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Alex:2032  作者: 果糖
17/22

第十七話

めっさ遅れてしまい申し訳ありません。

今回から書式の方を一部変更しています。具体的には


通常会話…「」

会話(通信や回想)…《》

キャラクターの思考…()

強調したい単語、語句…『』

OMNIS内のアイテム、魔物など…〈〉

OMNIS内の地名、現在地…【】


その他数字表記は原則漢数字で固定。

別枠でステータスを表示するときは半角数字を用いる可能性も。


既に更新済みの文章も随時改稿していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。


 


【イェルサレン大遺跡群 地下第一階層】


 砂礫舞う砂原から遺跡の入り口を発見した三人は、

 ジョージ翁の依頼に示されていた座標に向かい、遺跡の道を進んでいた。

 アレックスが掲げるランタンの明かりが、ユラユラと揺らめく。

 コレも事前にテオから借り受けた代物で、松明と違い風雨によって消えることがない便利な物だ。


 三人は今までの並びとは違い、テオが後衛、リリィが前衛を担当している。

 バリバリのnoobなアレックスは二人に挟まれる形で守られていた。


 位置を変更した理由としては二人曰く、

 通路や洞窟など狭い屋内だと大剣を扱うテオが十全に働けないからなのだとか。


 また、SPD&DEX両振り型のリリィは罠解除や偵察を得意としている為、

 前衛で斥候の役割を行った方がずっと効率がいい。

 テオも戦えない訳ではないが、動きが制限される屋内では


「しかし、『大遺跡群』と聞いていたからもう少し巨大なのかと思っていたが……」


 予想に反して規模が小さいな。

 アレックスは初めに見た門やここまでの通路を思い出して、そう嘆息する。


 今歩いているのは砂岩で形成された一本道だ。

 上下左右。全て白い砂岩に囲まれ、美しい均整を見せているが、

 当のアレックスは意外に遺跡が小規模だったことに少々落胆していた。



「――つっても、イェルサレン大遺跡群の入り口は此処だけじゃないぞ?」

「……何?」


 アレックスの背後から聞こえるその声は、彼の間違いを指摘するものだった。


 その声の主――現在後衛にいるテオは、更に詳しく語り始める。


「大遺跡『群』の名の通り、

 このエリアには大昔に建てられた神殿やら屋敷やらが固まって点在してるのさ。

 NPC……アエラの住民によると大体二千年前に出来た、当時じゃ最大の都市だったんだとよ」

「それが時代と共に滅んで、時を経て砂に埋もれたのがこの遺跡群なのか……」


 ――二千年。そんな遥か前から存在しているとは。

 アレックスはその事実に驚嘆を隠すことが出来なかった。


 通路を見回せば、確かに所々(ヒビ)が入り欠けている部分も見受けられた。

 だが二千年という長い時を過ごしたと言われれば、些か状態が良すぎるだろう。


 そう思いながら周りを見回していたアレックスにテオが苦笑しながら補足する。


「イェルサレン大遺跡群の入り口の中でも、この通路は特に狭い方でな。

 人通りも少ないし、大の男二人が横並びで進めない位狭いんだが――




 ――まあ、必ずしも狭いからって不都合なわけじゃあない」


 ニヤリ。と背後で笑った気配を感じ取ったアレックスは、


(何か自慢話でもする時のトーンだな、コレ)


 と、嫌な確信を感じていた。


「この狭い通路は大人数どころか標準……五~六人のパーティでも忌避する。

 それが普通さ。誰だって身動きが満足にできない中を進みたくないだろう?

 ……でも、それが二~三人の少人数パーティならどうだ?」


 成程。テオが言っていることを理解すると共に、アレックスは幾度か頷いた。

 大人数のパーティなら窮屈で探索も遅くなってしまうが、少人数の場合は話が別だ。


 狭い通路ならゴーレムも自由に身動きは取れない。

 複数で動くことなど問題外だろう。

 その条件は此方も同じだが、そこは魔法やら道具やらを使って幾らでもカバーできる。


「それにこの通路はダンジョンまで一本道だ。迷う心配も無い」

「ダンジョン?」

「ああ、ダンジョンっていうのは俗称で、正確には

 『ボスが存在しているフロアまで通じている迷路構造の遺跡』だな」


 まあこっちは裏道みたいなもんだな!と笑いながら話すテオの声を聴きながら、

 遺跡の情景をぼんやりと想像するアレックス。


 砂岩によって形成された大迷宮……なんともロマンある響きだ。

 是非とも見てみたい。その思いを胸にアレックスは再び闇の先へ歩みを進めていくのだった……





 ◇◇◇◇





 ……そのまま暫く二人が談笑を続けていると。

 前方から、偵察の任に就いていたリリィが帰ってきた。


「――師匠、アレックスさん。前方は敵影無しです。

 罠も同じく無し。




 ……一週間前に私達が解除したままですね」



 ……ん?一週間前?


