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「ちょっ……手、離してよ」
「やだよ、酔っ払い」
「酔ってないし。ちゃんと歩けるから」
「いいから。黙って繋がれてろよ」
まだ戸惑ったままの私を余所に、昔と全く違うその強引加減で歩く彼に私はまだついていけない。
こんな人だった―――?
戸惑いを隠せなくて、でも繋がれた手を振りほどくことも出来なくて。
ただ、温かいその手は好きだったって思い出す。
いつも私を受け止める温かな手。
高校を卒業してから、触れることも、思い出すこともなかった手の感触。
それを直に感じてドキリとする。
高校最後の文化祭。
後夜祭のダンスでペアになった。
彼女の目が気になって、私はドキドキしながら彼の手を握ったなって。
私が悪いんじゃないのに、妙な罪悪感に苛まれたな……って。
だから彼の手に触れたのは、それが最後だった気がする。
そんなことをふと思い出しながら、軽くだけど少しだけ繋がれた手を握りしめ返した。
ずんずん歩いて、家の近くの公園に辿り着く。
木に覆われたそこは目隠しが多くて、カップルのデートスポットだと密かに好評だ。
少し広いその公園を、ひたすら無言で手を繋いで歩く。
言葉はない。
ただ、砂地の上をピンヒールで歩くのに疲れた―――って思った頃。
「座ったら」
ベンチの前だった。
横にある自販機に彼がお金を投入する。
「ミルクティー?」
って聞くから、静かに頷いたらゴトンって落ちる音がした。
私のを買ってから自分のを買うつもりか、またお金の落ちる音が響く。
そうしたら
「あ、10円足んねー」
って言うから、笑って10円を差し出すと
「高いよ、私の10円」
「ばーか、黙って貸せよ」
私の手からあっさりと10円は奪われた。
それを見て私は一人、懐かしのやり取りを思いだしてクスリと笑う。
キミを好きになった始まりだったな、なんて。
10円が。
私の恋を運んできたって、そんなことを思いだした。




