表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/44

3

  ――――――




 訳も分からずに連れてこられた公園で、不可解なことを言う彼。



 ただ、その瞳はまっすぐで。




 あぁ……彼のこの瞳は、昔からまっすぐだった、私にはって思い出した。





 「ちびで、運動できなくて。苛められた俺」


 「え……?」




 突然始まった彼の話に、戸惑いながら意識を戻した。




 「お前が小3の時に転校してきて。大声でさ、言うんだ『凄いね! 100点なんて!』って」


 「そんなこと、言った?」


 「あぁ……その一言で、みんなが俺を見る目が変わった」


 「そうだっけ?」


 「お前はいつも言うんだ。綺麗に掃除して偉いねって。字が上手だねって。褒めるのすごく」


 「そう、かなぁ?」


 「そうだよ」



 


 ぐっとまた引き寄せられて、額がこつんとくっついた。



 さらなる至近距離に、ドキドキと妙に心臓が踊りだす。



 そう言えば、こんな距離に男の人と居るの久しぶりかもって、体がそわそわした。



 「偶然家が近くて親同士にも割と交流が出来たせいか、俺もお前と余計に仲良くなって。それで……お前を知るうちにいつの間にか惹かれてた」


 「―――ッ!?」




 惹かれてた、なんて言われてさらに心臓が跳ねる。



 彼にこんなことを言われる日が来るなんて、思ってもみなかった。


 


 だから、だからそれだけ―――多分。




 「だんだんお前と居るのが恥ずかしくなって、中学に上がって離れた。そしたらどんどん遠くなって。高校に行ったらまた近づこうって思ったのに。お前馬鹿みたいにアイツばっかり追いかけてた」


 「……」




 言葉に、ならなかった。




 彼を追いかけていた自分を、見てくれていた人がいたことを。




 私一人が、一人で恋をしていたんじゃなかったことが、なんだか切なくて苦しいのに。




 嬉しかった。




 一人じゃなかったんだって。




 とても酷いかもしれないけれど、私はそんな風に思ってしまった。




 「なんども気のあるそぶりをみせてもお前は無関心」


 「そ、んなこと、あった?」


 「あったよ」


 「嘘っ!?」


 「嘘じゃないし」



 フッと笑って、私の額に彼の額をぐりぐりと押し付けてくる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