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「まさか、来るなんて思わなかった」
昔と同じままの優しさをまとった彼が、近くのコンビニの前で缶コーヒーのプルタブを開けながら言った。
「うん、私も」
「なんだよそれ」
私の意味不明な返答にカラカラと笑う彼。
それに、クスリと笑って
「本気で自分が動くと思ってなかった」
と漏らして、ご馳走してくれたカフェオレを飲んだ。
「衝動的って言うのかな……来るって聞いたら、無性に逢いたくなって。自分が呼ばれた同窓会でもないのに。なんか邪魔してごめん」
とりあえず思いついたことを捲し立ててぺこりと頭を下げると、彼は昔と同じ、少しだけ苦みを帯びた笑顔を見せた。
「いいよ。どうせ一次で帰ろうと思ってたし。俺も、思い出してたとこだから」
って、言ってくれた。
「え?」
「いや……うん。なんか、思い出してさっき。元気かな? って思ってたとこ。そしたら現れるからさ、ビックリした」
「うっそだー」
「ほんとだって」
昔と同じように二人の目が合わさって、一拍おいて一緒に笑った。
この空気が好きだった。
彼との間に流れる、この柔らかな空気が。
「どう、元気?」
一頻り笑って、彼が一息ついて私に尋ねた。
「うん……まぁ……」
フラれて傷ついてたところ―――なんて言えなくて、言葉を濁す。
それが、貴方に会いたくなった原因だなんて、勿論口が裂けても言えない。
だって彼はもう……
「そっか。俺は……」
「結婚、したんでしょ?」
「あぁ」
今までに見たこともない、一番優しい笑顔を私に向けてくれた。




