」
「いや、私は今日初めて」
「なら黙れ」
強い。
意味はわからないけど強い。
理屈としてはめちゃくちゃなのに、なぜか押してる。
八年通って薄いエールを飲み続けた男が、八年を戦闘力みたいに振り回している。
やめろ。
単位が違う。
でも効いてる。
「年数で礼儀が決まるものか!」
「この店の礼儀は、この店で決まる」
おお。
ちょっといいこと言った。
腹立つ。
昨日まで中央席を占拠してたくせに。
「娘が嫌がることを言うな。怒鳴るな。金を払わず長く話すな」
最後!
最後どの口!
私は心の中で全力でツッコんだ。
お前だよ!
金を払わず長く話す界の重鎮、お前だよ!
「客に説教するとは無礼にもほどがある!」
「客なら注文しろ」
ボルザさんが言った。
私は目を見開いた。
正論。
ボルザさんが正論を言った。
怖い。
明日この世界、白金貨の雨でも降る?
「飲まんのなら帰れ。飲むなら払え。娘に偉そうにしたいだけなら、外の石にでも話してろ」
石。
石にも迷惑では?
モーガンの顔が真っ赤になった。
【名前:モーガン】
【説教欲:暴走】
【反論素材:不足】
【注文予定:なし】
【退店可能性:上昇】
いける。
帰れ。
今すぐ帰れ。
水も飲むな。空気も吸いすぎるな。
「こんな野蛮な店、二度と来るものか!」
「二度目があると思っていたのか」
キレッキレ。
誰?
この番人おじさん誰?
昨日まで薄いエールで四時間粘ってた人と同一人物?
モーガンは杖を鳴らしながら出口へ向かった。
最後にリリの方を見た。
その前に、ボルザさんが立つ。
「見るな」
「……ふん!」
モーガンはドアを乱暴に開け、出ていった。
静かになった。
店内には、薄いエールの匂いと、妙な勝利感だけが残った。
なにこれ。
異世界のバトルって、こういう感じ?
剣も魔法も出てないけど、説教おじさんが番人おじさんに処された。
ジャンルがわからん。
「ボルザさん、すごい」
リリがぽつりと言った。
ボルザさんの肩が、ぴくっと動いた。
【承認欲求:爆上がり】
【番人意識:限界突破】
【本人の中の肩書き:銀の鹿亭の守護者】
【調子乗り開始まで:残り三秒】
まずい。
褒めすぎると進化する。
「当然だ」
進化した。
「俺はこの店を見守っているからな」
私は思った。
すごい。
クソ客とクソ客が相殺し合ってる。
これが生態系の神秘……!
「ミリア」
「はい?」
おじさんが恐る恐る聞いてきた。
「今の客は、出禁でいいか?」
「もちろんです」
「でも王都で礼法を教えてたとか」
「王都で何してようが、あんなのは出禁です。
最悪です。注文しないで上から来る客は、魔物より厄介です」
魔物は倒せば素材になる。
説教おじさんは倒しても何も落とさない。
ドロップ品、嫌な気持ち。
いらない。
「リリ」
「うん」
「今みたいな客に何か言われたら、すぐ私かおじさんに言って」
「でも……」
「でもじゃない。リリの耳は店の備品じゃないし、客の説教を受けるためについてるわけでもない」
リリの耳が、ゆっくり立った。
「……うん」
「触られそうになったら避けていい。嫌なら嫌って言っていい。それで怒る客は、怒らせていい客」
「怒らせていい客」
「そう」
私はボルザさんを見た。
「怒ったら、入口の守護者が出ます」
「任せろ」
頼もしい。
いや、頼もしいのか?
わからん。
さっきは確かに頼もしかった。
でも、売上は銅貨一枚。
この評価、難しい。
「ボルザさん」
「なんだ」
「さっきはありがとうございます」
ボルザさんが固まった。
褒めに弱すぎる。
耳があったら絶対ぴこぴこしている。ボルザさんに耳がなくてよかった。あったら絵面が終わってたな。
【承認欲求:限界突破】
【本人満足度:白金貨級】
【本日の追加注文意欲:発生】
お。
追加注文意欲!
来た!
ついにボルザさんが売上に貢献する日が来た!
「今日は気分がいい」
「はい!」
「もう一杯もらおう」
「ありがとうございます!」
【注文内容:薄いエール】
【追加売上:銅貨一枚】
薄い!
うっすいなぁ!
でもまあ、今日はいいか。
存在価値が銅貨一枚ぶんくらい上がった日だ。
「おじさん」
「なんだ?」
「今日から店のルール作りましょう」
「ルール?」
「はい。触らない。怒鳴らない。注文しないで長居しない。女の子への説教禁止」
「そんなの書いたら客が嫌がらねえか?」
「こんなので嫌がる客は客じゃありません」
「なるほど……?」
「あと、ボルザさんも昔話は短めで」
「なぜ俺を見る」
「本人確認です」
ボルザさんがむっとした。
「俺の話は店の歴史だ」
「三分でまとめてください」
「三分!?」
「できないなら目次を作ってください」
「も、目次……?」
リリが笑った。
おじさんも少し笑った。
ボルザさんだけが真剣に考え込んでいる。
【昔話時間:短縮検討中】
【目次作成:不可】
【番人継続意欲:高】
目次作れないんだ。
知ってた。
「ミリア」
リリが私の袖を軽く引いた。
「ん?」
「ありがとう」
「私は何もしてないよ。今日はボルザさんが頑張ったから」
「でも、言ってくれた」
リリは小さく笑った。
表情はほんの少し。
でも耳はちゃんと立っていた。
私は思った。
この子、ちゃんと笑えるんだな。
この店はまだ、ギリギリ生きている。
床は死んでるけど。
「よし」
私は手を叩いた。
「今日から銀の鹿亭は、クソ客を出禁にします!」
リリが小さく拍手した。
おじさんも拍手した。
ボルザさんは腕を組んで頷いた。
「当然だ。この店の秩序は俺が守る」
「ちなみにボルザさん」
「なんだ」
「秩序を守る人は、薄いエール一杯で四時間粘りません」
「……」
「せめて二杯」
「今日は二杯だ」
「今日は偉い!」
「ふん」
【名前:ボルザ】
【本日の売上貢献:銅貨二枚】
【本人の誇り:白金貨級】
【店への実害:減少】
【存在価値:微増】
微増。
まあ、微増でいい。
クソ客は排除するだけじゃない。
配置して、役割を与えて、たまに褒めて、調子に乗りすぎたら締める。
そうすれば、銅貨一枚の常連でも、たまには店を守る盾になる。
異世界四日目。
説教おじさんは出禁になった。
リリの耳は少し元気になった。
ボルザさんは番人から守護者に進化した。
そして銀の鹿亭には、新しいルールができた。
女の子に説教だけする客は、客じゃない。
水も出さずに帰すしかない。
……いや、水くらいは出すか?
でも水で三時間説教されたら嫌だな。
やっぱり出さなくていいか。




