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第40章

 私が失神から覚めた時には、既に荘園に着いていた。

騎士達が集結しつつあるようだが、まだ半分ほどしかいないとジュリエットの又従弟から報告があった。

今後、どうすべきだろうか。


 軍事的には更に騎士が集まるのを待つべきだろう。

兵力の逐次投入は愚策とされている。

だが、政治的にはどうか。


 このまま荘園で兵が集まるのを待っていては、大公家が都落ちして逼塞したとして、帝室の圧力はさらに強まり、帝室に味方する騎士が増えるだろう。

それに、私の感情が一刻も早いアンの敵討ちを叫んでいる。


「チャールズ、騎士達を集めて。私が演説をして、騎士達を帝都に出発させる」

「しかし」

私の言葉に、チャールズは口ごもった。

ここに居れば取りあえずは安全と言う意識があるのだろう。


「今は時間が敵よ。帝都に騎士達を向けるの。今でも500騎近い騎士がいる。帝都にいる帝室側の騎士を今でも圧倒できる」

「しかし、騎士達が反逆者となったこちらの命令を聞くかどうか」

「分からないなら、やるまでよ」

私はチャールズを押し切った。

そして、ジュリエットの又従弟に私は話をした。

演説の後に呼応してもらうのだ。


 荘園の管理人であるジュリエットの又従弟の邸宅の軒先は年貢を集める際等に利用できるように広場になっている。

そこに騎士達の中でも有力な100名程に集まってもらった。

私はマーガレットとエドワードを横に従えて、騎士達の前に立った。


「皆さん、心を一つにして聞いてください。大公家は建国以来、帝国のために尽くしてきました。そして、あなた方の生活を良くしようとしてきました。亡くなられた私の叔父ヘンリーも同様でした。それなのに帝室は讒言を入れ、大公家を滅ぼそうとし、私の実の妹である先代大公妃アンを焼き殺すという暴挙を行いました。このようなことをあなた方は許して、帝室に仕えるつもりですか。大公家の恩に報い、アンの無念を晴らそうという騎士道の心をお持ちの方は、速やかに帝都に向かってください。帝室に刃を向けられないというのなら、私とここにいるヘンリーの遺児たちを今のうちに楽に殺してください。帝室にこの身が渡されたら、どのような目に遭うか。どうかお願いいたします」

私は泣きながら訴えた。


「帝室に大公家への讒言を伝え、反乱罪に問わせた輩を討つべし。アン様の無念を今こそ晴らすのこそ、大公家の騎士としての務めだ」

ジュリエットの又従弟が叫んだ、

「そうだ、そうだ」

騎士達は口々に叫んだ。


「すぐに帝都に向かおう」

「アン様の無念を晴らそう」

騎士たちは次々と帝都に向かって出立していく。

これなら勝てる、アンの敵を討てる、私はそう思った。


「どうしてこうなった」

帝都では、帝室側に味方した貴族たちの間で悲鳴が上がっていた。

帝都は失火により半分近くが焼失していた。


 帝室側の騎士たちに従う従者たちが持った松明が原因だった。

この失火により、先代大公妃アンは身柄を生きて確保するようにとの命令が出ていたが、アンが邸宅から出て来ないまま、邸宅は火に包まれることになった。

帝室側は慌ててアンを救出しようとしたが失敗してしまい、アンは侍女達と共に焼死してしまった。


 しかも、自宅を焼かれて怒った民衆の間では、直接は罪のないアンをわざと帝室は残虐にも焼き殺したという噂が広まっている。

それを信じた大公家に味方する騎士達が激怒し、既に1000騎以上になって帝都に急行しつつあるという情報が入っている。

帝都近郊で風見鶏をしていた中立の騎士達は続々と大公家側に味方し、大公家軍は更に増えつつある。

誰しも勝ち馬に乗りたいのだ。


逆に、帝都にいる騎士は帝室の呼びかけにもかかわらず、騎士が集まるどころか逃亡が相次ぎ、100騎を割りつつある。

「逃げよう」

帝都にいる貴族たちの多くが保身を考え出した。

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