第2話 常連面する客ほど、だいたい金を使わない
翌朝。
異世界に朝とかあるんだ。いやまぁあるんだろうけどさ。あんまり時間の感覚は地球と変わらないのかな?
太陽はちゃんと昇るし、鳥みたいなのは鳴くし、酒場の床は昨日と同じくらいベタついている。
異世界なんだから、床くらい自動で綺麗になれよ。
魔法あるんだろ?
火とか水とか出せるんだろ?
なんで床はベタベタなんだよ。
文明の使いどころ、そこじゃない?
「ミリア!昨日はよくやったな!」
店主のおっさんが、朝からやたら声を張っていた。
昨日、私がガルドスとかいう肩幅ドア男から銀貨二枚をもぎ取ったせいで、完全に勘違いしている顔だった。
目がキラキラしている。
やめろ。
期待の目で見るな。
前世で何度も見たんだよ、その目。
店長が「ゆかちゃんならいけるよね?」って言うときの目だ。
いけるわけないだろ。
いけたとしても、いける前提で来るな。
「今日からうちの看板娘だな!」
「昨日初めて接客したばっかなんですけど」
「売上を作れたじゃないか!」
「銀貨二枚で看板背負わせる店、怖すぎません?」
店主は笑ってた。
いや、笑いごとじゃないから。
銀貨二枚で泣いてた店だぞ。
看板娘というより、沈みかけの船に刺さった割り箸である。
私はカウンターの端に置かれた昨日の酒瓶を見た。
ラベルを剥がして、布を巻いただけの安酒。
それをガルドスは「深い味だ」とか言いながら飲んでいた。
深いのは味じゃなくて思い込みだと思う。
「でも、あの人また来ますよ...」
「本当か!?」
「はい。次はもっといい酒を飲ませろって言ってたので」
「おお!」
「ただ、お金があるかどうかは...」
「……そこは夢を見させてくれ」
無理だよ。
夢を見るのは客の仕事。店側は現実を見ないとね。
そんなことを考えていたら、昨日の獣人の女の子が横からそっと近づいてきた。
耳がぴこぴこしている。
昨日、私のことを「すごい」と言ってくれた子だ。
「ミリア、昨日の、すごかった!」
「あ、ありがとう」
「ガルドスさん、いつも怒鳴るだけで、あんまりお金使わない」
「やっぱり?」
「でも昨日はいっぱい払ってた。すごい」
耳がぴこぴこ。
かわいい。
目は死んでるけど、かわいい。
「名前、なんだっけ?」
「リリ」
「リリね。よろしく」
「よろしく」
リリは無表情で頭を下げた。
無表情だけど、耳だけはちょっと動いている。
この子、たぶん耳で感情が出るタイプだ。
客にバレたら面倒くさそう。
「リリは昨日みたいな客、苦手?」
「苦手」
「だよね」
「話が長い。声が大きい。あと、触ろうとする」
「はい出た。三冠王」
どこの世界にもいるんだな。
話が長い、声がでかい、距離が近い男。
あれはもう魔物でいい。
討伐依頼を出せ。
そんなことを話していると、入口のドアが乱暴に開いた。
まだ昼前だぞ。
この時間に酒場に来るやつ、だいたい終わってる説。水曜日のなんたらでやってくれ。
「おう、開いてるな!」
入ってきたのは、でっぷりした中年男だった。
背は低いし腹は出ている。
腰に剣を差している。普通に怖いよ。
顔だけは妙に偉そうで、店に入った瞬間から「俺を知ってるよな?」という空気を全身にまとっていた。
いる。
こういう客、いる。
まだ何も言ってないのに、もうだるい。
「ボルザさん、いらっしゃい」
店主が少しだけ腰を低くした。
あー、常連だ。
しかも面倒なタイプの常連だ。
ボルザと呼ばれた男は、店内をざっと見回すと、勝手に中央の一番広い席へ向かった。
席につくというより、占領だった。
椅子がかわいそう。
「いつもの」
出た。
いつもの。
これを言う客は二種類いる。
本当に金を使っている上客か、ただ長く通ってるだけで偉くなった気でいる妖怪。
私はそっと頭上を見た。
【名前:ボルザ】
【職業:元傭兵】
【来店歴:八年】
【累計売上:銀貨三十一枚】
【本日の注文予定:薄いエール一杯】
【滞在予定:四時間】
【常連面:SS】
【新規客への威圧:A】
【口癖:俺がこの店を支えてきた】
【クソ客度:B+】
私は目を細めた。
八年で銀貨三十一枚?
