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訳も分からずに連れてこられた公園で、不可解なことを言う彼。
ただ、その瞳はまっすぐで。
あぁ……彼のこの瞳は、昔からまっすぐだった、私にはって思い出した。
「ちびで、運動できなくて。苛められた俺」
「え……?」
突然始まった彼の話に、戸惑いながら意識を戻した。
「お前が小3の時に転校してきて。大声でさ、言うんだ『凄いね! 100点なんて!』って」
「そんなこと、言った?」
「あぁ……その一言で、みんなが俺を見る目が変わった」
「そうだっけ?」
「お前はいつも言うんだ。綺麗に掃除して偉いねって。字が上手だねって。褒めるのすごく」
「そう、かなぁ?」
「そうだよ」
ぐっとまた引き寄せられて、額がこつんとくっついた。
さらなる至近距離に、ドキドキと妙に心臓が踊りだす。
そう言えば、こんな距離に男の人と居るの久しぶりかもって、体がそわそわした。
「偶然家が近くて親同士にも割と交流が出来たせいか、俺もお前と余計に仲良くなって。それで……お前を知るうちにいつの間にか惹かれてた」
「―――ッ!?」
惹かれてた、なんて言われてさらに心臓が跳ねる。
彼にこんなことを言われる日が来るなんて、思ってもみなかった。
だから、だからそれだけ―――多分。
「だんだんお前と居るのが恥ずかしくなって、中学に上がって離れた。そしたらどんどん遠くなって。高校に行ったらまた近づこうって思ったのに。お前馬鹿みたいにアイツばっかり追いかけてた」
「……」
言葉に、ならなかった。
彼を追いかけていた自分を、見てくれていた人がいたことを。
私一人が、一人で恋をしていたんじゃなかったことが、なんだか切なくて苦しいのに。
嬉しかった。
一人じゃなかったんだって。
とても酷いかもしれないけれど、私はそんな風に思ってしまった。
「なんども気のあるそぶりをみせてもお前は無関心」
「そ、んなこと、あった?」
「あったよ」
「嘘っ!?」
「嘘じゃないし」
フッと笑って、私の額に彼の額をぐりぐりと押し付けてくる。




