0. プロローグ
雷が響き渡る魔王城――。
「あの氷山を潜り抜け、ついに蘇りの森まで来ようとは。ヴィナージよ」
「魔王様。このヴィナージ、必ずや勇者の首を持ち帰りましょう」
雷が近くで落ちる。その光は膝をついているヴィナージの姿を照らした。
自身と同じ髪色の黒いスーツを褐色の肌に纏い、金色の瞳をぎらつかせる。
彼が右目に使用しているモノクルは雷の光に反射し白く光った。
玉座に君臨する主に深々と頭を下げ、ヴィナージは謁見の間を後にした。
勇者討伐の準備は既に整っている。
勇者といえど、聖なる力を手に入れたのはほんの数百日前のこと。
それまではただの村人の一人に過ぎなかったというのに
――まさかここまで勇者に侵攻されるとは。
薄暗い廊下を歩き進めていると、こちらに向かってくる煩わしい気配を察知してため息をこぼす。
歩くのをやめたヴィナージはモノクルを外し胸ポケットから取り出した黒いハンカチでレンズを拭いた。
そうして自分に僻みをぶつけに来るであろう者を待った。
「ヴィナージ!!何故お前なんだ!!」
「声量のコントロールをされてみては?」
「黙れ!!」
ヴィナージの口から再びため息が漏れ、綺麗になった眼鏡をかけた。
至近距離で怒鳴り散らす男に視点を合わせる。
予想は的中したが、はて誰だったか。
顔を見ても名前が思い出せない。いやそもそも覚える必要がなかったのであろう。
「クソっ!!四天王が二人もやられたっていうのに何故魔王様は次は俺ではなくお前なんかを!!」
逆に何故自分が選ばれると思っているのか。そう口から出かけた言葉を静かに耐えた。
言ってしまえば今以上に面倒に騒ぎ立てるだけだ。
大人しく消えてもらえる適切な言葉を探そうとヴィナージは顎に手を添える。
「ちゃんと言ってやれよ。勇者が力を覚醒した村にいたくせに勇者を襲うことなくビビッて逃げ帰ったただの雑魚を誰が使うかってな」
「なんだと!?っ!!あ、貴方様は…!!」
嘲笑いながら介入してきたのはフードを深く被り顔を隠している男。四天王の一人だ。
先ほどまでヴィナージに吠えていた男はその場で膝をつき頭を垂れた。
フードの男はケラケラと能天気に笑いながらヴィナージを見る。
「同じ四天王なのに半魔じゃこうも態度が変わるのか。こんな雑魚、片っ端から消していけばいいのによ。
ほれ、こうして」
「ぎゃっ!!」
フードの男は雑魚と呼んだ魔族を消し炭にした。
灰が洋服にかかったのでヴィナージは肩についた灰を手で払い落す。
「そんなことをしてしまったら、この城の魔族の大半は消えるでしょう」
ヴィナージの祖父は人間であった。
ヴィナージにも少なからず人間の血が入っている。
魔王の封印が解ける度に人間は魔族の侵略を恐れこの魔王城に攻め入ってくる。
純魔族はそんな人間の血が入ったヴィナージを良く思っていない。
「お前は魔王様の一番の番犬だから次は俺の番かと思っていたが、まさかお前の領域に入ってくるとはな」
「私が留守の間、城のことは頼みましたよ」
言いながらヴィナージはフードの男の前を通り過ぎた。
その時、地響きが鳴り出した。これは殺気だ。
黒い殺気が広がると、それは廊下の窓ガラスを順に割っていった。
その殺気はフードの男から放たれていた。
「四天王はもう俺とお前だけだ。必ず勇者の息の根を止め、あいつらの仇を取れ」
「そのつもりですよ。窓の修繕、お忘れなく」
フードの男をその場に残し、ヴィナージは闇に消えた。
読んでいただきありがとうございます!
面白そうと思っていただけたら今後の作品も応援していただけると嬉しいです!
続きは本日21時10分掲載予定