八年?
八年って、こっちの暦がどうなってるか知らないけど、たぶんまあまあ長いよね?
八年通って銀貨三十一枚って、もう客じゃなくて家具だろ。
しかも座り心地の悪い家具。
「ミリア?」
店主が私を見た。
顔に書いてある。
“あの人は昔からの常連だから丁寧に頼むぞ”って顔。
うん。
前世でも見た。
黒服が「この人、昔から来てくれてるから」とか言いながら、女の子に面倒な席を押し付けるときの顔。
昔から来てるのはわかった。
で、いくら使うの?
これを言うと角が立つから、みんな言わない。
「おい、新入り」
ボルザがこっちを見た。
「はい、ミリアです」
「知ってるぞ。昨日、ガルドスから金を取ったんだってな」
「人聞きが悪いですね。お代をいただいただけですよー」
「ふん。あいつも落ちたもんだ。新入りの小娘に乗せられて、安酒に銀貨二枚か」
知ってるんだ。
しかも安酒って見抜いてるんだ。
なのに自分は薄いエール一杯で四時間いるんだ。
すごいな。
恥の防御力が高い。
「まあ、調子に乗るなよ。俺はこの店ができた頃から見てるんだ」
【口癖:俺がこの店を支えてきた】
【発動準備中】
お?これは?
来る。
来るぞ。
「俺がこの店を支えてきたようなもんだからな」
【口癖発動】
【常連面:SS → SSS】
出たー!
早い!
口癖っていうか自己紹介じゃん!
私は笑顔を崩さず、軽く首をかしげた。
「そうなんですね。すごいです。」
「八年だ」
「八年もこの店を見守ってくださって」
「まあな」
「つまり、店の成長を誰よりも近くで見てきた方なんですね」
「わかってるじゃないか」
ボルザの腹が少し前に出た。
いや、もともと出てるけど、気持ちさらに出た。
店に長くいるだけで偉くなるなら、床のシミが店長だろ。
【承認欲求:620 → 790】
【財布残量:銀貨八枚】
【本日使う気:銅貨三枚】
銅貨三枚。ど、銅貨ですか^^;
もうだめだ。
こういうのが一番だるい。
金がない客より、金があるのに使わない客の方がやっかいだ。
金がない客は、ただないだけ。
金があるのに使わない客は、なぜか態度だけ金貨百枚ぶんある。
「で、いつもの席なんだが」
「はい」
「ここは俺の席だ。昨日みたいに変な客をつけるなよ」
中央の一番いい席。
入口から見える。
店内も見渡せる。
たぶん本来なら、複数人客とか金を使う客を通す席。
そこに薄いエール一杯で四時間。
終わってる。
売上の墓だ。てか、昨日誰がいたかとか知らんし。
「ボルザさん、確認なんですけど」
「あ?」
「この席、そんなに大事なんですか?」
「当たり前だろ。俺の席だからな」
「なるほど。ボルザさんの席」
「そうだ」
「じゃあ、ちゃんと特別扱いしないとですね!」
「……ほう?」
ボルザの目が少し機嫌よくなった。
リリが横で不安そうに耳を伏せる。
店主も「おい、何を言い出すんだ」みたいな顔をしている。
大丈夫。
たぶん。
たぶんね。
「おじさん!」
「な、なんだ」
「この席、今日から特別席にしましょう」
「特別席?」
「はい。店を支えてきた方にふさわしい、すごい席です」
ボルザが腕を組んだ。
「悪くないな」
悪いよ。
店にとっては最悪だよ。
「ただ、特別席なので、座れる方にも格が必要ですよね」
「格?」
「はい。たとえば、特別席に座る日は銀貨三枚以上の注文が入る、とか」
「は?」
ボルザの顔が止まった。
店主も止まった。
リリの耳も止まった。
なんで全員フリーズするんだよ。
この店、銀貨三枚で時間停止するの?
