表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法幻想紀 - 迷宮都市の賢者と魔術師 -   作者: 花京院 光
第二章「迷宮都市編」
27/65

第二十七話「新たな召喚魔法」

 二時間目は召喚魔法の授業だった。大広間の二階にある教室に移動すると、既に先生が待機していた。色白で黒髪のポニーテールの可愛らしい先生だった。年齢は二十代後半だろうか。


「皆さん。席についてください。すぐに授業を始めます」


 私とレオナ、リーゼロッテは一番前の席に座った。ヘルフリートは私の膝の上に座り、先生を見つめている。


『なかなか綺麗な先生だね』

『もう、ヘルフリートったら……』


 先生は教壇に立つと自己紹介を始めた。


「私はレベル7の召喚士、レオノーラ・クラインです。属性は、聖、風、雷。二十八歳、独身です」

『なかなか個性的な自己紹介だね。独身か……』

『ヘルフリートはああいう人が好きなの?』

『まぁ、嫌いではないな』

『馬鹿……! まったく。ヘルフリートったら!』


 クライン先生は生徒一人ひとりの顔をゆっくりと確認しながら自己紹介を続けた。


「担当課目は召喚魔法と薬学です。賢者ヘルフリート・ハースに憧れて、十歳の頃から魔法の練習を始めました」

『ヘルフリートに憧れているんだってさ。良かったね!』

『まぁ、今の俺はガーゴイルだしな。それに、俺にはエミリアが居る』

『ヘルフリート……』


 先生は私の席の前に立つと、ヘルフリートを見つめた。


「可愛いガーゴイルね。お名前は?」

「ヘルフリートです」

「あら、賢者様と同じお名前? 素敵ね。ガーゴイルを連れている紫色の髪の一年生。ホワイトパラディン防具を纏い、ユニコーンの杖を使う。あなたがミスローゼンベルガ―ね?」

「はい。エミリア・ローゼンベルガ―です」

「ゲゼル先生のファイアエレメンタルを一撃で倒したとか……先生達の間ではあなたの話題で持ちきりよ。お会いできて嬉しいわ。ミスローゼンベルガ―」

「はい。三年間よろしくお願いします。クライン先生」


 クライン先生はヘルフリートの頭を撫でると、嬉しそうに頬を赤らめた。ガーゴイルが好きなのかしら? 本当に個性的な先生ね。


「早速授業を始めます! 一時間目にゲゼル先生のファイアエレメンタルを見ましたね? あれは魔石も魔法陣も必要としない、魔力によって作られた召喚獣・エレメンタルです。皆さんにはエレメンタルを召喚して貰います。属性は皆さんが一番得意なもので構いません」


 授業の内容はエレメンタルの召喚。エレメンタルの容姿や属性に指定は無く、好きなエレメンタルを作って良いのだとか。


「一週間後に試験を行います! 試験内容は、エレメンタル同士の戦闘です。皆さんが作り上げたエレメンタル同士を戦わせ、最も強いエレメンタルを決めます。試験の結果は成績に大きく影響します、真剣に取り組んで下さいね」

『また試験か。この学校は面白いな! エミリア、俺達が一位を取るぞ!』

『任せて! きっと強いエレメンタルを作り上げてみせるわ』

「試験のルールは簡単です。相手のエレメンタルを再起不能にした方が勝ち。エレメンタルに関する書物は、机の上に置いてあります。分からない事はいつでも質問して下さいね」


 だけど、エレメンタルってどうやって作るんだろう。私は机の上に置かれているエレメンタルに関する本を開いた。本を流し読みすると、アイスジャベリンやアイスシールドを作る要領とほぼ同じだという事が分かった。


『エミリア、エレメンタルの容姿は人型にするんだよ』

「それはどうして?」

『エミリアは既にアイスシールドの魔法とアイスジャベリンの魔法を使える』

「あ……もしかして盾と槍をエレメンタルに持たせるの?」

『正解。賢い子は好きだよ。早速始めようか。まずはアイスの魔法で人の形を作るんだ!』

「うん!」


 私はヘルフリートの指示に従って魔法の練習を始めた。杖を取り出してアイスの魔法を唱える。まずは下半身を作り、上半身を作る。身長はヘルフリートと同じ百七十五センチにしよう。かなり不格好だけど、一応人間の見た目をした氷の塊が完成した。


『エレメンタルに指示を与えるんだ。まずは歩かせてごらん』

「わかったわ」


 エレメンタルに教室の端まで歩けと指示を与えた。エレメンタルは上手に歩く事が出来ず、すぐに転んでしまった。転んで床に頭をぶつけたエレメンタルが起き上がる事は無かった……。しばらくすると氷の体は溶けて消えた。


「歩く事も出来ないんだ……」

『エレメンタルの知能は術者の魔力に比例するからね。ゲゼル先生のファイアエレメンタルが、人間さながらの動きをしていたのは、ゲゼル先生の魔力が強いからさ』

「なるべく魔力を込めてエレメンタルを作ったら良いんだね。それなら魔法陣を使った方が良いよね」

『魔法陣を使うのはしばらく待ってくれ。最初から魔法陣の効果に頼るのは良くない』

「それもそうだよね」

『さぁ、もう一度作ってみるんだ』


 それから私は何度もエレメンタルを作り続け、ついに教室の端まで転ばずに歩けるエレメンタルが完成した。あと一週間でエレメンタルの試験が行われる。今は歩く事しか出来ないけれど、一週間以内に人間と同じ動きが出来るエレメンタルを作らなければならない。毎日練習を続けて、強いエレメンタルを作れるようになろう。


 二時間目の授業が終わり、三時間目は薬学の授業。先生は引き続きクライン先生。二時間目と三時間目の間の十分の休憩時間で、私は部屋に戻ってマナポーションを飲んだ。


『エミリア。俺は少し外に出てくるよ』

「え? どこに行くの?」

『内緒さ』

「そんな……」


 ヘルフリートが初めて一人で行動したいと言った。目的は分からないけど、きっとすぐに戻ってくるに違いない。私はヘルフリートを見送ってから、教室に戻って薬学の授業を受けた。


 初めての薬学の授業は、ヒールポーションの作成だった。大鍋を用意し、材料を鍋で煮込むだけ。随分簡単な授業だから、早くにヒールポーションを作り終えた生徒は、机の下でこっそりとエレメンタルを作る練習をしている。


 もしかして、ヘルフリートは授業を受ける必要がないと思ったから居なくなったのかな? だけど、ヘルフリートが一人で外に出るなんて初めてかもしれない。一体何処に行ったのだろう……。


 四時間目の授業は防御魔法の授業だ。始業のベルが鳴ると、ヘルフリートは小さな鞄を抱えて戻ってきた。体には無数の傷を負っており、血が滴り落ちている。


『今戻ったよ……エミリア』

「ヘルフリート! 傷だらけじゃない。すぐに治してあげる」

『頼むよ』


 私は杖をヘルフリートに向けて聖属性の魔力を放出させた。


『ヒール!』


 魔法を唱えると、ヘルフリートの体に出来ていた無数の傷は一瞬で塞がった。一体どこに行っていたのだろう。ヘルフリートが戻ってくると、すぐに授業が始まった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