第26章
アンとチャールズは私の目をかいくぐって、いつの間にか打ち合わせをしていたらしい。
アンがまず家を出て、父の別荘へと向かった。
それを見届けるように、チャールズが明日から帝都の外で一人、休みたいと私に言ってきた。
表向き、私はアンとチャールズが密会するのを知らないふりをするしかない。
そうしないと原作通りにエドワードが産まれるということが無くなるからだ。
エドワードが産まれなくとも、大公家にはアーサーが産まれるではないか、と言われそうだが、アーサーはあの元皇帝ジェームズの孫に当たるのだ。
それに原作では私を最終的に狂死に追い込んだキャサリンの息子でもある。
キャサリンとチャールズの結婚は何としても阻止すると私は決意している。
そして、私は不育症の可能性が高い。
消去法で行くと、私にとって大公家の継承のために、アンにエドワードを産ませないという選択肢は存在しない。
だが、私の理性では割り切れても、感情は全く別だ。
少しチャールズを私はいじめてやる。
それに、原作と違い、アンがヘンリーとの結婚を完全に嫌っている。
チャールズに、アンがもう逃げたいという可能性がある。
原作では、チャールズがどこかに逃げようというのをアンが引きとめた。
しかし、この世界では揃って逃亡するなり、最悪、2人で一緒に心中するなりする可能性がある。
絶対にそんなことは2人にさせてやるものか。
監視の目が光っているように思わせてやる。
本当には2人の監視まではしないのが、せめてもの私の情けだ。
「ゆっくり宰相の仕事を忘れて、数日間、1人で休んでね」
私はチャールズを表向きは労わった。
「ありがとう」
チャールズは油断している。
「何か緊急の連絡が必要になったら、どうしたらいい?」
「大丈夫だよ、毎日、朝と夕方には連絡を送るから」
「分かったわ」
私はその後、さりげなく言った。
「そうそう、アンにお父様によろしくと伝えておいてね」
「分かった」
思わずチャールズは言ってしまい、固まった。
やっぱりだ、2人は密会するつもりだ、
私は内心で鼻を鳴らした。
全くこれだから、ヘンリーが今のチャールズを信用できないというのだ。
私がしっかりした分、チャールズがダメ人間になりつつあるのではないか。
チャールズがしっかりしていたら、私のこんな簡単な誘導尋問に引っかかるものか。
「ごめんなさい。アンが今朝、出かけたものだから、間違えたわ。あなた、本当に疲れているようね」
私は空とぼけた。
チャールズの額から冷や汗が流れるのが私の目に見える。
チャールズが口を開く前に、私は押しかぶせるように言った。
「本当にゆっくり休んでね。ジュリエットには目立たないようにあなたを警護する騎士を派遣するように頼んでおくわ。本当に私はあなたの事が心配なの」
「あ、ありがとう」
チャールズは強張った表情のまま私に言った。
「私の大事な夫を心配するのは当然のことよ」
私はにこにこと笑いながら言った。
笑いながら言うのがこつだ。
下手に怒ったように言うより、相手に恐怖心を与えられる。
チャールズは自分の本当に信頼できる側近達と、朝になり次第、慌てて家を飛び出して行った。
チャールズをいじめるのはこれくらいにしてやる。
私は思い切り溜飲を下げた。




