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第41章

「帝都大乱」は結果的に事実上4日で終わった。

 

 初日は帝室軍が帝都を制圧し、アン大公妃を焼き殺し、大公家につながる一族を惨殺し、根絶やしにするという目標を達成するかに見えた。

だが、2日目に大公家軍の反撃が始まると形勢は一変した。


 帝室軍は騎士100騎余りが主力で、帝都警護に当たる近衛軍1000人がそれに当初は同調していた。

しかし、この変事に不意を打たれた側の大公家に、アン大公妃の無念を晴らせ、不意を打たれて無防備な大公家の一族を護れ、と1000騎以上が駆け付けて、帝都を目指しだした。

すると、近衛軍1000人は皇帝ジョンから大公家軍に合流するように命令を受けたとして、皇帝ジョンを連れて、大公家軍に合流した。

更に教会軍の騎士100騎余りも大公家を護り、正義を果たすためにと大公家軍に加担した。


 ここに国軍と化した大公家軍は、4日目に帝室軍ほぼ全員を戦死させて、「帝都大乱」を鎮めたのである。


 だが、帝室軍のはずが、元皇帝ジェームズは、帝室軍の行動は自分の一切関知しないものであり、勝手に行われたものであると「帝都大乱」終結直後に言明した文書を出している。


 また、帝室軍の最後の生き残りの騎士の一部が、元皇帝ジェームズの傍で最期の一戦を飾ろうと元皇帝ジェームズの傍に駆け付けた。

しかし、自分は一切無関係である、何故にそのような行動を執るのか、と元皇帝ジェームズは彼らを叱責した。

それに対し、このような臆病な主君は稀である、このような人物を主君と仰いでいたとは自身の不明を恥じ入るのみ、と彼らは罵倒した。

その上で、元皇帝ジェームズの命令に我々は従ったのみであると言った上で彼ら全員自決したのを、帝都の庶民の多くが目撃しており、自決した騎士達を憐れんで帝都の庶民は手厚く供養したという民間伝承がある。


 当時の帝室で、帝室軍に命令を下せるのは現皇帝ジョンと、元皇帝ジェームズしかいない。

だが、「帝都大乱」直後は、2人共にこの帝室軍の行動には無関係と主張した。

帝室は無関係なのに、彼らは帝室軍と名乗っていたのか。


 現皇帝ジョンは帝室軍の行動は帝国に対する反乱であると、チャールズに宣明した。

更に、チャールズに対して、「帝都大乱」をよくぞ鎮めてくれたと現皇帝ジョンは称賛した。

その功績によって、チャールズは大公家当主を正式に継承し、大宰相に任命されることになった。


「今回の「帝都大乱」について、ジェームズの罪は問えない」

チャールズは私にそう言った。

それを聞いた私は激怒した。


「あなた、本気でそう言っているの。私の妹アンがどんなに無念の思いを抱いて死んだか」

「しかし、ジェームズが今回の乱に自分は無関係だと言っている。ジェームズが関係しているのが明らかにならないと、幾ら大宰相になった自分でも罪には問えない」

チャールズは申し訳なさそうに私に言った。


 チャールズにしても、初恋の人を焼き殺されたことを怒っていないわけではない。

だが、政治家として、またこの世界では事実上、大宰相という地位にある以上司法官を兼ねる身として、冤罪を引き起こすわけにはいかないのだ。

こういった点、チャールズは真っ当な政治家にして司法官だ。

世間からは平均点以上の評価が普通は与えられるだろう。

だが、私はそうではない。


「ジェームズが罪を認めればいいのね」

私はうそぶいた。

「拷問でも加えるつもりかい。元皇帝に対して」

チャールズは驚いた。

「拷問は加えないわ。自発的に罪を認めさせる」

私はチャールズに言った。

身体的な拷問はだけど、と私は内心で自分に言い訳をした。

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