「いや、ボルザさんは常連様なので、もちろん一番最初にご案内します。ただ、特別席って周りから見られるじゃないですか?」
「まあ、そうだな」
「その席で薄いエールだけだと、ボルザさんの格まで薄く見えちゃうんですよ」
「なっ……!」
【プライド:反応】
【見栄:上昇中】
【本日使う気:銅貨三枚 → 銀貨一枚未満】
お、動いた。
でも弱いな。
銀貨三枚まではまだ遠い。
「別に私はいいんです。でも、新規のお客様が見たときに思うかもしれません」
「何をだ」
「この店を支えてきた方でも、薄いエールなんだ……って」
「…………」
ボルザの眉がぴくっと動いた。
刺さった。
よし。
でも、ここで押しすぎるとまずいからな。
こういう客はプライドが紙でできている。
しかも濡れてる。
ちょっと触るだけで破れる。縁日の金魚すくいのポイよりうっすいんだわ。
「なので、私としてはボルザさんにはもっとふさわしい席があると思うんです」
「ふさわしい席?」
「はい」
私は入口横の席を指さした。
壁際で少し暗い。
風が入るし中央からは遠い。
要するに、あんまり金を使わない客を置いておくにはちょうどいい席。
ただし、言い方が大事。
「この席です」
「そこか?」
「はい。店全体が見えます。入口も見えます。変な客が来たらすぐわかります!」
「ほう」
「ボルザさんみたいに長く店を見てきた方には、中央で飲むより、店を見守る席の方が似合うかなって」
「見守る席…か…」
【承認欲求:790 → 910】
【役職欲:発生】
【本日の脳内肩書き:銀の鹿亭の番人】
何その肩書き。
勝手に就任するな。
「つまり、俺がこの店を見てやる席ってことか」
「そうです!」
「なるほどな。たしかに俺くらいになると、ただ飲むだけじゃないからな」
「そうですそうです」
飲んでない時間の方が長いけどね。
「リリ、この席にエールお願いします。ボルザさんのいつものやつ」
「わかった」
リリが小さく頷いた。
ボルザは満足そうに入口横の席へ移動した。
すごい。
思ったより簡単に動いたな。
前世でもいたな、こういう人。
役職っぽいものを与えると急に機嫌がよくなるおじさん。
会長。
相談役。
特別顧問。
名誉常連。
だいたい何の権限もない。
でも本人は嬉しそう。よかったね。権限ゼロだけど。
「おい、ミリア」
店主が小声で近づいてきた。
「なんですか?」
「あれでいいのか?」
「何がです?」
「ボルザさんは昔からの客だぞ」
「はい」
「怒らせたらまずいだろ...」
「怒らせてないですよ。昇進させました!」
「昇進?」
「中央席の地縛霊から、入口の守護霊へ」
「言い方やばいぞ」
店主が変な顔をした。
でも、中央の一番いい席は空いた。
それだけで勝ちなんですわ。
問題は、ここに金を使う客が来るかどうか...
そう思った瞬間、入口のドアがまた開いた。
入ってきたのは、身なりのいい男が三人。
商人っぽい。
服はそこそこ綺麗。
靴も汚れていない。
指輪あり。
腰に武器なし。
腹は出ているけど、ボルザとは種類が違うだろう。
これは金の匂いがする!!
私は即座に頭上を見た。
【商会職員三人組】
【出張帰り】
【財布残量:銀貨二十六枚】
【疲労度:高】
【見栄:中】
【女の子と話したい度:高】
【支払い意欲:B】
【面倒くささ:普通】
普通!
