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幕間ーアン5

 急きょ、幕間としてアン視点の話を投稿します。

なお、「帝都大乱」勃発時のアンの視点ですので、語り手の心が壊れた描写になっています。

そういうのが嫌な方は読まないでください。

この幕間を読まれなくても分かる話にはします。

 あの悪魔と会ってからどれくらいの歳月が流れたのだろう。

私自身考えたくもないが、つい考えてしまう。


 そして、最後に会ってからどれくらい経ったのか。まだ、数日しか経っていない気もするし、何年も経ってしまった気もする。

今の私にはどうでもいいことだ。

ともかくヘンリーが傍にいて、悪魔を追い払ってくれるならば構わない。


 ヘンリー、いつの間にか私の最愛の人になってしまった人の名を心の中で呼ぶと至福の境地に私はなる。

かつて、チャールズという男を私は愛したが、あの男は悪魔に魅入られてしまった。

悪魔は私の腹を痛めた最初の子も奪って行き、自分の子だと言っている。

あの悪魔を私は決して許さない。


 悪魔、私の実の姉メアリーを殺し、成り替わった悪魔、あいつは絶対に許せない、でも、私では勝てない。

ヘンリーに護ってもらうしかない。

私の無力さに私は泣きたくなる。


 あれが姉では無く、悪魔ではないかと疑惑を持ったのは、いつだろう。

疑惑を完全に持ったのは、私の最初の子キャロラインを姉が嬉々として引き取ったということだった。

あの姉が、夫の愛人の子を自分の子として育てるはずがない。

私は疑惑しか覚えなかった。


 姉は結婚して以来、夫チャールズを立てて、高慢さが陰を潜めてしまった。

どう見ても夫唱婦随のいい夫婦にしか見えないが、私はありえない、と内心で叫んだ。

姉が婦唱夫随しか受け入れるはずがないのだ。

そして、姉は妊娠したが人間でなくなっていたために流産してしまった。


 私はその頃にキャロラインの妊娠が分かり、紆余曲折があった末に出産して、キャロラインをチャールズに泣く泣く引き渡した。

そして、あの悪魔はキャロラインを自分の子として奪っていった。


 そして、2年の歳月が流れ、私は婚姻適齢期に達したことから求婚されるようになった。

私はチャールズと結婚したかったが、あの頃はまだ姉かもと思っていた悪魔がいる以上、諦めるしかなかった。

しかし、悪魔はそれだけでは満足しなかった。

せめてもの悪魔の誘惑と言うか優しさだろう。

私はヘンリーと結婚するしかない羽目に陥った。


 私は悪魔に抵抗しようとしたが、所詮は無駄だった。

やっとの思いでチャールズと会えたが、悪魔の掌の上だったと知った時の絶望感は今でも思い起こすたびに泣き出したくなる。

悪魔はチャールズの子、大公家の世継ぎを産ませる道具と私を見なしていて、私を追い込んでいたのだ。


 そして、ヘンリーとの結婚式。

私は最後の審判の時までヘンリーと添い遂げると誓約した。

神様が私を悪魔から護ろうと考えられたのだろう。

その時の私には全く分からなかったが。


 今の姉が悪魔が間違いなく成り替わった存在だと私が確信できたのは、チャールズと姉に化けた悪魔が私の妊娠祝いに来た時だった。

悪魔は、私を見て確かに笑った。

悪魔は私がチャールズの子を妊娠し、大公家の世継ぎが出来たことが分かったのだ。


 そして、チャールズの子の出産。

神様は私に大変な苦しみを与えたが、無事に私と子を救ってくれた。

私は心から感謝した。

そして、分かったのだ。


 この世は悪魔が造った以上、悪魔に満ち溢れていることに。

姉は悪魔に成り替わられてしまった。

もう、私はヘンリーが作ってくれたこの部屋から出たくない。

この部屋から出れば悪魔が襲ってくる。

ここならヘンリーが護ってくれる。


 あれから時間は流れた。

ヘンリーが抱いてくれるとき、私は一番安心感を覚える。

私はヘンリーを求め、ヘンリーは大抵は応じてくれた。


 あの後、私のお腹は何回か膨れて、お腹の中のものが暴れて、そして、痛みを覚えては元に戻った。

なぜなのか気にすべきなのかもしれないが、私にはヘンリーが抱いてくれるのならば別にどうでもいいことだと思える。


 そして、この間、私の侍女たちはさめざめと泣いていた。

ヘンリーが亡くなったと言っていたが、最後の審判まで私と添い遂げてくれるヘンリーが私を遺して死ぬわけがない。

どこかに出かけただけだろう。


「アン様、すぐにこの部屋から出てください。死んでしまいます」

ソフィアが金切声をあげている。

何を言っているのだろう。

私はこの部屋でヘンリーを待っていないといけないのだ。


「私はここでヘンリーを待ちます。決して動きません」

私は断言した。

煙が何故か部屋に入ってくる。


「すぐに逃げないといけません」

ソフィアが泣いて、私にしがみついてくる。

何を言っているのだ。


「ヘンリーを待たないといけないの」

私はソフィアに言い張った。

そう、私はヘンリーが来るのを待たないといけないのだ。

煙くて堪らない。

でも、ヘンリーはきっと来てくれて、私を護ってくれる。

 感想欄を読んで、自己満足の描写になっていたことに気づきました。

本当にすみませんでした。

 次章から本編に戻ります。

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