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 本音を言えば、ちょっとショックだ。



 好きだった彼が、カッコ良かった彼がフリーだとは思ってなかったし、付き合ってほしいなんて願望があったわけでもない。



 でも、結婚となるとやはりショックだった。



 「幸せ、なんだね」



 僻みっぽい言い方だなって思いながら、ついついそんな風に漏らしてしまった。



 それを聞いて苦笑しつつも彼は



 「うん」



 やっぱり優しい笑顔で、遠くに行ってしまった気がした。



 「多分、お前のお陰でもあるよ。ありがとう」



 ―――え?




 遠くに行ってしまった気がして、俯いてカフェオレを啜る私に彼がそう声を掛けてくれたから勢いよく顔を上げた。





 「あの時、ごめんな。本当は俺、お前のこと好きだった」




 言われた言葉が瞬時に理解できなくて、呆然と固まった後―――



 ようやく意味が理解できて涙が零れた。



 

 「ちょっ、泣くなよ」


 「だってっっ! ふぅううっ」


 「あーもー。今さらごめんって。こんなもんしかないけど」




 そう言って、相変わらず優しい彼はハンカチを差し出してくれた。


 

 でも私はそれを断って、鞄から自分のハンカチを取り出した。



 

 「いい、よっ。奥さんに誤解されたら、ヒック、やだ、もん」


 「ははっ、そりゃどーも」



 彼はそう言ってスマートにハンカチをしまった。



 そんなところも好きだったなって思い出して、また涙が零れる。



 そう、純粋に好きだった。



 ただ、それを言えばよかったのに―――私はどうしてこんなにも不器用に育ってしまったんだろうか?



 泣き笑いを浮かべながらギュッと涙を拭きとって顔を上げる。




 そして、あの時言えなかった言葉を言った。


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