すごい!
面倒くささ普通ってだけで、もう抱きしめたい!
「三名様ですか?」
「ああ。少し飲めるか?」
「もちろんです!ちょうどいいお席が空いてます」
私は迷わず中央席へ案内した。
ボルザがこっちを見ている。
見てる見てる。
やべー、めっちゃ見てる。
【心の声:そこ俺の席だったんだが?】
【番人意識:発動中】
【口出し欲:上昇】
来るか?
来るな?
「おい、ミリア」
「はい、ボルザさん!」
私は先に大きめの声で返事をした。
「入口、見ててくださってありがとうございます!助かります!」
「お、おう」
【口出し欲:消失】
【番人意識:強化】
よし。
黙った。
人は役割を与えると、勝手に働いた気になる。
働いてはいない。
でも邪魔しないだけで今は百万点。
「リリ、中央席におしぼりと肉の盛り合わせ。あと、少しいいエールを三つ」
「いいエール?」
「昨日の布巻いたやつじゃなくて、本当に少しいいやつ」
「わかった」
リリが走っていく。
「新入りかい?」
「はい、ミリアです。今日はお仕事帰りですか?」
「まあな。隣町まで行ってきたところでね」
「それはそれは、お疲れさまです。じゃあ今日は、ちゃんと疲れが取れるやつにしましょう!」
「はは、うまいこと言うな」
【支払い意欲:B → B+】
【滞在予定:一時間 → 二時間】
うん。
いい。
普通の客って、こんなにありがたいんだ。
前世の頃もそうだった。
普通に飲んで、普通に話して、普通に払って帰る客。
あれ、神だったなぁ。
何も起きない客が一番えらい。
店に来て、金を使って、トラブルを起こさず帰る。
もう勇者でいい。
世界を救わなくていい。
会計を救ってくれ。
商人たちは肉を頼み、エールを頼み、途中で追加のつまみまで頼んだ。
リリの耳が少しずつ上がっていく。
店主はカウンターの奥で何度も売上を数えていた。
やめろ。
客の前で数えるな。
田舎の親戚か。
「ミリア」
リリが小声で言った。
「中央の席、すごい」
「席がすごいんじゃないよ。そこに誰を座らせるかだよ」
「そうなの?」
「そう。金を使う客をいい席に座らせる。金を使わない客は、金を使わなくても満足する場所に置く」
「……難しい」
「大丈夫。私も昨日死んだばっかりだから、だいたい感覚よ」
「死んだ?」
「こっちの話」
そんなことを話していると、ボルザが入口横から手を上げた。
「おい、ミリア!」
「はい!」
「こっちのエールが薄いぞ!」
いつものだよ。
いつもの薄いやつだよ。
むしろお前が八年育てた薄さだよ。
私は笑顔で近づいた。
「すみません、ボルザさん。今日は番人席なので、長く見守れるように飲みやすくしてあるんです」
「飲みやすく?」
「はい。濃いお酒だと、お店の変化を見逃すかもしれないので!」
「なるほどな」
【納得度:謎に高い】
【番人意識:さらに強化】
なるほどじゃないんだよ。
水だよ、ほぼ。チェイサーやん。
「たしかに、酔いすぎると店を見られんからな」
「さすがです!」
「ふん」
ボルザは機嫌よく薄いエールを飲んだ。
強い。
人間の思い込み、強すぎる。
夕方になる頃には、商人三人組は合計で銀貨七枚を使って帰った。
銀貨七枚。
昨日のガルドス三・五人分。
ガルドス計算式は優秀だな、わかりやすい。
「また来るよ、ミリアちゃん」
「お待ちしてます!」
「次は同僚も連れてくるよ」
「嬉しいです!じゃあ次はもっといい席、空けておきますね!」
商人たちは笑って帰っていった。
いい客だ。
いや、まだ油断はできないけど、少なくとも今日のところはいい客。
私は手を振りながら、頭の中で計算した。
中央席をボルザから奪っただけで、売上が伸びた。
