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昔と―――そうやって比べられるほど、俺は彼女の隣に居たんだなって思った。
それがまた懐かしさと同時に、少しだけ愛しさを取り戻した。
もちろんそこに、恋愛の要素はもうないけれど……
「ありがとう」
「え?」
「ヘタレだった俺なんかを好きだったと言ってくれて」
「えー、ヘタレだった?」
「うん、ヘタレだったよ。好きな人に好きだと言えず、キスしてと言われても出来ないヘタレ」
そう言ってペロッと舌を出すと、笑われた。
「もうっ、それ言わないでよ! 恥ずかしかったんだからぁ!!」
「いやいや、一生忘れられないって」
「もー! 酷い!!」
「お前そればっかじゃん」
「あ、それ言う!?」
目を合わせてケラケラと笑いあう。
良かった、きみとこんな時間がまた迎えられて。
本当に、良かった―――
ありがとう。
あの時。
額にしかキスできないようなダメ男だけど。
好きだったと言ってくれて。
『キスして』
勇気を振り絞って言ってくれたんだろうって分かってた。
それなのにあの時出来る精一杯が、俺にとってはあれだったから。
恥ずかしかった自分が。
ヘタレすぎる自分が恥ずかしくて、君からも彼女からも俺はあの日逃げ出した。
ただ、それがあって今があって。
あの時の自分を思うと恥ずかしいけれど……
俺は過去の全てを、これで良かったと思えた。
だから、ありがとう。
俺、フリだって言われたけど彼氏になれて幸せだったよ、あの頃―――




