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3

 ――――――



 「ちょっ……手、離してよ」


 「やだよ、酔っ払い」


 「酔ってないし。ちゃんと歩けるから」


 「いいから。黙って繋がれてろよ」




 まだ戸惑ったままの私を余所に、昔と全く違うその強引加減で歩く彼に私はまだついていけない。





 こんな人だった―――?





 戸惑いを隠せなくて、でも繋がれた手を振りほどくことも出来なくて。




 ただ、温かいその手は好きだったって思い出す。




 いつも私を受け止める温かな手。




 高校を卒業してから、触れることも、思い出すこともなかった手の感触。




 それを直に感じてドキリとする。




 高校最後の文化祭。




 後夜祭のダンスでペアになった。




 彼女の目が気になって、私はドキドキしながら彼の手を握ったなって。




 私が悪いんじゃないのに、妙な罪悪感に苛まれたな……って。




 だから彼の手に触れたのは、それが最後だった気がする。




 そんなことをふと思い出しながら、軽くだけど少しだけ繋がれた手を握りしめ返した。


 ずんずん歩いて、家の近くの公園に辿り着く。



 木に覆われたそこは目隠しが多くて、カップルのデートスポットだと密かに好評だ。



 少し広いその公園を、ひたすら無言で手を繋いで歩く。




 言葉はない。




 ただ、砂地の上をピンヒールで歩くのに疲れた―――って思った頃。




 「座ったら」




 ベンチの前だった。




 横にある自販機に彼がお金を投入する。




 「ミルクティー?」


 


 って聞くから、静かに頷いたらゴトンって落ちる音がした。




 私のを買ってから自分のを買うつもりか、またお金の落ちる音が響く。




 そうしたら




 「あ、10円足んねー」




 って言うから、笑って10円を差し出すと




 「高いよ、私の10円」


 「ばーか、黙って貸せよ」




 私の手からあっさりと10円は奪われた。




 それを見て私は一人、懐かしのやり取りを思いだしてクスリと笑う。




 キミを好きになった始まりだったな、なんて。




 10円が。




 私の恋を運んできたって、そんなことを思いだした。



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