邂逅
あの日、私は一番近い街を目指して移動していた。しばらく人に会っていなかったので、少しの緊張を感じてはいたものの、この世界の出会いを楽しみにもしていた。
スキル『索敵』と『地図』を併用していると、森の中であろうと道に迷うことは無い。
ふと、地図の先の街道に10名前後の人間がいた。LVは高くなく、皆10前後だった。
そして、ちょうどその中の一人が瀕死状態になっていた。
怪しまれるかもしれないけれど、ほっとくわけにもいかない。
「人助けは、いいことだもんね」
私が彼らに近づくと、一様にギョッとした顔をした。彼らは兵士のようだった。
「どうかしましたか?」
「すまないが、侯爵様が重体だ」
彼らの真ん中にその人物は横たわっていた。
「魔物の攻撃を受けられてしまったのだ。ポーションがあれば分けていただけないだろうか?」
見ると、何本かの空き瓶が転がっているから、すでに兵士たちはポーションを試したのだろう。
スキル『鑑定』を使ってみると、生命力を表すHPは残りわずかで、失血の状態異常がついている。これでは失血のせいで徐々にHPが削られるので、ポーションによる回復が間に合わなかったのだろう。
「わたしが看ましょう」
「え?」
重傷者は下腹部から大量の血を流しており、すでに虫の息だ。私の『ヒール』で治せるのか分からないが、見捨てることはできない。やれることはやってみようと思った。
まず、キュアによって状態異常を消し、ヒールをかける。
使ったことがなかったから加減が分からなかったので、少しずつ魔力を込めていった。
すぐに侯爵様のHPは回復し、傷口も跡形もなくふさがれていった。
「あなた様はシスターでしたか? ありがとうございます」
周りの兵士たちが私に笑みを浮かべる。
後で知ったことだが、回復魔法が実用で使える者は、大半が教会に所属しているらしい。そして、この中世のような世界では、教会は大きな権力と信頼を持っている。
そういうわけで、私が記憶喪失だと言っても、彼らは信用し丁寧に扱ってくれた。
こうして私はリヒテンシュタイン侯爵を助け、その屋敷に迎え入れて頂くことになった。
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