つまり、この店は客がいないんじゃない。
いい席を、金を使わない常連が塞いでいる。
あるあるすぎる。
場末の店って、だいたいそれで死んでたりする。
古い客が偉そうにして、新しい客が入りづらくなる。
店主は「昔から来てくれてるから」と言って何も言えない。
女の子は面倒な常連の相手で疲れる。
売上は上がらない。
でも常連だけは「この店は俺が守ってる」とか言い出す。
守ってるのはお前の財布だろ。
「ミリア!」
店主が厨房から飛び出してきた。
手には銀貨。
顔がやばい。
泣きそう。
「銀貨七枚だぞ!」
「はい。」
「一組で銀貨七枚!」
「普通です。たぶん」
「普通なのか!?」
「いや、この店基準だと奇跡かも」
「奇跡!」
「でも奇跡って言うと再現性なくなるんでやめてくださいね」
店主は銀貨を握りしめたまま、私を見た。
「お前、何をしたんだ?」
「席を空けただけですよ」
「それだけで?」
「それだけで変わるんですよ。店って」
前世も、似たようなことを何度も見た。
金を使う客を雑にして、声がでかいだけの常連を優先する店はだいたい廃れていくよね。まぁ、常連しかいない店で回ってるなら全然いいんだけどさ。
声がでかいやつは、金を使ってるように見える。
長くいるやつは、店に貢献しているように見える。
でも売上表を見ると、だいたい静かな客の方がちゃんと払っているみたいな。
数字は優しい。
嫌いな客も好きな客も、全部金額で黙らせてくれるから。
「でもボルザさんを邪険にはできねえぞ」
「してませんよ」
「してないか?」
「してないです。むしろ役職を与えたじゃないですか」
「役職……」
店主が入口横を見た。
ボルザは薄いエールを片手に、入ってくる客をいちいち見ていた。
完全に番人気取りだった。あれはやばい。正直あんなのいたら入りたくない笑
まぁ中央席を塞がないなら、それでいいのである。
「ボルザさん!」
私は声をかけた。
「なんだ!」
「今日、入口見てくださって助かりました!」
「そうだろう。変な客が来たら俺がすぐわかるからな」
「さすがです!」
「ふん。まあ、俺はこの店を昔から知ってるからな」
【常連面:SSS】
【本日の売上貢献:銅貨三枚】
【本人満足度:高】
【店への実害:大幅減少】
よし。完璧。
金を使わない常連は、無理に太客にしなくていい。
まずは邪魔をさせない。
これ、大事。
夜になって、客足が落ち着いた頃。
リリがぽつりと言った。
「常連って、大事じゃないの?」
私は椅子に座りながら、少し考えた。
「大事だよ」
「でも、ボルザさん、動かしたよ」
「金を使う常連は神様。金を使わない常連は……」
「うん」
「ぬか床」
「ぬかどこ?」
「場所は取るけど、味が出ることもあるやつ」
「いいもの?」
「ちゃんと混ぜればね」
「混ぜないと?」
「臭くなる」
「ボルザさんくさいもんね。」
「結構毒舌なのねあなた...」
リリは真剣な顔で頷いた。
たぶん半分も伝わってない。
まあいい。
私も異世界のこと半分もわかってないし。
そのとき、入口横からボルザの声が飛んだ。
「おい、ミリア!」
「はい!」
「明日もこの席、空けとけよ」
「もちろんです。ボルザさん専用の見守り席ですから!」
「そうかそうか」
【明日の来店予定:確定】
【注文予定:薄いエール一杯】
【常連面:限界突破】
うん...まあ、いいか...
中央席が空くなら。
私は笑顔で手を振った。
そして心の中で、今日の教訓をメモした。
常連面する客ほど、だいたい金を使わない。
異世界二日目。
私は剣も魔法も使わず、常連という名の地縛霊を入口の守護霊に進化させた。
……なんの物語なんだ、これ。




