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高校に入学して初めて話しかけた女の子だった。
ドキドキしながら声をかけて、足りないという10円を代わりに投入した。
振り返って見た君の笑顔があまりに綺麗で、とても印象的だった。
翌日、教室で友達と喋ってたら君が来て平然を装って「おはよ」って言った。
まるであたり前みたいに声をかけたから、馴れ馴れし過ぎたかなって思った瞬間……前の日と同じ笑顔を浮かべて「おはよう」って返してくれた。
それだけで。
それだけで、高校生の単純な俺は好きだって思った。
毎日交わす挨拶と何気ない会話。
少しづつそれらが降り積もって、それを大事に温めながら、いつか―――
なんて、そんな日を夢見ていた。
いつか、そうなったらいいな……と思いながら見つめ続けていたら、嫌でも気づくことがある。
君を想う目だ。
その目にすぐ気が付いた。
君はまるで気にした様子はないのかもしれないが、彼はとても好感のもてる男だった。
嫌な奴ならいいのに、健気に君を想う気持ちが伝わってくる。
それがあまりにも綺麗でまっすぐすぎて。
単純に簡単に君を好きになった自分の気持ちは薄いのかもしれない、なんてことまで思い始めた。
いや、違うんだ。
ただ逃げたんだ。
君に選んでもらうなんて、俺には無理なんじゃないだろうかって。
彼ほどの人が傍にいるキミが、俺を想ってくれるなんてありえないんじゃないだろうかって。