 アレックスは首を傾げる。

 罠が解除されたまま放置されているというのは、また随分お粗末なものだ。


 軽い失望と共に疑問を抱いたアレックスだったが、テオの様子はまた違うものだった。


 その顔に浮かぶのは納得、僅かに眉間に皺を寄せているその顔は、

 現実の親友が時折浮かべる……嫌な予感が当たった時の顔だった。


「――ああ、やっぱりかぁ」

「……やっぱり?やっぱりというのはどういうことだ?」

「いやなぁ……通常この手のダンジョンは内部に生息する魔物を含めて、

 定期的にデータの再構築が行われるんだよ」


 データの再構築。

 名の通り魔物やオブジェクトの再構築を行い、ダンジョン内をまるごとリセットすること。

 テオとリリィ曰く、この再構築はOMNIS内で約一週間――現実にして三日半の間隔で起きるのだとか。


 尚、ゴーレム等の特殊発生型NPCには関係ないらしい。

 影響してたら今まで潰してきたゴーレムはなんだったんだって話だけどな~!などとテオは笑いながら言っているが、隣のリリィがかなり苦い顔をしていたので実際厄介なのだろう。

 だが、マラム草などの採取系アイテムにも影響するので、生産職は覚えておいて損はない。



 話を戻そう。

 彼ら曰く、その再構築が行われる日が正に今日。故に罠解除の用意もしてきたというのだが……。


「――ところがどっこい。

 何故か大遺跡群内部の再構築が行われていなかったって訳よ」

「私達も結構な時間このダンジョンに潜っていましたけど、こんなことは初めてで……」


 リリィの話を聞けば、再構築されているはずの罠が解除したままの状態で放置されていた。

 警戒を怠らずに先を進んでも本来配置されているはずの魔物の姿すら見えない。

 どうにも不気味に思い、取り敢えず報告を済ませようと足早に帰ってきた……のだとか。


「……普通にバグとかではないのか?

 そうでなくとも再構築後に別のプレイヤーが通過しただけかもしれんぞ?」

「再構築が起きると、罠の場所もランダムで変更されるんです。

 なので別のプレイヤーさんが解除したのなら、全く別の位置に解除跡が見つかるはずなんですが……」


 ……それが起きていない。

 恐らく一週間前にリリィが解除したそのままの状態になっていたのだろう。


 でなければ、やはりバグか?


「それに調査班の調べじゃあ、とてもじゃないがバグには見えねぇらしい。

 役所に相談してもだんまりだ。……少なくとも、運営側の仕業なのは間違いない」

「バグではないとしたら、一体何が起きてるんだ……?」


 一本道を歩きながら考える。

 本来行われるべき再構築が行われなければ、魔物は(いづ)れ狩り尽くされて、採取系アイテムも根こそぎ無くなってしまうだろう。


 後に残るのはただ無機質な土人形達が闊歩する閑散とした遺跡のみ――


「――ん?」


 予感。はたまた天啓か。

 アレックスは脳内で閃いた考えに身震いを起こす。


(……ゴーレムには何の影響もない?特殊発生型というカテゴリに属しているとはいえ、

 何故そんな都合のいいことが起こる?それではまるで――――)




 ――まるで、ゴーレム達が何かを起こす前兆のようではないか?



「――土人形達の侵攻。しかも今までの比ではない、大規模な侵攻、か?」

「……まぁ、そんなところだろうなぁ。

 きな臭いと警戒するべきか、ボス戦がやってくると喜ぶべきか……」

「外に出て来ているゴーレムの強さはいつも通りでした。

 役所の方でも目立った前兆は無かったのに、どうして?と首を傾げていましたよ」



(……いや、現象は既に起きている)


 三人が此処に来るまでの道中。

 遺跡内部でしか確認されていなかったゴーレムが砂原に出てきていた。

 当初はそんなものなのかと考えていたアレックスだったが、よく考えれば異常なことだ。



 《ゴーレムは本来遺跡を守護する存在。それが遺跡から出て、砂原にいるなど在り得ない》



 師の言葉が脳裏によぎった。

 しかも見つかったのは主に偵察用(・・・)ゴーレム。敵は明らかに侵攻手順を踏んできている。

 これらの要因から考えても、侵攻の意思は明らか。


「問題はその意思が(・・・・・)何者の意思(・・・・・)なのか(・・・)、だが……」

「恐らく、っていうか確実にフィールドボスの類だろうなぁ……」

「そうですね……」


 テオはニヤニヤと顔を緩ませながらその答えを言い当てた。

 元々バトルジャンキーの気はあったが、OMNISではそれが更に悪化しているようだ。

 師匠の顔を見て、引きながら憂鬱そうに同意するリリィを見ても、それが良く分かる。


(まあ、私はまだバリバリのnoobだから関係もない。精々傍観させてもらうか)


「……さて、兎にも角にも先に進まねばどうしようもないぞ」

「うーい。つっても罠も魔物もいない一本道だけどな~」

「了解でーす!……って、なんで私達初心者の方に率いられているんでしょう……?」





 ――――残念だが、アレックスの予想は脆くも崩れ去ることになる。





「――ッ!?」

「おう?どうしたアレックス。風邪か?」

「何かありましたかー?」





 ――――この時は、まだ誰も予想していなかった。まさか……





「いや、何か悪寒が走ったような……」

「大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない」

「風邪ひいたままインしてると意識途切れる時あるからなぁ、気を付けろよ?」

「師匠は何故そんなとち狂ったことを……」





 ……彼らが大遺跡群の深奥にて、

 アエラ初となるグランドクエスト(・・・・・・・・)を体感することになるとは。



読了ありがとうございます。



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